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ブレードSコート  作者: 真
3/10

3.アイスブレイク

少し前回の投稿から期間が空いてしまい、すみません。


楽しみにしてくださってる皆様、お待たせしました!

どうか、たくさんの人に読んでもらえますように

(^人^)

 マイアは一つ咳払いして、まるで小さな子どもを相手にする時のような優しい雰囲気を纏いながらベッド脇の椅子に腰掛けた。


「ここは宇宙と呼ばれる空間に浮かぶデュポラスという一つの星さ。真偽は定かではないけど、学校の教育ではこの星は女神デュポーネによって創られたって習ったもんだよ。女神デュポーネは、この星に生命が誕生した時、それを心から喜びこの星に贈り物をしたとされている。その贈り物こそが、神気力と呼ばれている力さ。この神気力には2種類の特徴がある。一つは神気力を自分の身に纏うことにより身体へのダメージを代わりに引き受けてくれること。その代わり引き受けてくれるのは身体へのダメージのみで、精神的ダメージは別だよ」


 精神的ダメージとは具体的にどういうものだろうか。


「精神的ダメージとは?」


 私が聞き返すと、マイアさんは嫌な顔ひとつせず、丁寧に説明をしてくれた。


「身体に傷がついていないにも関わらず痛みは感じるってことだよ。叩かれたなら叩かれた痛み、切られたなら切られた痛みは感じるのさ。おそらく脳が実際に外傷を与えられたと錯覚を起こすことによって、生じる痛みなんじゃないかとあたしは思ってるけども、詳しいことはよくわかってないらしい」


 そう語るマイアさんは片眉をあげ、口元を下げて、心底それについて分からないといった顔をした。


 すると、マイアさんは何かを思い出すかのように手を叩くと、人差し指を立て、これから重要事項を話すかのような仕草をした。


「ちなみになんだが、神気を身に纏う際に神気身纏しんきしんてんと唱えることがある。唱えなくても身に纏うことはできるんだけどもね。神気力を扱うには精神面が大切であって、力の流れを強く意識することや集中力が必要だからね。一度口に出すことによって自然と意識をそっちに持っていくことができるのさ。そんなだから唱えた方が力が安定しやすいね。特に初めの頃は唱えたほうがいいとあたしは思うよ。」


 ここまで話してマイアさんは目を細め、斜め上を見上げた。


「そしてもう一つの特徴なんだが…これはなんで説明すれば良いんかねぇ」


 そう言った姿は、これからどのような言葉を紡ぐべきか迷っている様子であった。

 うんうんと唸りながらも、マイアさんはポツポツと言葉を紡ぐ。



「本物を映し出す力というか偽物を本物にする力というか。別のものを思い描いたものに変化させることなどができるんだ。これに関しては、変化対象を見た目や特徴が似ているものへ変化させたり、関連性のあるものから変化させるのは比較的楽だけど、全く別のものを変化させるのは負担がものすごく大きい上に難しいとされている。前者は、あんたの木刀が真剣に変化したことがまさにそれだね。そもそも木刀が真剣に形が似ていたことからそこまで意識しなくとも変化させることができたんだね。それと関連性があるものっていうのは、鉄の塊を鉄の剣へ変えるとかだね。素材など頭の中で思い描いているものに何か関連性があるものを使って変化させる場合は、変化させようとしているものと全く別のものを使って、変化させるよりは楽に変化させることができるってことさ。全く別のものから変化させるってのは、例えば石ころを紙に変えることなどだね。これが難しいとされる理由としては、ものを変化させる行為には、神気力と変化させるものへの精巧性の高い想像力、集中力が求められるんだけどね。全く別のものに変化させようとするとそれだけ使う神気力も増えるわけだ。それに加えて、並外れの想像力や集中力が必要になるわけよ。それだけでも、かなり大変なのに、ものを変化させてる間はずっとそれらの力を維持させないといけないなくてね。精神的負担、脳への負担がバカにならないっつうわけさ。ちなみに神気力を使い果たすと死ぬよ」


 不吉な言葉の登場に思わず肩が跳ねた。


「し、死ぬ!?」


「神気力は、人間だけでなく植物やらにも宿ってたりするんだが、神気力を宿すものは大きさの違いや形の違いはあるものの力を作り出す器官が備わってるんだ。人間の場合その器官となるのが心臓なんだよ。そんで、人間の場合は、神気力が空っぽになると心臓が止まっちまうのさ。生命活動が停止しちまうんだね」


