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女子にモテるために生徒会長になったのに、周りに女子がいない

「会長、わたし、会長の、何事にも全力を追求するストイックさを邪魔してはいけないと考え、今期の生徒会は、全員男子にしました」


 そう言ってきたのは、副会長の紅一点となったミレナだった。他は、書記、会計、監査、補佐、庶務、広報に至るまで全員男子という、創設以来の男性密度の高い生徒会ができていた。


「なぜ、こうなった」


 男の園を眺めながら、会長はうなる。


「代わりに、今期は、風紀委員会が、全員女子という形になりました」


 淡々と告げるミレナ副会長を睨みつける生徒会長。

 俺は、いったい、何のために生徒会長になったんだ!!

 女子とキャッキャウフフするためじゃなかったか。

 どうして、こうなったんだ。


「緊急会議だ!!ミレナ副会長」


「え、はい」


 何をとぼけた顔をしている。もはや、ここに用はない。すぐに、辞任表明を準備しなければならない。こんな濃密な男性的空間にいれば、ホモと勘違いされかねない。選抜を、ミレナ副会長に任せたのが全ての間違いだった。

 女子への顔も広いだろうし、自分で選ぶよりも角がたたないだろうと考えたのが間違いだった。Aクラスの巨乳からEクラスの眼鏡っ子まで趣味全開で自分で選べばよかった。

 しかし、後悔は先に立たない。

 

「会長不信任決議を行う」


「何をおしゃっているのですか。副会長権限で却下します」


「なん、だとっ!!」


「不信任決議は、当然、会長ではなく、副会長に議題の承認権があります。私は、その議題を取り上げる気はありません」


「では、一身上の都合で、辞めるまでだ」


「何がご不満なんですか」


「副会長、今まで君に言ってなかったが、私は、煩悩を満たす、ただそれだけのために生徒会長になったのだ。生徒会を私物化し、俺以外全員女子というハーレムを建設するために、今まで血の滲むようなーー」


「ーーええ、風紀委員会に入りたいと、会長がおしゃっています。ーーええ、女子に囲まれたいらしくーーはい、ええ、どのようにしてもかまいせん」


「ちょっーー、ミレナちゃん、どこに連絡しているのかな」


「大丈夫です、会長。風紀委員会の女性陣は、全員、ムキムキですから。会長も思い直されると思います」


 ギィィーー。

 扉が開くと、そこには、男のような女がーー。


「うふん、じゃあ、もらっていくわネ!」


「はい。会長をよろしくお願いします」










「百合とBLだけが正義。異性交遊禁止。異性愛、おかしい」


「会長、落ち着かれましたか」


「うん、私は、普通。私は、まとも」


「傷心のようですね」


「予算をカットしよう。あれは、どこの部活だ。部費を減らせ」


 風紀委員会はレスリング部にでも所属しているのか、全く。


「あ、会長、戻られたのですね」


「ミレナ副会長の顔を見ていたら、私の内なるリビドーが、再活性化したようだ」


「それ、セクハラですよ」


「すまない。まだちょっと心臓がーー。多少の不謹慎な発言は、許してくれハーレム」


「会長、そんな語尾はおかしすぎます。というか、なぜハーレムを目指すのですか」


「俺のマグナムが6発装填ーーぐぼらえっ!!」


「これで1発になりましたか」


 俺の六つの玉袋を潰しにかかるなんて、なんてやつだ。


「あ、ーーふっ、ふっーー1発、どこ……、ろか、全弾持ってかれる、ところ……だ」


 ミレナ副会長が容赦なく男の象徴を蹴り上げることができるレディだったとは。予想外だ。


「去勢すれば、少しは落ち着かれるかと」


「私は発情期の猫かっ!」


「むしろ、それより悪いです。会長、1人の人間に身も心も捧げる気はないんですか」


 副会長が、私を、うるうるとした目で見つめてくる。潤んだ瞳は、とても愛らしく、その計算され尽くした上目遣いは、全ての男を虜にするだろう。


「だがっ、断る!!」


 同時に、股間に蹴り上げられてくる蹴りを避ける。危なかった。テコンドーでもやっているのかね、副会長よ。

 

「私は生徒会長である以上、生徒を等しく平等に愛さないといけないのだ」


「ーーええ、お願いします。会長は、男もイケる口らしいです。等しく平等らしいです、はい、はい、どうぞお好きにーー」


「ちょっと待て!!どこに電話をかけた」


「安心してください。ちゃんと着衣されてますから」


 バンッと扉が弾かれるに開く。

 そこには筋肉以外全てを忘れたような脳筋肉な生物が、数人も。


「おお、生徒会長っ!!さあ、俺たちと!!青春の汗を!!流そうぜっ!!!!!」












「筋肉バンザイ、筋肉バンザイ!!部費は、筋肉の量で決める」


「いえ、大会での記録と部員数、とその他諸々で割り当てます」


「何故だっ!!」


「正気に戻ってください、会長」


「ん、ああ、そうだな。天使のような副会長の声と、その女性らしい体付きを見ていると、落ち着いてきた」


「セクハラですね。お茶を頭にかけますよ」


「やめてね、静かに、ワビサビを感じるように机においてね」


「会長、私考えました。会長が、そういうイヤらしい人だとは理解しました。しかし、今更、生徒会メンバーを変えることはできません。ですから、私はーー、生徒会メンバーを全員、女装させることにしました」


「なるほど、俺の目は正常だったか」

 

