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ブレードSコート  作者: 真
4/10

4.もう一つの力

 マイアさんの話によると、マンドラゴラは毎年埋まってる場所を変えるらしく、結界内のどこかには埋まっているらしい。

 しかし、先ほどから、それらしきものは見ていない。


「まったくもってどこに生えているんだか… マンドラゴラの特徴を地面に描いて見せてくれたけど、なんだか大根みたいだったなぁ」


 かれこれ森探索し始めて、休憩も含め3時間ほど経過している。


 不意にぐるぐるとお腹が鳴いた。


「お腹すいた…マンドラゴラって食べれるのかな…」


 ポロッとそんな言葉が口からこぼれた。


「ンププ〜?」


 するとプニチが訝しそうな顔でこちらをジトリと見てきた。


「さ、さすがに本気ではそんなこと思ってないよ?」


 否定はしたものの、大根のようだし煮込めば食べれるのではないかと思ってしまったことは内緒だ。


 だって考えてみたら、マンドラゴラのエキスをマイアさんは鍋に入れようとしてたし、魔女と鍋といえばスープを作りだろう。

 つまりマンドラゴラは食べれるのでは?と思ってしまうこともなんら不思議なことではないと思う。


 訂正、お腹が減って変な思考になっている自覚はある。


 それからもしばらく森の中を探索する。

 とうにお腹は鳴らなくなり、ピークは過ぎてしまったようだ。


「うぅ〜…陽がだいぶ落ちてきたし、そろそろ見つかってほしいんだけどなぁ…」


「プニュ〜…」


 私は辺をキョロキョロと見渡す。


「ん?あれって…!」


 私の思いが通じたのだろうか、大木の下にお目当てのものらしきものを発見した。


 ようやく見つけた喜びで重かった足どりが軽くなる。


「ンプニョッ!ンプニョー!!」


 プニチがなんだか慌てている気がする。

 それでも私はマンドラゴラに軽い足取りで近づくと、何も躊躇うことなく思い切り引き抜いたのだった。


「ピギュエエエエエエエエ!!!!?」


 突如森に鳴り響く咆哮に耳を塞ぐ。


 完全にやらかした。

 そういえばマイアさんに耳栓を渡されていたんだった。


「ぎゃーーー!耳ガァぁぁぁぁ」


「ンプニョーーー!!!!」


 私はマンドラゴラが埋まっていたところに、マンドラゴラを力づくで埋めた。


「ソォォォォイッ」


「ピギュェ…」


 再び土に埋まったマンドラゴラは大人しくなった。


「はぁ…はぁ…」


「ンプ…ンプニョ…」


 私たちはしばらくの間、地面に突っ伏し悶えていた。


「ちょっと、あんた急に埋めるとかありえなくない?」


 突然、隣にいる誰かに話しかけられた。


 プニチは喋らないし一体誰だろう。


 声の聞こえた方へ目を向けると、先ほどのマンドラゴラが腕を組んで立っていた。


「え…えぇ!?」


「プニョ!?」


 私とプニチは、驚きすぎて手があがった。


「ぇーと、どちら様ですか?」


 突然のことにパニックになった私は、何故かマンドラゴラにそう尋ねた。

 それに対して、マンドラゴラはいかにもイラついてるといった様子を見せた。


「あんたにさっき引き抜かれたマンドラゴラよ!確かにね。百歩譲って、突然叫んだアタシも悪いかもだけど、アタシたちマンドラゴラはそういう植物なわけよ。あんた知らないわけ?まさか知らないわけないわよね?知らないなら今覚えなさい。常識よこれ。で、突然外に出されたと思いきや、また埋められるこっちの気持ちにもなりなさいよね。まじ、あんたありえないわよ。」


 マンドラゴラに早口で捲し立てられる。


「(す、すごい怒ってらっしゃる…)」


 対する私はというと、急に始まった説教にいつしか正座になり、ペコペコと頭を下げる、赤べこのようになっていた。


 ひとしきりしゃべり満足したのか、マンドラゴラの話題が変わった。



「それで、服は?」


「ふくぅ?」


 私が聞き返すと、再びマンドラゴラの逆鱗に触れてしまったらしい。


「あんた服持ってきてないわけ!?はぁーーーありえないわ!!こんな常識のないやつ初めて会ったわ…。ふっ、ま、あんた以外に会ったことある人間マイアくらいなんだけど。いい?アタシは今言うなれば全裸なわけ!!!全裸なのよ!!?そうですか、そうですか、あんたは女の子を全裸で放置させるような人間なのですね。あ゛ぁ゛?」


