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四人の誓い(第1部 / 銀龍の花嫁準備)

ヴォラックスとの和解から三日が過ぎた朝、第三都市は完全に生気を取り戻していた。街の至る所で復興作業が進められ、感情を取り戻した人々の笑い声が響いている。朝の陽射しは温かく、昨夜の雨で洗われた石畳が濡れた光沢を放っていた。空気は清々しく、花の香りと焼きたてのパンの香りが風に乗って混じり合っている。

慶一郎は第三都市の最高級ホテルの一室で、窓辺に立って街を眺めていた。今日は特別な日だった。セリュナとの婚儀を行う日である。

「慶一郎様」エレオノーラが部屋に入ってきた。彼女は上品な淡い青色のドレスを身に纏っていたが、それは花嫁衣装ではなく、立会人として控えめながらも品格のある装いだった。

「エレオノーラ、準備はどうだ?」慶一郎が振り返った。

「はい」エレオノーラは微笑んだ。「マリエルと私で、セリュナさんの支度をお手伝いしています。彼女、とても緊張していらっしゃいますが、美しく輝いています」

その時、マリエルが現れた。彼女は聖女らしい清楚な薄紫のドレスを着ており、立会人としての神聖な役割を表していた。胸元で愛のペッパーミルが控えめに輝いている。

「慶一郎様」マリエルは優雅にお辞儀をした。「セリュナさんの準備が整いました。古代龍の婚儀衣装は…本当に息を呑むほど美しいです」

「そうか」慶一郎は少し緊張したように頷いた。「エレオノーラ、マリエル…あんたたちにとって、俺が新しい妻を迎えるってのは…」

エレオノーラが優しく首を振った。「慶一郎様、私たちは既にお話ししました。セリュナさんを心から歓迎したいと思っています」

「そうです」マリエルも頷いた。「愛は分け合うものです。セリュナさんが加わることで、私たちの家族がより豊かになると信じています」

その時、隣の部屋からセリュナが現れた瞬間、慶一郎は言葉を失った。

セリュナの婚儀衣装は、古代龍族に伝わる伝統的なものだった。銀色を基調とした絹のドレスには、本物の龍の鱗が繊細に織り込まれ、月光のように神秘的に輝いている。頭には古代龍の女王が着用する銀の冠があり、その中央には魂の石と呼ばれる青い宝石が輝いていた。

「慶一郎様…」セリュナは普段の威厳ある口調ではなく、恥ずかしそうな少女のような声で呟いた。「古代龍の花嫁衣装を…人間の方に見ていただくのは初めてです」

慶一郎は数秒間、ただ見とれていた。そして、ようやく口を開いた。

「セリュナ…あんた、本当に美しいよ。俺なんかで良いのか?」

その言葉に、セリュナの頬が薄く紅潮した。千年を生きる古代龍が、この瞬間ばかりは一人の乙女の姿そのものだった。

「慶一郎様こそ…」セリュナは恥ずかしそうに俯いた。「私のような古い龍を、妻として受け入れてくださって…」

エレオノーラが前に出た。「セリュナさん、今日からあなたは私たちの大切な家族です。一緒に慶一郎様を支えていきましょう」

マリエルも微笑んだ。「私たちが立会人として、セリュナさんの婚儀を見守らせていただきます。きっと美しい儀式になります」

慶一郎も最高級の白いタキシードに身を包んでいた。胸元には調和の炎を模した金の刺繍があり、既婚者として新しい妻を迎える威厳が感じられた。

四人が揃った時、部屋の空気が神聖なものに変わった。しかし、それは四人の初婚儀ではなく、既に家族である三人が、新しい家族を迎え入れる温かな雰囲気だった。

その時、窓の外から美しい音楽が聞こえてきた。街の人々が、セリュナの婚儀を祝って演奏を始めたのだ。感情を取り戻した人々が、愛を与えてくれた恩人たちの幸せを心から祝福していた。

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