2.神気の力
誤字脱字があったりと読みにくかったら申し訳ありません。
また、確認をして修正していこうと思ってますので、よろしくお願いします。
P.S.
2022/09/11に、主人公の性格を考慮して、クマとの戦闘内容で変更したところがございます。
よろしくお願いします。
異世界に来たことを確信できたところで状況は何も変わらない。
「さすがに、このまま森の中で過ごすわけにもいかないよね」
この森はなんらかの動物の気配を感じる。
今のところ、襲われるなんてことはなかったが、運が良かったに過ぎずいつ何時肉食動物と出くわすとも限らない。
まして、異世界の動物なのだ。
私のいた世界の動物たちとは別の特性や習性があるかもしれない。
私はこの世界について、知らないことが多すぎる。
この世界のことを少しでも知るのなら…
「この場に留まるわけにはいかないよね…よし!」
私は勢いよく立ち上がった。
「ンプニュ?」
「プニチ、私決めたよ。一週間過ごしてきたここを去ります!目指すは…目指すは…えーと」
どこに向かうかは決めていなかった。
「と、とりあえず東!東に向かって歩きます!!」
この世界の太陽も東から昇るのか定かではないが、太陽の昇ってきた方角を指差した。
プニチは賛成してくれているのか
「ンプニッ!」
と元気の良い返事をしてくれた。
歩き始めてどのくらい経っただろうか。
体感では二時間は歩いた気がする。
「ヘっへっ…」
プニチが舌を出してポテポテと歩いている。
私はまだまだ大丈夫だけど、プニチの体力が心配である。
考えてみれば、足が短いことや丸っこいことが相まって、疲れやすいのかもしれない。
「この辺で一回休憩しよっか」
「…プニュ!」
プニチは、待ってましたと言わんばかりの勢いで、地べたにお腹を引っ付けだらりとした。
その姿に苦笑しつつ、私もプニチの横に腰を下ろした。
「ごめんね、もう少し早く休憩を挟めばよかったよね」
そう言いつつ、プニチの頭を撫でると嬉しそうに目を細めた。
プニチの息が整い始めた頃、私たちの横を小さな動物が数匹通り過ぎていった。
見た目は白色の毛皮に包まれたウサギで、羽が生えていた。
「なるほど…この世界ではウサギに羽が…」
少しはこの世界に慣れてきたのか、珍しい動物を見てもさほど動じなくなっていた。
私が羽の生えたウサギに気を取られていると、プニチが騒ぎ始めた。
「プニュニュッ!?プニュ!プニュ!!」
落ち着きがなく慌てている様子である。
「どうしたの?」
慌てるプニチとは対照的に、私は落ち着いた声で聞くと
「ンプニュッ!!!」
プニチは突然立ち上がり、裾に噛みついて引っ張ってきた。
なんとなく、私に苛立っているようにも感じた。
プニチに引っ張られた私の体は、前に傾き倒れそうになったところをなんとか踏ん張って耐えた。
「うわっ、も〜危ないよ」
「プニップニッ!」
プニチは、変わらず焦燥しているようだった。
本当に一体、どうしたのだろう。
私が首を傾げていると、地面が軽く揺れた。
「え、地震?」
しかし、地震にしては奇妙な点があった。
「なんだかこの揺れだんだん大きくなってない?しかも変な足音?のようなものが聞こえるような…」
そこまできて私は気づいた。
これは地震などではなく、何かとてつもなく大きな生き物がこちらに近づいてきているのだ。
先ほどのウサギたちはこの揺れを引き起こしている動物から逃げてきたのかもしれない。
「こ…これは逃げたほうがいい!」
私はプニチを抱き抱えて、山を下る。
山を下る途中で皮膚にピリピリと何かを感じた箇所があったが、今はそんなことを気にしている暇はない。
先ほどよりも地響きの根源が近づいてきているからだ。
「(くっ…これ完全に私たちのこと追ってきてるじゃん…!)」
ブォオオオオオオ
