ビジネスてぇてぇは許さない〜〜今宵、わたしは彼女を寝取ります〜〜
「裁判長、浮気ではありません。なぜなら、こっちは本気。あっちは、ただのビジネスだからです。悪質な美人局のようなものなんです」
わたしは、同じ箱のVtuber、紅いすみを糾弾する。宮永さくらは、わたしのものです。
「まさか被告が、ここまで強気に出てくるとは。たしかに、本当のてぇてぇは、さくさくてぇてぇで、さくすみてぇてぇは、ビジネスと、リスナーの間では噂になっていますが。紅さん、そのあたり、どうなんですか」
裁判長の矢羽田クロンが、進行を務めて、紅いすみに話をふる。
「ひ、ひどいです。ビジネスだって、言われて、わたしは、こんなに悲しんでいるのに。いったい全体、どこがビジネスだって言うんですか。わたし、宮永さんとお泊まりもしたし、一緒に服も買いに行ったし、コラボだって、数多くやってきたし、この前も歌のコラボをして、なのに、どうして……」
「ああ、これは、大変悲しまれてますね。どうですか、桜ヶ峰ナヤナさん。ビジネスと言い切るにはーー」
「知ってますか。この人、凸待ちに参加した回数や突発のコラボの少なさ。結局、見てるときだけ、予定を合わせて、やってるんです。わたしは、当然、いついかなるときでも、自分の配信を無視してでも、さくちゃんにーー、ああ、そうです。紅さんなんて、いまだに宮永さん呼びですよ、あり得ますか。いえ、あり得ません。これがビジネスでなくて、何がビジネスなんですか」
「さくらさん、正直、どうなんですか」
「わたしとしては、みんな仲良くれたら、いいかなぁ」
「た、他人事のようですね」
「だって、二人ともわたしのことで争っているだけだし」
「いや、めっさ、それは当事者じゃないのか」
「クロン裁判長。わたしの名前にもさくらと名前が入っていますよね。これは絆の証じゃないですか」
「静粛に。発言を許してないですよ。でも、そのあたり、さくらさんは、どう思いますか」
「え、でも。それって、あとからあわしただけで、運営は分かりづらくなるからやめろって言ったのを押し切ってーー」
「それが愛です。クロン裁判長、愛なんです」
「いささか、ストーカーとも思えてきました。紅さんは、なにかアピールはありますか」
「まぁ、ナヤナが推してるのは分かってるけど。でも、そういうのって重いって思います。わたしは、宮永さんと自然体の距離。二人が楽な距離感を、保ってて、束縛とかしないし、信じてるから」
「裁判長、聞きましたか。放任ですよ。楽な距離って。どう考えてもビジネスですっ!!」
「ナヤナさん、静粛に。静粛に」
「浮気裁判のはずが、議題が全くそれてますね。まぁ、確実に、ナヤナさんは浮気を実行していたようですが。それでも言い寄られていただけということもあります。さくらさん、そちらにも、その気があったのでしょうか」
「わたしは、今は、裁判長がいいなぁ。わたしの防波堤になってよー」
「ええ、宮永さくら、有罪。有罪!!いろんな女子に手を出した件で」
「え、でも、わたし、一度も特定の人に決めてないよ」
「裁判長。わたしが真実の愛を教えます。本気の愛を」
「紅さんは、何かありますか」
「ありません。愛を知ったあとで、わたしの愛が本当だったって分かると思います」
「さくちゃん。さくさくコラボ、11時間耐久配信やろう」
「ええ、これにて、閉廷っ!!カンカンカン!!」
「わたしは、桜ヶ峰ナヤナとのてぇてぇを解消します」
「まさか、3周年ライブなのに。こんな場所で」
「だって、わたしが本当に望んでいる愛は、みんなで愛しあいたいってもので、わたしはビジネスてぇてぇでいいから、3股でも4股でもしたい。あ、あれ、ライブ会場が暗くなって、え、どうしてーーうわぁあああああ!!」
「さくちゃんは、ちょっと疲れているみたいです。大丈夫、わたしがちゃんと、配信外でも、しっかり診ておくから」
「ふぅ、危なかった。あやうくライブが終わるところだった。最後の曲は、もちろんーー」




