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幼馴染に振られてから始まるギャルゲ世界だったと、今更気づきました。もう全力で幼馴染との甘々関係を作ってしまったけど、壊さないとダメですか


 俺が、これがギャルゲー世界に転生したと気づいたのは、遅すぎた。

 ゲームのストーリーの始まりは、幼馴染に振られたあと、奮起して細マッチョのイケメンに大変身した主人公が、高校入学するところから始まる。

 だけど、俺は、振られてない。どころかーー。


「あーん」

「あーん、やっぱり、サトミの手料理は最高だ」


 だって、幼馴染とのイチャイチャななんて全男子の夢だろう。生まれ変わったりしたら、恋のテクニックの全てを駆使してでも、幼馴染を落とすよな、そうだろう。だから、俺は悪くない。これは必然であって、ジャスティスだった。


 さて、幼馴染と今、現在イチャラブ生活をしていることに何の不満もない。しかし、このギャルゲー世界には、たしかハーレムエンドというものがある。

 つまり、男の夢の頂点だ!!!

 幼馴染どころか、部活の妹系の後輩、凛々しい生徒会長、学園のアイドルである同級生ーー、その他もろもろ計8ヒロインとの酒池肉林っ!!


 これを目指すためには、幼馴染と別れて、他の七人との好感度のパロメータを完璧に平等にコントロールしなければならない。かなりのイバラの道だ。

 もし失敗すれば、スクールデイズは、それこそまさにスクールデイズだ。

 結論を言うと、このまま幼馴染エンドという安全で幸せなルートを取るか、ハーレムエンドという危険で至福のルートを取るかの問題だ。


 ーー安心しろ、俺はビビリだ。だから、ルート選択はあやまらない。幼馴染だけを彼女にして、安心安全セカンドライフを満喫する。

 そう思っていた頃が僕にもありました。


 だって、無茶苦茶カワイイんだよ、後輩が。それに生徒会長の毒舌も捨てがたい、超アイドル級の美少女ともキャッキャしたい。

 そこで、俺は思いついた。思いついちゃったわけよ。

 別に、既存のルートを選ばなくてもいいだろ。


 つまり、ハーレムエンドのように、8人の勢力均衡のウエストファリア条約ではなく、別に一人ずつ攻略していっても構わないだろう。

 大丈夫、俺ならば、バレずに八股したあとに、口先の魔術でどうにかできる。

 女の子が二人だと喧嘩になる、しかし、20人だとーー。よし、グーテライゼ!!




「え、幼馴染と付き合ってるよね」


 しまった、バレる以前の問題だった。

 俺が幼馴染と付き合ってることは学校中を駆け巡っている情報だ。知らないやつはいない。いや、一縷の望みはある。天才図書館入り浸り謎っ子から落とせばいい。


「僕と一緒に学園ライフを楽しもう」


「あなた、誰?」


「ふっーー」


「わたし、デブ専じゃないの、ごめんなさい」


 嗚呼、幼馴染のご飯が美味しすぎるから!!

 ごめんよ、細マッチョじゃなくてごめん。

 でも、デブじゃない。まだBMIは25を超えてないから。あ、でも、それは社会人的な感覚か。高校生なら、普通、22だよね、そして細マッチョならば20を切っている。


 うん、痩せよう。


「どうしたの急に」


「ごめんよ、サトミ。ぼくは痩せないといけないんだ」


 山籠りしないとな。全てはモテるためである。


「どうして、わたしのこと嫌いになったの。」


「違うよ、僕はモテたいんだ」


「やっぱり、私じゃ、満足できないんだ」


 だめだ。これ以上いると、情が移る。俺は行かないといけない。ハーレムエンドを目指すために。

 俺は相対性理論を身体で理解して、走り去った。もちろん、俺の一存だ。





「来たか」


「ああ、じっちゃん。俺を鍛えあげてくれ。じっちゃんの名にかけて」


「ワシの修行はツラいぞ。そうオ○禁半年よりもキツい」


「じっちゃん、俺の目を見てくれ。漢の眼だろ。覚悟はできている。今日の非モテは明日のモテのため!!」


「よかろう、貴様を、世界一のハーレム王にしてやる。さすがは、ワシの12番目の妻の三男だ」





 山を駆け降りて、ひとりの少年が、その街に舞い降りた。

 男の名前は、(たくみ)隼人(はやと)

 その美貌は、乙女を一瞬のうちに恋させ、その筋肉美は、数多の腐女子を魅了する。美男子という言葉、現代の光源氏とは、この人か、と思わせる超絶イケメンである。白い歯がキラリと光り、その後ろには薔薇の花が舞っているかのようだ。