突如、凄まじい獣の咆哮が森に響いた。
驚いた私は足を滑らせ、尻餅をつくようにして転んでしまった。
「いてて…」
すぐさま自分の体の状態を確認する。
ふくらはぎのあたりに軽い切り傷ができてしまったが、それ以外の怪我はなさそうだった。
足を軽く擦りむく程度の傷で済んでよかったと一息つくと
「ンプニュ…?」
私の腕の中にいるプニチと目があった。
心配してくれているのだろうか。
眉を下げたような顔をしていた。
「大丈夫だよ…まだ走れる!」
そう言ってから、あれほど辺りに響いていた足音が止んでいることに気づいた。
嫌な予感がしつつ、立ち上がるとすぐ後ろでパキッと木の枝を折るような音がした。
後ろからとてつもない圧を感じる。
これが殺気というやつなのだろうか。
背中に気色の悪い冷たい汗が流れた。
ゆっくりと振り返ると、目の前に3メートルは軽く超えた巨大なクマが立っていた。
目は赤く光り、頭に角が生えている。
その重圧感のある見た目に、ひゅっと喉が鳴った。
先ほどまで、珍しい動物を見てもさほど驚かなくなったなんて思っていたけど、そんなことは全然なかった。
驚きと恐怖で顔が引き攣る。
「…ぁ…ぅぁ…っ」
「ブォオオオオ!」
言葉をうまく紡げず、固まっているとクマが大きな雄叫びをあげた。
逃げないといけないのに体が動いてくれない。
固まる私たちを見て、好奇と言わんばかりクマは口から涎を垂らし、大きな右前足を自身の体の前に構えた。
構えた右前足が何やら赤い光に包まれると、指の先から1メートルはあろう鋭い爪が形成された。
なんだあの長い爪は。
あの爪で引っ掻かれたら、どうなるかなんて嫌でもわかってしまう。
「(また…私は)」
こんなにあっけなく二度目の死を迎えるのか。
"バカタレ、簡単に諦めるんじゃないよ"
誰かの、女の人の声が脳内に響いた。
直後心臓がドクリと大きく跳ねるような感覚とともに、心臓から何かが全身へ流れ込むような感覚に襲われた。
「うっ、なに…体が…」
気づいた頃には、体が眩い黄色の光に包まれた。
不思議と恐怖で強ばっていた体が軽くなった。
私は、光の正体がなんなのかわからなかったが、今はそれどころではない。
「今なら動ける…!」
一瞬クマから自分の体へと外れた視線を再びクマへ戻すと、クマは、右前足を鎬たちへ振り下ろそうとしているところであった。
鎬は慌ててプニチを抱えると横へ転がり、寸でのところでクマの一撃を躱した。
勢い有り余って、クマはその場で一回転をした。
クマの一撃の威力は凄まじく、鎬たちの後ろに生えていた木をスパッと切り倒した。
「ひー、なにあれ!切れ味良すぎ!!あんなの受けたら一発アウトだよ!?」
「プニッー!?」
プニチと共にクマの一撃に慄いた。
そんな私たちにクマは睨みつけるような目線を送ってきた。
「ブォオオ!ブォオオオオー!!」
一撃を避けられたのが気に入らないといった様子だ。
クマはむやみやたらに、ブンブンと腕を振り始めた。
何がなんでも私たちの息の根を止めたいらしい。
私はうまく生えている木を盾にして利用し、クマの攻撃を躱しながら、ひたすら山を走って下っていく。
「(あせるな…あせるな私!)」
ものの見事に木を切り倒していく姿は、きこりのようであった。
鎬は何度も何度も転びつつ、逃げ続ける。
ただ、逃げても逃げてもクマは追いかけてくる。
「はぁっ、はぁっ…」
ここまでずっとクマの攻撃を避けつつ、走って逃げているのだ。
鎬の息がかなりあがってきた。
このままではまずいと思った時、平らな開けた場所に出た。
「うそ…」
ここは非常にまずい、なんせ盾にできるようなものがないからだ。
振り返るとクマとは少し距離ができていた。
クマの巨体で森の中を走るのは至難の業であったことと、クマが木を切り倒している際も鎬は投げ続けていたことによって、距離ができたのだ。