 このむさ苦しい男の園で、自分だけズボンを履いている。他はスカートなのに。君たち、パワハラには抵抗していいんだよ。副会長の権限に、衣服の指定なんてないんだから。


「さて、では本日の議題を始めようか。女子のスカートの長さの問題だ。膝丈までが長さの基準になっているが、最近、ロングスカートにしている女子が多い。女子のスカートが長すぎると、苦情が殺到している。私は、このような陳情を汲んで、校内での女子のスカートの長さに関して厳格なルールを作りたい。君たちの意見が聞きたい」


「膝上、10cmが妥当でしょう」

「座る時に短いと困るので、こう、後ろだけ少し長くなりませんか。前は、もっと短くしましょう」

「ミニスカート以外禁止にしましょう。暑いですし」

「短くても、パンツじゃなければ恥ずかしくないでしょう。下着の規定を作りましょう」

「スパッツは絶対に必要です」

「いや、短パンの方が逆にーー」

「黙れ、お前はそんなだから生足よりもストッキングとか倒錯するんだ」


「会長、男子の制服もスカートにしましょう。時代はユニセックスです」

「ちょっと待て!ミレナ副会長、何故、スカートを手に近づいてくる。私は着ないからな」

「何故です!!他の生徒会メンバーは着用していますよ」

「会長だけズルイっす」

「会長、あなたもスカートを経験すべきだ。ジェンダーフリーの話をしているのに、そんな格好でいいわけがない」

「まずは、外側から入ってみようか」

「バニーの衣装もありますよ」


「よせっ!!よすんだ。お前たちーー」




「さて、全員スカートになったところで話を戻す」


「確か、スカートの柄をチェックにするとか」


「そんな話はしていない。個人の嗜好は置いておけ」


 スカートの長さをチェックするんだ。断じてチェック柄の話ではない。だが、赤色と茶色ベースがいい。


「しかし、下着の色の規定が校則にあるんですよ。例えば、今、ミレナ副会長は白の下着をつけていると、全員知っているわけでーーぐはぁっ!」


「書記、今の発言は書き留める必要はありませんよ」


「は、はい」


「たとえ、校則で白と書いていようが、ミレナ副会長は、だいたいショッキングピンクや水色を着用していることぐらい、生徒会長である私は把握ーーぐあはざああぇい、ちょっ、椅子は、マズっんえじえいdbw」


「あははは、全く、会長は冗談が好きですね、ねえ、今のも書いたら、学校生活が終わるからね」


「は、はい」


「よこっらせ」


「会長、復活が早いですね」


「ひぐらしが鳴いている夢を見たよ。ーーまあ、慣れてるから、大丈夫だと。だいたい、校則で着る服を縛るというのは、自由な校風であるはずの我が校に反している。わたしは、別に、私服登校でもいいと思うが。服装の規定が細かいと、まるで囚人にでもなったようだ」


「しかし、会長、ある程度は、規定がないと、風紀が乱れる可能性が」


「風紀委員会があんな化け物なのに……」


「会長、それは女性の容姿に対する侮辱でしょうか」


「書記、今の発言を書いてはいけない。ここは健全で男女の仲が良い素晴らしい学校なのだから、女子がレスリング部を作ろうが、男子料理部があろうが、全く気にはしない」


「さすが、会長です。先ほどの発言も風紀委員会の実力行使の力を誉めたものですよね」


「ああ、もちろんだ。ーーよし、では、男女平等に、全員、校内では、服は着用禁止と。全裸こそ、人の正しい姿。生まれ持って得た肉体、何を恥じる必要があろうか。かつて偉大な独居老人は言った。全裸待機こそ、人の最後にふさわしいと」


「会長、裸ジャンピングトルネード土下座の銅像にしますよ」


「怖い事言わないでくれ。俺は、よく分からない校内の裸の銅像にはなりたくない。ーーわかった、校内のある一画をヌードィストビーチとして解放しよう。それが限界だろう」


「会長は限界ということを学び直した方がいいです」


「わかっている。限界とは突破するためにある」


「全然分かってないです。さ、早く、スカートの長さの話に戻りますよ」


「だがな、長すぎるのがいけないとは、どういうことだ。普通、短すぎるというのが一般的な非難だろう」


「最近、ロングスカートブームなんです。ファッションですから、長い方が今は可愛いということです」


「なるほど。分からん。女子の可愛いは謎だからな」


「まあ、規定の長さに直すのは必要か。いつか、十二単衣のように、床をスカートが引き摺るようになるかもしれない。そうなると、男子は女子のスカートを持ってあげるという謎の風習が生まれかねない、ん、いや、ありか?」


「どうでもいいです」


「それにしても、ミレナ副会長は、スカートが標準的な長さだな」


「当然です、生徒会メンバーですから」


 この場で、まともな服を着ているには副会長だけなんだが。他は、男子なのにスカートだし。


「メデイア部です。今週の校内での新聞なんですがーー、スクープです」


 突然入ってきたメデイア部の女生徒がカメラをパシャパシャと撮っていく。ロリな三年生は、パシャリと遠慮なく撮っていく。


「待って!!誤解するな。これには海よりも深く山よりも高いーー」


「事実がどうあれーー男だらけの生徒会ーーしかし内情は女の園。生徒会長の倒錯的な欲望が明らかに」


「その記事は検閲対象だ」


「メディア部は権力には屈しません。まさか生徒会が、ここまで醜悪な私物化を受けていたなんて。これは、即解散もあり得ますよ」


「ーーーー…………よろしく頼む」


「はい??」







『号外!!✖︎✖︎校内新聞。生徒会長、女装趣味を生徒会メンバーに押し付け!!あきれる副会長、怯える書記。男子のスカート着用議論白熱か!」


「ホント退屈しないなぁ、この学校は」


 スカートに短パンを履いた女生徒は、バカみたいな新聞を横目に、缶ジュースを飲みながら、下校していくのだった。


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