表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/182

四人の誓い(第3部 / 影の予兆)

夕方になり、婚儀の祝宴が始まった。会場は第三都市の最大の広場で、数千人の人々が集まっていた。慶一郎が特別に作った『新妻歓迎の料理』が並んでいる。

メインディッシュは『古代龍の祝福』と名付けられた特別な魚料理だった。調和の炎で丁寧に焼き上げられた魚は、セリュナの故郷の海を思わせる深い味わいで、食べる者の心に千年の歴史を感じさせる不思議な料理だった。

「セリュナさん、おめでとうございます」参列者の一人が祝福の言葉をかけた。

「ありがとうございます」セリュナは人間の姿で、優雅にお辞儀をした。「皆様に祝福していただき、本当に幸せです」

祝宴は和やかに進んでいたが、その時、遠くの山々から奇妙な現象が起こり始めた。

夕日が沈むべき西の空に、不自然な暗雲が立ち込めてきたのだ。その雲は普通の雨雲ではなく、まるで意志を持っているかのように、蠢いている。

「あの雲は…」ヴォラックスが眉をひそめた。「自然現象ではない。この邪悪な気配は…まさか」

セリュナも空を見上げた。「確かに…何か強大な悪意を感じます」

エレオノーラが天使の直感で警告した。「慶一郎様、あれは…天界でも見たことのない暗い力です」

マリエルも愛のペッパーミルを握りしめた。「神聖な力に対する強い敵意を感じます」

その時、暗雲の中から不気味な声が響いてきた。

『愛だと?調和だと?笑止千万…』

その声は、ヴォラックスの咆哮とは全く異なる、より古く、より邪悪な響きを持っていた。

『我こそは虚無王ネクロファーグ…あらゆる愛を喰らい、すべての調和を破壊する者なり』

ヴォラックスの顔が青ざめた。「ネクロファーグ…古代の記録にだけ残る、存在消去の魔王…まさか、お前がまだこの世界に…」

『ヴォラックスよ、愚かな龍め。人間如きに心を奪われ、我らが古代の誇りを捨てたか』

ヴォラックスが立ち上がった。「ネクロファーグ…まさか、お前がまだ生きていたとは」

『生きている?愚問よ。我は死でも生でもない。虚無そのものだ』

ネクロファーグの口から、黒い炎が吐かれた。それは調和の炎とは正反対の、あらゆるものを無に帰す破壊の炎だった。

「みんな、避難だ!」慶一郎が叫んだ。

しかし、ネクロファーグの力は想像を超えていた。黒い炎が触れた建物は、単に燃えるのではなく、存在そのものが消失していく。まるで最初からそこに何もなかったかのように。

「これは…存在消去の力か」セリュナが青ざめた。「古代の禁術です」

『今日はただの挨拶だ』ネクロファーグが嘲笑した。『次に現れる時は、この世界のすべての愛を喰らい尽くしてくれる。せいぜい、束の間の幸せを楽しむがよい』

そして、ネクロファーグは暗雲と共に消え去った。後には、一部が消失した建物と、恐怖に震える人々だけが残された。

「新たな敵か…」慶一郎が歯ぎしりした。

「でも」セリュナが慶一郎の手を握った。「私たちには愛があります。必ず、あの邪悪な力に勝てます」

エレオノーラとマリエルも頷いた。「はい、私たちの愛の力で、必ず世界を守りましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