 それを聞き、ゾクリとした。

 クマと対峙した際に、私は気を失うまで力を使ったわけだが、これってつまり結構洒落にならない量の力を使ったんじゃないだろうか。


「もしかして…私気を失ってましたけど、実はかなりまずい状況だったとかです?」


 私の問いに、マイアさんは良い質問だと言わんばかりに口角を上げた。


「それに関しては、あんたも身を持って体験したことだけどもね。通常は体の防衛本能が働いて、空っぽになる前に意識を失っちまうから、使いすぎて空っぽになることなんてほぼあり得ないことであるし、休めば自然と神気力は回復していくからね。神気力を使い果たしたことが原因で死ぬなんてまずない話だね」


「そ、そうなんですね」


「ま、神気力に関してはこんな感じだね。何かわからないことはあったかい?」


 正直マイアさんは、かなり分かりやすく神気力について説明をしてくれたと思う。

 しかし、これまでなかった力が突然手に入ったわけであり、未知のものに対しての恐怖のような感情を拭いきれないと言うか、なんとも複雑な気分だ。


「理解できたけどできないと言いますか…力についてはわかったんですけど…私のいた世界では存在しない力なので…なんというかその…せっかく丁寧に説明してくださったのにすみません」


 そんな私にマイアさんは優しい言葉をかけてくれた。

 ただ、その言葉には気遣いの言葉だけでなく、驚愕する言葉も添えられていた。


「謝ることないさ。すぐに理解して受け入れる必要はないよ。それに、口頭の説明よりも実際に力を何回か使ってみた方が、分かるだろうよ。…あとは、神気力とは別にもう一つの力があるんだが…」


 この世界には神気力という特殊な力の他にもう一つなにやら特殊な力があるとのことで、既にオーバーヒートしそうになっている私は、思わず声を裏返した。


「まだ他にも力があるのですか!?」


 マイアは小さく息を吐いた。


「その様子じゃ、今話したところで頭に入んないだろうからね。また追々話してあげるとするよ」


 目を見開き、信じられないものを見るかのような目を鎬がしていたため、マイアは後日改めて話すことにしたのだ。


「ありがとうございます。そうしてもらえると、助かります…へへ…」


 そんなマイアの気遣いに鎬は眉を下げつつ、感謝の言葉を述べた。


 話もひと段落つき、私たちの元に沈黙が訪れた。


 この沈黙によって、どうしても考えてしまうことがあった。


 運良く私は、マイアさんに助けてもらったのは良いけども、いつまでもお世話になるわけにもいかないだろう。

 街があるようだし、元気になったらそこへ向かうことにしよう。


 でも私お金とか持ってないし、やっていけるだろうか。

 いやいや、でもよくよく考えてみたら、マイアさんはもう一つの力のことを追々話すと言っていたし、しばらくは家に置いてもらえるのだろうか。


 あれこれ考えていると、マイアさんに眉間のあたりを人差し指で突かれた。

 そしてそのまま指でグイと押されて顔を強制的に上げられた。


 いつしか私の顔は下を向いていたらしい。


「急に怖い顔にして一体どうしたってんだい。さ、話も終わったことだし、あたしは食器を片付けてくるけども、あんたはしっかり休むんだよ。なんせ明日からは、色々手伝ってもらいたいことがあるからね」