クマは、開けた場所に逃げ込んだ鎬を見て、まるで狩りやすくなったと言わんばかりに目を気味悪く光らせた。
「はぁっはぁっ。はぁー、もうダメだ」
そういって、プニチと背負っていた荷物を下した。
「おそらく、今あのクマは私のことしか見えてないから、プニチはその隙に逃げな」
ここで死ぬのなら私一人で十分だ。
クマの視線が自分に集中していることを確認し、鎬はプニチからゆっくりと距離を取る。
プニチからクマを引き離すためだ。
クマは鎬をゆっくりと追いかけてくる。
それを確認すると鎬は思い切りクマに背を向け走り出した。
クマは今まで力を抜いてたのかというほどの速度で鎬を追い、すぐさま鎬を射程圏内に引き入れた。
突如、鎬の背中に激痛が走る。
クマに引っ掻かれたのだ。
「うがっ!」
痛みによって体制を崩した鎬は、顔面から地面に突っ込む形で転がり、仰向けに倒れた。
「うぅ…なんだ…殺そうと思えばすぐ殺せたんじゃん…」
所詮私たちはクマに弄ばれていたのかと思うと、虚しくなる。
「はは…」
初めから勝てるわけがなかったのだ。
"バカなのかい、なぜ剣を抜かない"
またこの声か。
抜いたところで木を切り倒すほどの力を持つクマに太刀打ちできるわけがじゃないか。
ふと横を見ると、腰に提げていたはずの木刀が握られたいた。
いつの間に握っていたのだろう。
"ほら、早よ抜かんかい"
いや、私もう致命傷負ってるし、抜いたところでどうにもならないでしょ。
仰向けに寝ている私をクマが見下げた。
両前足の鋭い爪を構えて、二本足で立ち上がっている。
"そのクマ、長い爪を獲物に突き刺して、少しずつ切り裂いて食べるんだよね"
クマが両前足をフォークのように私に突き刺そうとした。
瞬時に私は横に転がり、膝立ち状態になり、難を逃れる。
クマはというと勢いをつけすぎてしまったのか、爪が地面に突き刺さり、身動きが取れなくなっている。
"剣を抜きな"
「さっきから…誰だか知りませんけど!木刀抜いたところでクマの爪に木っ端微塵にされて終わりですからね!!そこまでいうならやってあげますよ!!!ほらぁ!!!!」
私は、地面に刺さっているクマの爪目がけて、手に持っていた木刀を鞘から引き抜いた。
居合斬りである。
刀を引き抜く時、先ほどよりも強い光で鎬の体が包まれた。
木刀が当たった全ての爪がスパッと綺麗に切れた。
「は?」
「ブォー…?」
クマは、何が起きたかわからないといったように首を傾げる素振りをみせた。
いや、私も何が起きたのか全然わからないんだけども。
体は謎の光に包まれているわけだし。
握っていた木刀に目を向けると、木であったはずのそれは真剣に変化していた。
「えっと…なんじゃこりゃあ!?」
鎬の体がより一層光り輝く。
その光はあたり一帯を照らし、まるで太陽を想起させるほどであった。
「ブォオオオオオオン…!」
突然、クマが先ほどまでの威圧感のある鳴き声ではなく、悲鳴とも言える声で鳴いた。
「ブォー…ブォーン…」
それから鎬の放つオーラに圧倒されてか、ガタガタと体を震わせ、森の奥へと姿を消した。
「プニュッ!ンプニュ…!」
対して、プニチは鎬にすり寄ってきた。
プニチが鎬に触れると、プニチの体も黄色の光に包まれた。
とても心地良さそうな顔をしている。
とてもかわいいけど、今は和んでいられるような状況じゃない。
「わ、私の木刀が本物の刀に…!?それに…なんかすんごい体が光ってるし!ど、ど、どういう…ってあれ…?」
突然視界がぐらついたと思いきや、まるで前の世界で意識を落とす時に感じたような睡魔に襲われた。
その猛烈な睡魔に立っていられず膝から崩れ落ちた。
「わたし…また…」
「プニッ!プニニー!!」
プニチが慌てている。
なんだ…結局こうなるんだ…
私の意識は途切れた。