「(なにこの植物こっわ…マンドラゴラってこんななの…?というか服って何。マイアさんそんな話全然しなかったよね?)」


〜〜〜〜〜〜〜


※一方その頃マイアは


「へっくし!誰だい?あたしの噂してるやつは…」


 マイアがくしゃみをすると机からひらりと布らしきものが落ちた。


「んん?」


 マイアは近づいてそれを確認すると


「あちゃー…渡すの忘れてたわ。ま、あの子ならうまくやるだろう」


マイアは、今朝採集した薬草の選別を再開した。


〜〜〜〜〜〜〜


 とにかくマンドラゴラを落ち着かせなければと思った。

 服の素材になるようなものはあっただろうかとカバンを漁ると、紅葉の模様があしらわれた黄色地の弁当包みが目に入った。


 あ、これは使えるかも。


 私がそれを取り出すと、マンドラゴラは目を輝かせた。


「あら!いい布持ってんじゃない。ちょっとそれでアタシの服作りなさいよ」


「うーん、でも服って作るの結構大変だし…そのままこれを体に巻くのじゃだめですか?」


 私の提案が気に入らなかったのだろう。

 マンドラゴラは眉を吊り上げた。


「また、叫ぶわよ?」


 マンドラゴラの一言に顔が引き攣り、体がガタガタと震えた。

 あれは耳栓があっても聞いちゃダメな部類の音、いや声だ。


「す、すぐに作らせていただきます」


 なんで、私は今マンドラゴラに頭を下げているのだろうか。


 かくして私はマンドラゴラの服を作ることになってしまった。

 まさかここに来て裁縫する羽目になるとは。


 幸いにも、私の持ち歩くカバンには、ハサミと糸と針程度だが裁縫セットが入っていた。

 これは、普段から激しい動きをすることが多かったことから、ボタンが外れた時などは自分で直すことも多かったため、持ち歩いていたわけだが、まさかこんなところで役に立つとは思いもしなかった。


 何がいつ役に立つかなんてわかったものじゃない。


 とりあえず、浴衣っぽい形でいいかと私は、弁当包みを浴衣の型状に裁断し、縫い始めた。


 物珍しいのかプニチとマンドラゴラが、興味津々と言った様子で私の手元を見てくる。


「ンプニュッ!ンプニッ!!」


「ほわー、手際がいいわね。あんた服職人とか?」


 マンドラゴラは、先ほどまでとは打って変わり、今はご機嫌な様子である。


「そういうわけじゃないんだけどね。ただ、今まで自分の服の修繕をする機会とかあったからさ。裁縫には結構自信あるかも。よし、できた。どうかな?」


 数十分で完成させた浴衣をマンドラゴラに見せた。


「珍しい形の服ね。でもとってもかわいいわ!!」


 続いて実際に着せてみるとサイズもぴったりで我ながらよくできていると思った。


「どうかしら?」


「うん、よく似合ってるよ」


「ンプニュ」


 マンドラゴラは浴衣を気に入ってくれたようで、目の前でくるくると舞ってみせた。

 ひとしきり見せると満足したのか、その場で動きを止めて、私たちの顔をじっと見つめた。


「アタシの名前は、ナス。あんたは素敵な服を作ってくれたから、私と対等な立場で接することを許可するわ。それであんたとそっちの子の名前は?」


 名前ダイコンじゃなくて、ナスなんだ。

 先ほどからの立ち振る舞いと言い、高貴なマンドラゴラなのだろうか。

 そもそも、マンドラゴラに高貴とかあるのだろうか。


「それは光栄です?私の名前はシノギ。この子はプニチ」


「ンプッ」


「そう。ここで出会ったのも何かの縁よ。これから仲良くしましょ」


 ナスが根っこのような右手を差し出した。


「う、うん。よろしくね」


 シノギはまだ若干の困惑しているものの、右手を出してナスと握手をした。

 その後ナスはプニチとも握手を交わした。


「ところで、シノギたちアタシをわざわざ引っこ抜くなんて、なにか用があったんじゃないの?」


 ナスの言葉で当初の目的を思い出した。


「あー!実はね…!!」


▽△▽△▽


 あのあと、マイアさんの名前を出すと


「また、この季節がやってきたのね」


 とため息をつき、ナスは大人しく着いてきた。

 辺りは既に真っ暗になっており、灯りを持ってくるべきだったと後悔したものの、ナスとプニチは夜でも目が効くようで、二人?二匹?に連れられてなんとか家の前まで戻ってくることができた。


