エピローグ
走る。走る。走る。
ダッシュローラーがうなりを上げ、エーテライトフィールドで出来た滑りやすいコースに火花を散らす。
ビームと実弾が飛び交い、それを受けた機体の装甲がはじける。腕が飛ぶ。頭が飛ぶ。
そのたびに観客席からは歓声が上がる。
コースのいたるところで相手を妨害するための攻撃が繰り返され、時に近接戦も行われる。
特に注目が集まるのは――二機の機体による先頭争い。
『ペイルライムとブルースカイⅡ。激しいデッドヒート! 超至近距離での銃撃戦。たとえ被弾してもその装甲がビームをも弾く! 同型機同士の戦いはここまでにも激しくなるのか!』
ペイルライムと同様のフレームと基礎システムに、先代の機構を取り入れたブルースカイⅡ。
それと争う元祖ペイルライムも、外見上の変化はほとんどないが基礎性能はもちろん、奥の手を問題なく、かつ比較的低出力で安定した状態で使えるように強化もされている。
『残り200! ここからは一切目が離せないッ! ああっと、ペイルライム両腕の装甲を展開。これが噂のプラズマブレード! フルパワーで放てば軍用機もイチコロな装備でブルースカイⅡに斬りかかる! ブルースカイこれを回避。反撃としてこちらもプラズマブレード!! ブレード同士が激しくぶつかりながら、そのままゴールラインに雪崩れ込む!! ゴール、ゴールです! 二機同時にゴーー--ル!!』
アスファルト舗装された大地に二機の機体が滑り込み、両腕の装甲を閉じてプラズマブレードの展開をやめ、二機がほぼ同時に静止状態になる。
『映像判定の結果も同時。完全同時! ネオジャパングランプリの仕切り直しとなるこのレース。その勝利をつかんだのはシドファクトリーのペイルライムと、株式会社ブルーベアのブルースカイⅡの二機だああああ!!』
観客がレースを走り切った各機を割れんばかりの拍手で迎える。
『観客の皆様。喝采の拍手はこのあたりで。この後、上位三チームのパイロットにベスティア重工社長、エクウス・セイラン氏からトロフィーの授与が行われます。もしお時間がよろしければ、最後までご覧ください』
◆
続々とレースを生き抜いた機体がゴールしてくる。
「リオ、表彰台には出てくれよ」
「なんでさ」
コクピットポッドから出てきたリオは嫌そうな顔をする。
「流石に今回ばかりは出ないとウチが炎上する。何せお前は英雄になっちまったんだしな」
「……はあ。レースのことだけ考えてたい」
「その割にはテロリストと戦うのには乗り気だったじゃない」
「レースの邪魔になるから」
と、サクヤの問に答えるリオは本当に気だるそうだった。
「仕方ないから、行く。でも代わりに何か頂戴。でないとやる気が出ない」
「何か? 何かって言われてもなあ」
「ちゅーでもしてあげたらっばぁっ!?」
サクヤの顔面にリオの跳び蹴りが入った。
うっわ。つま先や踵じゃなくて足の裏まるごといった。
「……」
キッ、とこっちを睨んでリオが走り去っていく。
と、思ったけれどふと足を止めた。
「リオ?」
「私、それでもいいから」
一度振り返って少し笑いながら、そう告げてきた。
耳、真っ赤にしてたな。
「……未成年に告白された感想は?」
「……どう答えたらいいと思う?」
鼻血を出しながら大の字で床に転がるサクヤと、リオの言葉を反芻して理解したが故に思考が停止している俺。
情けなさすぎる大人を残し、少女は表彰台に向かって足早に駆けて行った。