鎬が気を失ってから少しして、何もない空間から黒いローブに身を包み、杖をついた老婆が現れた。
「やれやれ…あたしの結界に魔獣と共に入ってきた時は、どうぶちのめしてやろうかと思ったけど…」
「ンプニュ!ンプニュ!!」
プニチは鎬を守るように横たわる鎬の前に立ち、老婆に対して威嚇をした。
老婆は、プニチを一目見ると、少しだけ目を見開いた。
「なんだいあんた。見たことない生き物だね」
「ンプニュー!」
「これ、あんたの主人なのかい?」
プニチは老婆の質問に頭を捻った。
「なんだ、違うのかい…」
プニチはまたまた頭を捻った。
老婆はため息をついた。
「はぁ…ま、いつまでもここにいたって話にならない。とりあえずうちに来な」
老婆は軽々と鎬を担いだ。
齢80は超えてそうな見た目をしているにも関わらず、軽々と鎬を持ち上げる姿を目の当たりにして、プニチはこの老婆に逆らわない方が良いと思った。
▽△▽△▽△
「うーん…ぅん…?」
「目が覚めたかい」
目を開くと目の前に老婆の顔があった。
「ヒッ、人!?」
私は、思わず悲鳴をあげそうになるのを必死に抑えた。
それから、人間に会えた驚きでベッドから転げ落ちそうになった。
私の様子に老婆は、心底めんどくさそうな顔で言った。
「全く、あんた三日間目を覚さなかったんだよ」
「み、三日!?…そういえば、私森で倒れて」
「そ、森で倒れてたあんたをあたしがここへ連れてきたのさ。三日間目を覚さないのは流石に心配したけども、あれだけの力を放出すればそれくらい寝込むのもおかしくないかもしれないね」
私は、力の放出という部分はよく分からなかったが、老婆の言葉にハッとする。
ここへ連れてきてくれたということはもしかしなくても、この人は命の恩人じゃないのだろうか。
その事実に気づき、私はベッドから飛び起きて、床に正座をし頭を下げる。
「し、失礼しました!助けていただき…ありがとうございます。私、砥石鎬って言います。あれ…シノギ・トギヤマって言ったほうがいいのかな…?あの、私金目になるようなもの持っていなくて…」
「いい、いい、わざわざ土下座なんて必要ないよ。それにお代ならもうもらったから、病み上がりの体を突然動かすんじゃないよ。ったく…あたしの名前はマイアだよ」
「お代をもらった…?」
私は、老婆の言葉の意味がわからなかった。
まさか私のカバンの中に良いものでもあったのだろうか。
「あんたのカバンの中なんて漁ってないよ」
顔に出ていたのだろうか。
老婆が一言そう言った。
「じゃあ、お代とは」
「これだよ」
老婆は小さな赤い宝石のような石を見せてくれた。
こんなものを私は持っていなかったはずだ。
「あんた、魔獣の爪を切り落としただろ。それがこの石に変化したのさ。これは魔石と言ってね。街に行けばそこそこの値で売れるんじゃないかねぇ」
生き物の爪が石に変化するなんて信じ難いことだけども、ここは異世界だから、それが普通なのかな。
綺麗だし、そこそこの値で売れるということは、この世界では宝石といった位置付けの石なのだろうか。
「ほ、ほぉ〜」
ってそんなことよりもこの世界にも街があるのか。
老婆の他にも人がいることを知れて、一安心だ。
老婆との会話の途中で、ある変化に気づいた。
「あれ、そういえば服…」
私が今身につけている服は、これまで着ていた制服ではなく、首元が緩く、丈と袖の長い白色のTシャツのようだった。
「あぁ、あんたの着ていた服では、寝苦しいだろう思ってね。着替えさせたよ。それに汚れていたからね。元の服は洗って、そこの机の上に置いてあるよ」
指を指さされた机に目を向けると、制服が綺麗に畳まれて置かれていた。
「わ、わざわざご丁寧にありがとうございます!」
私が再び頭を下げると
