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希望の種子(第3部 / 束の間の平和)

午後の穏やかな陽射しが、第三都市の公園に降り注いでいた。感情を取り戻した市民たちの笑い声が風に乗って聞こえてくる。花壇では色とりどりの花が咲き乱れ、蜂たちが嬉しそうに蜜を集めている。空気は温かく、そよ風が頬を優しく撫でていく。

慶一郎と三人の妻たちは、公園のベンチで休憩していた。先ほどの戦いの興奮が冷めやらない中、四人の間には新しい絆が生まれていた。

「それにしても、今日のマリエルはすごかったなあ」慶一郎が感心して言った。「あんなに怒ったマリエルを見たのは初めてだぜ」

マリエルは少し恥ずかしそうに俯いた。「あの…つい感情的になってしまって…聖女らしくありませんでした」

「いや、とてもかっこよかったです」エレオノーラが微笑んだ。「愛を守るための怒りは、美しいものですね」

「私も感動いたしました」セリュナが頷いた。「マリエル様の神聖な怒りに、私の古代龍の血が呼応したのを感じました」

その時、マリエルが思いがけない提案をした。

「あの…皆さん。今度の婚儀のことなのですが…」マリエルは少し照れながら言った。「私、ウェディングドレスを四人分、お揃いで作ってもらいたいんです」

「えっ?」三人が驚いた。

「それって…」エレオノーラが戸惑った。「慶一郎様も?」

「はい!」マリエルは目を輝かせた。「慶一郎様にも白いタキシードを着ていただいて、四人でお揃いの婚儀衣装を!」

慶一郎が苦笑いした。「マリエル、俺にウェディングドレスを着ろってことじゃないよな?」

「違います!」マリエルは慌てて手を振った。「慶一郎様は素敵なタキシード、私たちは美しいウェディングドレスです」

セリュナが興味深そうに尋ねた。「ウェディングドレス…古代龍の婚儀では、特別な鱗の装飾を施すのですが、人間の婚儀衣装はどのようなものなのでしょうか?」

エレオノーラも首をかしげた。「天界の婚儀では光の衣を纏うのですが、地上の婚儀衣装は未体験です」

その時、マリエルの目がキラキラと輝いた。「それでしたら!古代龍の鱗装飾も、天使の光の加工も、全部組み合わせた特別なドレスを作りましょう!」

「それは…とんでもなく豪華になりそうだな」慶一郎が呟いた。

「でも素敵ですね」エレオノーラが手を叩いた。「三つの文化を融合した、世界で唯一の婚儀衣装」

セリュナも頷いた。「それぞれの伝統を尊重しながら、新しい調和を作り出す…まさに私たちの愛にふさわしいですね」

その時、突然エレオノーラが思いついたように言った。

「そうだ!慶一郎様、婚儀の際に特別な料理も作っていただけませんか?」

「料理?」慶一郎が首をかしげた。

「はい。『永遠の愛の料理』です」エレオノーラは熱心に説明した。「四人の愛が永遠に続くことを誓う、特別な料理を」

マリエルも賛成した。「素晴らしいアイデアです。アガペリア様もきっと喜んでくださいます」

セリュナも目を輝かせた。「古代龍の伝統では、婚儀の料理は千年の絆を象徴します。慶一郎様の調和の炎で作られた料理なら、きっと私たちの愛も千年続くでしょう」

慶一郎が照れながら頭を掻いた。「そんなに期待されると、プレッシャーだなあ」

「大丈夫よ」三人が声を揃えて言った。

その和やかな雰囲気の中で、セリュナが少し真剣な表情になった。

「ところで…先ほどアガペリア様がおっしゃっていた原始王ヴォラックスのことですが…」

エレオノーラとマリエルの表情も引き締まった。

「ヴォラックスって、どんな奴なんだ?」慶一郎が尋ねた。

セリュナは重い口調で答えた。「ヴォラックスは…私よりもはるかに古い時代に生きた古代龍です。しかし、彼は文明の発達を憎み、人間の進歩を否定する存在でした」

「なぜ文明を憎むんだ?」

「彼の考えでは、文明が発達すればするほど、自然との調和が失われ、生命の本質が歪められると信じているのです」セリュナは説明した。「特に、料理という『火を使った加工』を、自然への冒涜だと考えています」

エレオノーラが心配そうに言った。「それでは、慶一郎様の料理の力も…」

「ええ。ヴォラックスにとって、慶一郎様の調和の炎は最大の敵です」セリュナは頷いた。「しかし同時に、私たちの愛の力こそが、彼の怒りを鎮める唯一の方法でもあります」

マリエルが愛のペッパーミルを握りしめた。「私たちで、きっと彼にも愛を伝えることができます」

慶一郎が立ち上がった。「それなら、やってやろうじゃないか。俺たちの愛の力を見せつけてやる」

三人の妻たちも立ち上がり、慶一郎の手を取った。

「はい、一緒に頑張りましょう」エレオノーラが微笑んだ。

「愛の力で、必ず勝利します」マリエルが決意を込めて言った。

「私たちの絆は、どんな困難も乗り越えられます」セリュナが威厳を込めて宣言した。

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