城にて
酒場から出て少しすれば、そこにはこの国の王がいる城があった。城の中には、王に拝謁する玉座の間から、日々研究者達が国の繁栄のために開発・実験を行う研究室まで様々な部屋がある。
時間より少し早くに着いた一行は各々が気がある場へ顔を出しに行く。
フェイは立ち止まり、皆と違う方向に体を向ける。
「じゃあ、俺はあいつらに挨拶してきますね。」
フェイの言う「あいつら」とは近衛騎士達のことだ。
元々近衛騎士であったフェイは実力を買われたのか、王の命により聖剣の所有者に選ばれたのだ。
歩きながらマナが口を開く
「私は研究室の方に挨拶しに行くけど一緒に行く人いるー?」
研究室、そこでは日々、魔力についての研究や発明が行われている。
研究者出身の剣聖がいるわけでは無いが、研究室長を任されている「天才」と友人であり、城を訪れる際は必ず顔を見に行く。
「アタシもいくー。」
「あ、じゃ、じゃあワタシも..」
テリーとフレンが手を挙げる。
「じゃあ僕たちは先部屋で待ってるよ。
...なんだか最近一緒になるなあ。ライデン」
ラストはそういうと部屋に向かっていった。
城の階段を降りていき、地下へ行くと少し小綺麗な部屋がある。そこが、希代の天才自称美少女、デイジーの研究室なのだ。
「あ!ママにテリーにフレン!」
デイジーが明るく呼びかける。
「はうっ...い、良い!かわいい!大好きデイジ〜!!」
そう言ってマナがデイジーに抱きつくと、テリーが呆れた表情で言い放った。
「はぁ、マナのこういうところ年々酷くなってくわね。おはよデイジー」
「はは...」
フレンも乾いた笑いをした後、続けて挨拶をする。
「だってこう言うとマナはぜったい褒めてくれますもん。マナは喜ぶ、わたしはかわいいって言われる、互いの利です。」
ふふんとドヤ顔で言うデイジー。
「ささ、中へどうぞ。」
デイジーはにっこりすると3人を中へ入れた。
デイジーは3人に挨拶をすると机を整理しながら話し始めた。
「今日は何用ですか?お久しぶりですね!」
少し整理した後、お湯を沸かしはじめた。
「王様からね?招集をかけられたの〜多分魔国とのことじゃないかな〜」
マナは少しだけ上機嫌に答えた。
するとデイジーは顎に手を添えて考えるポーズをとる。
「ふむ、ということはライデンさんとラストさんは帰ってきたんですね。王様ももしかしたら報告を聞いて”力”をつかったのかな..。」
「すごい能力ですよね。ただでさえ素晴らしい剣の使い手である方なのに、”未来が見える”なんて...あ、デイジーさん。私がお茶を注ぎますよ。」
というフレンをデイジーは片手で止める。
今の話に続くようにマナは誇らしげに語る
「そうよ。アレ...王様は最も尊く最も強い。私の尊敬する方なんだから!」
そう話し始めようとするマナをテリーが慌てて止める。
「ああはいはい、わかってるから。王様の武勇伝はもう何千回も聞いたわよ。それよりも...、最近街の方で新しいケーキ屋さんができたの...知ってる?」
するとマナ以外の2人の目がギラりと輝く
「これはこれは...興味深し。」
「甘いもの...甘いもの...」
反応を見て、続けてテリーは口を開く
「チラッっとだけ見たんだけどクリームいっぱいのふわふわでね?木の実をたっくさんのっけてたのよ。スポンジもすごくふわふわそうでね?もうふわふわのふわふわよ。」
「「おー。」」
テリーは想像で頬を赤らめ、口元を緩ませている。話を聞くと2人も同じような顔になった。
「研究結果によると、甘いものは脳を活性化させる効果があるとされます。ですからこれは必要経費...必要経費です。」
「甘いもの...甘いもの...」
みんなの反応を見てマナもにっこりと笑う。
「ふふ、私から休暇を貰えるよう言っておくから。楽しんできなさい。」
「お菓子に興味無いなんて、本当に変わってるわよね。マナも来ればいいのに。」
「私は...いいわ。」
そう言うと、マナは腰に収めている聖剣を大事そうに撫でた。