 そんじゃそこらの凡庸なギャルゲー主人公ではない。

 匠は、確信している。俺はモテる、と。


 今、匠が、半年ぶりに、学園の門をまたぐ。


「あ、キミ、留年してるよ」


 しまった。やりすぎた。

 たしかに、ギャルゲーの主人公も、ここまでは鍛え抜かれてはいなかった。今ならば、銃弾をも弾く義和団だ。

 とにかく、後輩から落とせばーー。

 俺は自分のクラス《一年生》に向かった。


「ちょっと来てくれ」


「え、な、なんですか」


 あれ、後輩との出会いって、確か、入学式で困っているところを助けるというテンプレだったよな。

 どうしよう。


「俺は困っている」


「はい?」


「授業の内容が分からない」


「はい?」


「キミに教えてほしい」


「えっと、ごめんなさーーい」


 逃げられた。

 冷静になろう。

 もはや、ここはギャルゲーであってギャルゲーでない。時間軸が移動しすぎたせいだ。自然な出会い系イベントを全て見過ごしたわけだ。

 たっはー、これは困った。つまり、俺はナンパ男から始めないといけないわけだ。




「どうも、留年生の匠隼人です。いいか、お前ら、よく聞け。ここにいる女子全員、俺のこと好きだって言わせてみせる!!」


 クラスで宣言しておいた。こういうことは早めに言っておくことが大事だ。もはやなりふり構ってはいられない。

 これは戦争なんだ。

 俺とギャルゲー、どちらの意思が強いか。

 俺ーー、なに、やってんだろう。


「はい、自己紹介は終わり。席について」


「あ、はい」



 ああ〜、どうしよう。

 こうなれば、まずは不良少女から落としに行きますかね。ひとり落とせば、ドミノ式に女子も落ちていくだろう。それがグッピー理論であり、冷戦をホットにするドミノ理論だ。鉄のカーテンをいま、こじ開ける。雪解けは近い。


 屋上に登れば、たそがれた憂いを帯びた少女。アンニュイな雰囲気でB級グラビア雑誌を飾ってそうだ。

 俺たちに翼はないのに、彼女は、屋上のフェンスを登っていく。

 あ、やばい。待たせすぎて、ついに、ヤンデレ化が、行きすぎた。安心しろ、まだ間に合う。


「あなた、そこでなにをやっているんですか?」


「フェンスを登るときに見えるスカートの中に興味があるだけだ。気にするな」


 少女はフェンスから手を離して、降りる。


「そうですねーー、死ぬ前に、目の前の害虫を駆除しておきましょうか」


 わーい、ヴァイオレーンス。

 落ち着こう、まずは文通から始めようじゃないか。そうすれば、他殺なんて考えなくなる。

 というか、なんでナイフを持ってるの。


「待ってくれ、話を聞かせてほしい。いったい、どうしたっていうんだ」


 ナイフは、どうやら止まらないらしい。

 しかし、匠は見事な徒手空拳で、ナイフをーー掴み、クシャーー。


「えーー」


「すまないな。俺にナイフは通用しない」


「おぞましい変態ね」


「はっはっは、褒め言葉として受け取っておこう」


「なに、それで私の邪魔をするつもり」


「わかっている。俺との結婚を前にしてマリッジブルーなんだろ」


 少女のナイフの二本目が飛んできた。頸動脈にあたって、そのまま地面に落下した。虫に刺されたような感覚だ。


「〜〜〜〜」


 少女が面白い顔になっていた。

 それにしても危険だ。もし死んでいたら、死後の世界から、手紙を送ることになっているところだ。


「過激なアプローチをありがとう。さあ、満足かい、僕と一緒にーー」


「わたしは魔物を討つものだから」


 大きな刀が亜空間から出てくる。

 さすがは巫女産業。巫女巫女にされる。

 ちょっと一人だけゲームの趣旨から外れているんだよなぁ。

 まあ、そんな世界だから、俺もーー。


「みろ、俺の魅了の魔眼をーー」


「見るわけないでしょ、このバケモノがっ」


 あ、俺の右腕が飛んでいる。

 あはは、じっちゃんに何度も切り飛ばされたなぁ。

 よっこいせ、ヒールと。うん、腕が繋がった。


「さあ、既成事実を作るぞ!!」


「ちょっ、近づいて来ないで。寄るな、触るな、近づくなぁ!!」


 




 おかしい。

 最近、ヒロイン全員から視線を感じる。

 しかも、死線だ。

 ありていに言えば、殺気だ。

 俺を何か、この世界に登場する悪役か魔物か、勘違いしているようだ。


「サトミ、お前は、わかってくれるよな」


「誰だっけ。気安く話しかけないでくれる」


 おいおい、赤の他人に比べても辛辣すぎる言葉いただきました。

 どうして、こうなったーー。


 少しじっちゃんから長すぎる修行を受けただけなのに。おかしい、確かに、俺は達人の域に達した武術スキルに、意味不明の魔術を使えるが、至って普通の男子高校生だ。オマケにイケメンだ。

 もっと女子にキャーキャー言われてもおかしくない。

 精神的にも大人になって、きちんと煩悩を抑え、目的のために手段も選んでいるのに。


 とりあえず、学校がテロリストに襲われて、活躍したいなぁ。そうすれば、俺はモテモテになれるのに。あれ、人生一回目と思っていること、変わらないぞ。


『テロリストだ!!全員手をあげーー、へぶっ』


 ん、何か聞こえたような。

 オッサンが複数人、ヒロインにやられていた。

 どうやら、痴漢か不審者の類のようだ。

 一瞬、テロリストという声が聞こえたが、自分からテロリストと名乗るテロリストなど、聞いたことはない。空耳だろう。


 しかし、あまり無駄に動いて世界を改変すべきじゃないなぁ。やはり相対性理論を身体で理解するのは無理があったか。いろいろと壊れすぎて収拾がつきません。

 

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