「へっ?」


 マイアさんの言葉の意味が一瞬理解できなかった。


「なんだいその反応は」


「いや、だって」


「どうせ明確な予定とかないだろ。ならしばらくうちに居るんだろ?体は、今日一日休めば問題ないだろうからね。明日からはビシバシ動いてもらうよ」


 そう言ってマイアは立ち上がると、ベッド脇に置かれていた完食済みのおかゆの食器をお盆に乗せて持ち、扉へ向かった。

 そのままドアノブに手をかけると、振り向き再度鎬の顔を見た。


「いつまで固まってんだい!シノギ返事は?」


「は、はい!…って今名前を」


 私は、訳も分からぬままマイアさんの呼びかけに返事をしてしまった。


 色々思うことはあるけども、マイアさんに名前を呼んでもらえたことが衝撃的すぎて全て吹き飛んでしまった。


 この世界に来てから一度も名前を呼んでもらうことがなかったので、初めて名前を呼んでもらえたという事実に強く心が打たれた。


 その事実は、シノギにとって何となく顔が緩んでいることを自覚できてしまうほどに嬉しいことであった。


「名前を呼ばれたくらいで、普通そんなにだらしない顔になるかい?変わった子だね。とにかくそういうことだから頼んだよ」


 妙なものを見るかのような顔をしながらそう言うと、背後の扉のドアノブを捻った。

 それから今度は振り返ることなく言った。


「あぁ、そうだ」


 何か忘れ物だろうか。


 私は首を傾げて、マイアさんから次発せられるだろう言葉を待った。


 数秒間を開けたのち、マイアさんは


「あたし堅苦しいの苦手だからね。シノギが礼儀正しい子だっていうのは十分わかったから、明日から普段何もない時はタメ口で話しな」


とそれだけ残すと部屋を出ていった。


▽△▽△▽△


 マイアさんのところに来てからはや二週間ほどが経過した。


「マイアさーん、トカゲのしっぽ10本取ってきたよ~!」


「ンプニュ〜!」


「あぁ、今手が離せないからね。そこに置いといてくれ」


「はーい」


「ンプ〜」


 あれからというものの、こうしてマイアさんに頼まれたものをプニチと一緒に森に採りに行っている。


 森を探索するにあたって、突然結界の話をされた時は、さほど驚くことはなかった。

 日本文化的に、昔から盛り塩によって結界を張るだとか、陰陽師や神社だとかで、いわゆる結界と言われるものが割と身近なものであったからかもしれない。

 と言っても私自身特にそういう力を信じていたわけでもないのだけど。


 マイアさんによると、家である山小屋を中心に半径10キロほどの大きさの結界が張ってあるらしい。

 私には、結界内に樹勢している植物もしくは、生き物のみを採って来てほしいとのことであった。

 結界内には、外部から呼び込まない限り魔獣は入ってこないようで、まだ神気力が上手く扱えない、私のことを思ってのことだとか。


 結界内といえば、クマに追いかけられ山を下っている最中に感じた、肌へのピリピリとした刺激は結界内に入った合図だったとのことだった。


 なるほど、てっきり私は静電気だと思っていたけど違ったわけだ。


 あの日以来、私は力を一度も力は発動していない。

 単純に力を発動させる方法がわからないのだから、発動しょうがないのだ。


 マイアさんは”時が来たら力についての指導をしてやる"と言ってくれた。


 初めは、神気力という未知の力に恐怖に近い何かを感じていた私であったが、神気力を纏った感覚はなんとも言えない心地よさがあった。

 最近では早くマイアさんに教えてほしいと思っている自分がいる。

 なんだかんだで順応性が高いところが私の長所なのかもしれない。



 話は変わるが、マイアさんはよく鍋で私の採ってきた素材を煮込んでいる。

 時には紫色の液体を、またある時は緑色の液体を煮込んでいたりする。

 正直何を作っているのかはよくわからない。


 今もまさに、先ほど私とプニチが取ってきたトカゲの尻尾を鍋に投下して、何かスープのようなものを作っている。


 その様は、さながらお伽噺に出てくる魔女といったところだろうか。


「ありゃま、しまったね。もう切れちまったかい」


 ふとマイアさんが空の瓶を見ながら言った。


「どうしたの?」


 そう声をかけ、マイアさんに近づいた。


 あれからマイアさんに言われた通り、普段は砕けた口調で話すようになった。


 マイアさんは眉を下げた。


「マンドラゴラのエキスが切れちまったんだよ。シノギ悪いけど、採ってきてくれないかい?」


 他でもない普段からお世話になっているマイアさんの頼みだ。

 引き受けることは決まっているけども、ちょっとした悪戯心が働いた。


「え〜、どうしよっかなぁ。疲れちゃったし無理かも〜」


 本当はこれっぽっちも疲れてないんだけど、私はわざと疲れた素振りを見せてみた。


 普段そんなことを言わないシノギに驚いたマイアであったが、隣にいるシノギの顔を見るなりにししと笑った。


「あたし今、鍋から長時間離れられないんだよ。疲れてるなら今晩は、疲労回復の効果がある薬草のソテー作ってあげるよ」


 マイアの言葉にシノギは、顔を青ざめさせた。

 実は、ミルクがゆの次に食べたマイアの手料理が薬草のソテーだったのだ。


 それを食べてから、分かりやすく体が元気になった実感はあったけども、苦いし青臭いしでできれば二度と食べたくない味だった。


 私は、顔の前で否定するように手を振り言った。


「ぜ、全然疲れてないから!すぐ行ってくるね」


 プニチとカバンを抱えて、すぐに森へ向かおうとしたところ首元を掴まれた。


「ぐぇっ」


「ふふっ、ちょっと待ちな。マンドラゴラって言われてすぐ見つけられるのかい?」


 言われてみれば、マンドラゴラとはなんだろう。


「いえ、全然!」


「だったらどうやって見つけるんだい。今から特徴と注意すること教えるからよく覚えるんだよ?一度しか言わないからね」


 一度しか言わないと言っておきながら、大事なことだから二回言うよと結局のところ丁寧にシノギに教えてあげるマイアであった。


 ここ二週間でシノギとマイアはかなり打ち解けていた。

 側から見れば孫と祖母といった関係に見えなくもないくらいには、二人の距離は縮まっていた。

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