俺の幼馴染は、顔だけはいい。だが、それでいい。そこがいい
俺の幼馴染は、顔面偏差値70オーバーのバケモノだ。道ゆく人が振り返る、男も女も。
当然だ。美少女だから。ただし、顔以外は、並。別にスポーツ万能頭脳明晰でもない。女子の平均。飯も作れば、飯まずキャラということもなく、並の料理が出てくる。
顔以外には、本当に取り柄がない。
しかし、学生という身分ならば、それはすべての取り柄を凌駕するだろう。
で、そんな美少女というだけの人間だったら、普通は、その美少女力の発揮される若い頃を大事にして、付き合う相手を選び、将来の生存戦略を立てるはずなのに。
「ユキくーん、えへへ」
なぜか俺にばかりかまってくる。大丈夫か。お前、もっと自分のこと大事にした方がいいぞ。若いうちが華という言葉を、まっすぐ進みそうなのに、こんな凡庸な男と一緒にいていいのか。もっと有望そうな男をひっかけておけよ。
「サッカー部のーー」
「断った」
即答だった。
まだ、全く最後まで言ってないんだが。
「ユキくんが、一番」
「お前の自信は、何処から来るんだ」
「女のカン」
「そんなシャーマンなことを言われてもな」
「ええ、ユキくんは、将来性あるよ、きっと、たぶん。いや、私が頑張るよ。糟糠の妻だね」
「おい、勝手に貧乏にするな」
「わたしには分かるよ。売れないミュージシャンみたいなユキくんを支える未来がーー」
「俺はバンドとかしてないんだが」
人を勝手にバンドマンのしてくれるな。そんなルックスでもないし。
「比喩だよ、ひ、ゆ。さあ、登校するぞぉー」
「なんで、そんな元気なんだよ」
「今日もユキくんに会えたからだよ」
ああ、周りの視線が痛い。
こんな美少女の10代の貴重な時間が俺に使われていていいのだろうか。何もお返しなんてできないんだが。
もし鈍感主人公なら、美少女との時間の希少性を理解せずに、グダグダやっているのだろうが、俺はーー。
「毎日、僕の味噌汁を作ってください」
「毎日は無理だよ。でも、一緒に地獄の底まで落ちようね」
「そんなひどい返しがあるか」
女性の十代は貴重だ。いわんや美少女をや。
「そんなこと考えてたの」
「だって、学生の頃はルックス命だろ」
「今では、普通の奥さんでしょ」
「今はもう偏差値じゃ測れないさ」
「無駄にキザ」
「でも、わたし、見る目あったでしょ」
「誰だって、愛されたら頑張るもんさ」
「誰でも良かったと……」
「あー、よかった。甲子園連れてって、とか言う美少女じゃなくて」
「あはは、謙虚でしょ」
「いや、ぜんぜん」




