四人の誓い(第4部 / 銀龍の初夜)
深夜になり、祝宴も終わりを迎えた頃、四人は特別に用意された新婚の宿に向かった。それは第三都市の最高級ホテルの最上階にある、豪華なスイートルームだった。
部屋は広々としており、天井には美しいステンドグラスが嵌め込まれている。月光がステンドグラスを通して差し込み、室内を幻想的な光で満たしていた。大きなバルコニーからは、夜景が一望でき、遠くに山々のシルエットが見える。
「今夜は…セリュナさんの特別な夜ですね」エレオノーラが微笑んだ。
「はい」マリエルも温かく頷いた。「私たちは隣の部屋におりますので、ごゆっくりどうぞ」
エレオノーラとマリエルは、先妻としての理解と愛情を示しながら、新妻のセリュナに配慮していた。
「エレオノーラ様、マリエル様…」セリュナは感謝の気持ちを込めて頭を下げた。「お二人の温かいお心遣いに、心から感謝しております」
「当然のことです」エレオノーラが優しく答えた。「私たちは家族ですから」
二人が隣の部屋に移っていき、セリュナと慶一郎だけが残された。
夜風が窓から入り込み、レースのカーテンを優雅に揺らしている。風は涼しく、花の香りを運んでくる。月明かりがセリュナの銀色の髪を美しく照らし、彼女の肌は真珠のような光沢を放っていた。
セリュナは美しい銀色のナイトドレスに着替えていた。それは古代龍族の花嫁が初夜に着用する特別な衣装で、絹のような滑らかな生地が月光の下で幻想的に輝いている。
「慶一郎様…」セリュナは慶一郎の前に立ち、静かに言った。「私は千年の間、この瞬間を夢見ておりました」
「セリュナ…」慶一郎は彼女の手を取った。「俺も、あんたと出会えて本当に良かった」
セリュナの瞳に涙が浮かんだ。「千年の孤独が、今夜終わります。あなたと共に、新しい愛の歴史が始まるのです」
慶一郎はセリュナを優しく抱きしめた。彼女の体は思っていたよりも温かく、柔らかく、生命力に満ちていた。古代龍の力強さと、女性の優美さが完璧に調和している。
「セリュナ、愛してる」慶一郎は彼女の耳元で囁いた。
「私も…心から愛しております、慶一郎様」セリュナは慶一郎の胸に顔を埋めた。
二人はゆっくりとベッドに向かった。月光がレースのカーテンを通して、幻想的な模様を壁に投影している。夜風は穏やかで、遠くから夜鳥の美しい鳴き声が聞こえてくる。
「あの…」セリュナが恥ずかしそうに言った。「古代龍の『魂の結合』という儀式があるのですが…初めて夫婦になる時に行う、とても神聖な儀式です」
「どんな儀式だ?」慶一郎が優しく尋ねた。
「心と体を完全に一つにして、魂を永遠に結び合わせる儀式です」セリュナは頬を染めながら説明した。「もし、よろしければ…」
「もちろんだとも」慶一郎は微笑んだ。「あんたの大切な伝統を、俺も大切にしたい」
セリュナの銀色のナイトドレスが、月光の下で幻想的に輝いていた。慶一郎が優しくドレスの肩に触れると、セリュナは少し震えた。
「大丈夫か?」慶一郎が心配そうに尋ねた。
「はい…ただ、千年間待ち続けた瞬間なので…」セリュナは恥ずかしそうに頷いた。
慶一郎は優しく微笑んだ。「急がなくていいさ。俺たちには時間がたっぷりある」
二人は月明かりの下で、静かに愛を囁き合った。セリュナの肌は絹のように滑らかで、慶一郎の手に触れると微かに銀色の光を放った。古代龍の神秘的な力が、愛によって美しく輝いているのだった。
「慶一郎様…」セリュナは慶一郎の名前を愛しそうに呼んだ。「魂の結合が始まります…」
その瞬間、二人の周りに神秘的な光が舞い踊った。それは古代龍の魔法で、二人の魂を永遠に結び合わせる聖なる力だった。
慶一郎は、セリュナの千年の記憶の一部を垣間見た。長い孤独、人間への憧れ、そして慶一郎との出会いによって生まれた愛。すべてが美しい光となって、二人の心を包み込んだ。
「セリュナ…あんたの想いが、俺の心に届いてる」慶一郎は感動に震えた。
「私も…慶一郎様の優しい心を感じています」セリュナの目から、幸せの涙がこぼれ落ちた。
二人の愛は、夜が明けるまで静かに、そして深く結ばれ続けた。古代龍の『魂の結合』の儀式は、二人の心と体を完全に一つにし、永遠の絆を刻み込んだ。
セリュナの千年の孤独は、ついに真の愛によって癒された。そして慶一郎もまた、古代龍の深い愛の力を知ることとなった。
朝の光が窓から差し込んできた時、二人は深い愛の中で静かに眠っていた。セリュナの顔には、千年ぶりの安らかな笑顔が浮かんでいた。
しかし、遠くの空には虚無王ネクロファーグの暗雲がまだ残っており、新たな脅威が待ち受けていることを示していた。
それでも今は、四人の愛の絆がさらに深まった、幸せな夜だった。