「だからいいって言ってるだろ。とりあえず、あんたはまだ体が本調子じゃないだろう。ベッドで寝ときな。それとお腹空いてるだろうからね。ご飯持ってくるよ」
と言って、マイアさんは部屋を出て行った。
なんて、親切な人なのだろうか。
確かに言われた通り、若干のだるさが体に残っていて、本調子ではなさそうだ。
ここはお言葉に甘えておくべきかと、再びベッドに向かった。
するとベッドの端ですやすやと寝ているプニチが目に入った。
「よかった、プニチも無事だったんだ」
プニチの姿を見て、安堵しているとマイアさんが朝食を持ってきてくれた。
「その子プニチっていうのかい。生まれてこの方初めて見た生き物だね。それよりも、寝とくように言ったじゃないかい。横にならないにしても、せめて座りな」
そう言って、ご飯のお盆をベット脇の棚の上に乗せると、私をベッドに半ば強制的に腰掛けさせた。
「わ、あ、ありがとうございます。プニチは私のつけた名前で、森で出会ったんです。何の生き物なのかは私も存じ上げてません」
「そうなのかい、ま、ひとまずご飯食べちゃいな。あたし特性のミルク粥だよ」
マイアさんからミルク粥の器を渡された。
「いただきます」
一口食べると不思議な感覚に襲われた。
初めて食べるはずなのに懐かしく心の温かくなる優しい味がしたのだ。
その味に自然と私は笑顔になった。
「おいしい…おいしいです!」
「そりゃ、よかった」
マイアさんは私を見ながら満足そうにニカっと笑った。
食事を終えて、一息ついた頃、私は気になっていたことを口にした。
「そういえば私、倒れる直前に体が黄色の光に包まれたんです。それで、愛用の木刀も本物の刀になったりして…なんて…そんなことあり得ないですよね」
頬をかきつつ私が言うと
「ま、神気の力だろうね」
あっけらかんとマイアさんは答えた。
当たり前のように言ってるけども、その神気の力とやらはこの世界では一般的なのだろうか。
「しんきぃ?」
「その様子じゃ、あんた神気力って知らないのかい。というかそれ以外のことも知らなかったりするんじゃないかい?」
ギクリとした。
この際はっきりと実は異世界から来ましたとか言うべきなのだろうか。
いや、絶対変な子だと思われる。
私があれこれと考えて唸っていると
「服装、剣の形状、知識、あんたとんでもなく遠い国から来たとかかい?そうだとしても、神気力はこの世界では一般的な力のはず。ずっと山に篭って過ごしてきたとかそんな風じゃない限り、あんたくらいの歳の子が知らないなんてことはなさそうだけどもね。自分の名前を覚えていることやスプーンなどの道具も問題なく使えていたことから記憶喪失の線も薄いとみるのが妥当かね〜。俄には信じがたいことだけども、別の世界から来たとかならまだ合点がいくかね」
マイアさんは何かを見透かすような顔で言った。
正直、洞察力が凄すぎて怖い。
この人に隠し事は通じなさそうだと、私は観念して言った。
「実は本当に異世界から来たって言ったらどうします…?」
マイアさんは声を出して笑った。
「どうするも何もないよ。でもそれあたし以外には、あんまり言わないほうがいいかもね。なんせここらで異世界人がいるなんて聞いたことないからね。精神的に狂ってるとみなされてるだろうね。もし、信じてもらえたとしても、教える人によっては、研究機関に送られるなんてことがあるかもしれない。あんたの人生は一生研究機関で研究されて終わりなんてことになるかもね」
こんなにすんなり信じてもらえるなんてと感動したが、後半の言葉で私の背筋が凍った。マイアさんは笑っているけど、当事者の私としては全然笑えることじゃない。
ひとしきり笑うと、マイアさんは真剣な顔つきをして私を見た。
「まぁ、異世界から来たっていうなら知らなくて当然か。いいだろう。教えてあげるよ。この世界のことをね」
この世界は一体。




