そうして戦争はレースになった
かつて、戦争があった。
人型機動兵器ラピッドマシンを投入した、人類史上初の大戦争。
徹底した破壊と、それでも止まらない争いの連鎖。
だがそんな戦いはあっさりと終わる。
正しくは、やりすぎたと誰もが気付いて、やめざるを得なかったと言うべきだろう。
けれどそれで納得しきれないのが、戦争によって利益を得ていた者たち。
とはいえ、戦後すぐに兵器なんぞ売れるわけもなく、当然世論の批判を受けるのは間違いない。
そこで誰かが提案した。
ラピッドマシンを別の事に使うのはどうだろう。
災害復興? いいや、それでは儲けが出ない。
殴り合わせて勝負させる? それでは戦争を直接連想させかねない。
ではどうする。
――ならば、走らせよう。
レースならば、戦争とは関係がない。
単純に機体の性能と、それを操る人間の技量によってすべてが決まる真剣勝負。
これならば、今までの生産ラインをそのまま流用でき、工業としても成り立つのではないか。
そうして、かつて戦争のために造られていた兵器は、あくまでも競技用のレースマシンとして生まれ変わり、史上最も激しいレースとして世間に認知されていく。
最初はただ速度を競うだけのレース。
だが時代が下るにつれ、武器による妨害も行われるようになり、過激さは増していく。
ラピッドマシンレース。
それは、超高速で繰り広げられ、闘争心を滾らせる、最も戦争に近い娯楽である。