 マイアさんは家の外に出て私たちの帰りを待っていてくれた。


「遅いじゃないか。数ミリ程度心配したよ。おかえり」


「あはは…ただいま」


 わざわざ外で出迎えてくれるなんて、結構心配していてくれたのではないかと思ったが、口には出さなかった。


「プニチもご苦労様ね」


「ンプニュ!」


 マイアさんはプニチの頭をひと撫でした。

 和やかな空気に辺りが包まれる。


「さて、夕飯とするかね。手洗ってきな」


「はーい」


「プニュー」


 私たちは、家の横にある井戸で手を洗いに行こうとした。


「ちょっと、ちょっと待ちなさいよ!」


「いっ!?」


 突然、シノギの肩口に座っていたナスが大声を上げたので、シノギは耳を押さえた。


 マイアとプニチは不思議そうな顔でナスを見ている。


「え、なに?アタシがおかしいわけ?特にマイア無視してんじゃないわよ。アタシにも挨拶しなさいよ」


「あら、ナスいたのかい?その服素敵だね」


「でっしょ〜!これはシノギが作ってくれたの」


「ほー、シノギが。大したもんだね」


 ナスは誇らしげに着ている服を見せた。


「って、それは後で追々話すとして、マイア…あんたアタシに気付いてたでしょ!それなのに無視するってどういうことよ!!アタシは天下のマンドラゴラの女王!!!ナス様なのよ!!!!」


 マイアは呆れながら、ナスを宥める。


「はいはい、わかったから、あんまりでかい声出すんじゃないよ。シノギを見てごらんよ」


 ナスはマイアに言われた通りシノギに目を向けると、グルグルと目を回していた。


「あ、ごめんシノギ」 


「だいじょーぶ、だいじょーぶ」


 シノギはふらつきながらナスにそう返した。


「今日はもうこんな時間だからね。明日からいつもの頼んだよナス」


「しょうがないわね」


 目を回していたシノギがマイアのある言葉に反応した。


「いつもの?」


「あぁ、いつものってのはアタシがマイアにマンドラゴラのエキスを受け渡すことを指してるのよ」


 マンドラゴラのエキス採取はいつもやっていることだったのか。

 それにしてもマイアさんとナスの付き合いは、やりとりからして長いものに感じる。

 私は少し気になったので、ナスに聞いてみた。


「いつからマイアさんと知り合ったの?」


「数年前に、魔獣に襲われていたアタシをマイアが助けてくれてね。マイアは、礼はいらないだなんてかっこつけてたけど、それじゃアタシの気が済まなかったから、エキスを少しあげたのよ。マンドラゴラのエキスって人間界じゃ希少なものらしくて、主にポーションとかに使われるって聞いたことがあったから、喜ぶかなってね。それからというものの、エキスをあげることがアタシたちの間で恒例行事になってしまったわ」


 ナスは、どこか懐かしむように話を続ける。


「マイアに出会ってからアタシは、外敵の心配があまりないマイアの結界内で過ごさせてもらってるもの。そういう点での感謝も含めて、分け与えることは当然のことだと思っているわ」


 ナスは、エキスを分け与えることはさも当然のことだと語っているけど、その割にはマイアさんの名前を出した時、”またこの季節がやってきたのね”と嫌そうな顔してたような。


「マイアさんの名前出した時、露骨に嫌な顔してなかった?」


 私の問いに、ナスがモゴモゴと口を動かし、苦笑した。

 なんとなく言いたくなさそうな様子である。


「それは…明日になってみればわかることよ」


 エキスを取られるって、人間で言う献血のようなものなのだろうか。

 いや、私の想像とは全く別の方法で取られるのかもしれない。


「二人ともいつまで外で話してるんだい。早くご飯食べるよ」


「ンプニュ!ンプニュ!」


 いつの間にかマイアさんとプニチは家の中に入っていた。


「はーい、今行く〜」


 マイアさんの呼びかけに返事をして、私とナスは急いで手を洗うと家の中に向かった。


 席に着くと出てきた、夕飯は薬草のソテーであった。


「結局コレェ…!?」


「今日はたくさん歩き回って疲れただろ。たんとお食べ」


食事中、マイアさんは私の顔を見て終始ニコニコしていた。


▽△▽△▽△


 次の日、マイアさんからエキスを抜かれたナスは、干からびたエイのようだった。


「ギュエ…みず…みずを…」


 なるほど、これは言いたくないわけだ。


「あの〜…マイアさん?これ大丈夫なんですか…?」


 私が水を求めるナスを横目に尋ねると、マイアさんは笑った。


「ふっ…ひひひ、なに魔法水に半日もつけてれば元に戻るよ」


「へー、そうなんですか」


 聞き流したけど、マイアさんの口から今とんでもないワードが出てきた気がする。

 私は、恐る恐るそのワードを聞き返す。


「マイアさん…今魔法って言った…?」


 私の反応を見るなり、マイアさんはなにかを思い出したかのような顔をした。


「あぁ、そういえばシノギにまだ話してない力があったね。神気力とは別にこの世界に存在する力。それは魔力。魔法の力さ」


干からびたエイ。

よければ一度検索してみてください。

怖いです。


面白かったら、感想や評価してくれますと、作者の励みになりますので、よろしくお願いします!

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