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隠し場所に困ったので

 今日、友人が来る。高校生になって、初の友人来訪だ。俺は、高校デビューを見事に果たしたが、部屋の中は、見事に陰キャだ。


 ということで、だいたいのものは隠した。しかし、忘れていたのだ。男子高校生、最大の隠しものを。


 それは、Hなる本だ。

 いつもは、ベッドの下に隠しているものだ。


 気づいたのは、学校に行く前、つまりは、次の瞬間には友人が来てしまう。とりあえず、俺は、学校にブツを持ってきてしまった。慌てていた、遅刻しそうだったし。


 しかし、賢い俺は、気づいた。

 置き勉していけばいいんだ

 そう、この神聖なる本は、学校の机で寝かしておけばいい。そして、後日、回収する。完璧だ。


 ということで、友人を呼んで、その日を、楽しく終えることができたのだ。



 問題は、これからだ。


 次の日、当然、俺は、名前を言ってはいけないあの本を回収することが必要だった。

 しかし、なかった。朝イチで来たのに、ないのだ。


 え、俺の本が、バーニングフラッシュ!!

 

 俺はクラスを見回す。

 もしかして、俺のお宝を、見事にくすねた人間が、この中にいるのか。この中に一人だけ、俺の性癖を知っている奴がいる。

 まあ、今は、朝イチで誰もいないのだが。

 俺の性癖の参考資料を、閲覧して、あまつさえ譲渡しているかもしれない。貸し出し禁止の焚書をーーいや、悶書を。


 事態は一刻を争う。

 俺は、次々に机の中を漁っていく。

 別に女子のリコーダーに目を移したりしない。なぜなら深刻だから。俺は女子が座っていた椅子に座って温もりを楽しむような昼休みの奇跡を喜んだりする男ではないんだ。


 ないっ!!

 ないぞっ!!


 まさか、お持ち帰りぃぃぃぃぃぃぃぃ、なのか。


 いや、待て。これは意外と安全なのではないか。持ち帰って帰ってこなければ、それはそれで問題はない。クラス中に、噂が75日流れるよりは、圧倒的にマシだ。

 それに、人の物を盗むのは窃盗だ。

 うん、相手がいても、相手の弱みは握っているわけだ。


 ガラガラーーーー。


 ちょうど女子や男子の置き勉を確認したり、荷物を漁ったりすることが終わって、沈思黙考のポーズをしていると、クラスの女子が一人、朝も早くやってきていた。


 彼女は、大きめのトートーバッグを後生大事に抱えていた。

 そのとき、俺は確信した。

 あの中身が透けて見えたのだ。

 そう彼女の今日のパンツの柄はーー、そうじゃない。


 あのバッグには男子の夢が詰まっている。

 俺も抱き抱えられたい。


 そうと分かれば、俺は、席を外そう。

 そう席を外している間に、返してくれればいい。

 女性だって、思春期だ、ちょっと気になるH系の本があれば、ほんの少し好奇心が窮鼠猫を噛む。うん、意味わからん。

 でも、別に俺が猫耳マニアで、水着に猫耳に尻尾とか猫耳ニーソとか、そんなアニマルな妄想を豊かにしているわけではないと、ここに名言しておきたい。



 


 席をはずして、戻ってくると、本が置いてあった。

 剥き出しだった。

 本は裸体だった。

 赤裸々だった。

 万事休すだった。


 すでにクラスメイトが人だかり。

 俺は、何事もなかったかのように、屋上へと去った。

 

 なんてことをしてくれるんだ、あの(あま)ぁ。

 そんな非人道的な行いがこの世で許されるのでしょうか、ねえ、先生、教えてください。

 ほんのちょっと、18歳以上には見せられないよ、をこっそり見ていても、ここまで(おおやけ)にされるものでしょうか。


 ふぅ、風が冷たい。

 いつ、俺は間違えたのだろうか。

 あの日に戻ることができたならば、別のやつの机にこっそり置き勉したのに。


 朝の始業のチャイムを待って、席に戻ると、何事もなく、授業は始まった。

 俺の机にご来場したはずの朝日は、影も形もなく、炭すら残さず、サンセットしていた。


 机をまさぐる。

 どうやら、ブツはないようだ。

 まあ、つまり、再び他人の手に渡ったと。

 あはー、みんな、お茶目なんだから。

 というか、なんで女子たちは俺をチラチラ見るんだ。

 違うんだ、今朝机の上で見たものは、俺のものじゃない。そう断じて俺のものじゃない。俺の部屋からこの教室にやってきたとしても、俺のものじゃない。


「ええ、〇〇、後で職員室に来なさい」


 あ、ですよねー。

 回収されてるんですよねー。

 やだなぁ、先生、僕の好みは、そこまで、上じゃないですよ。





「ああ、男子学生が、そういうことに興味があるのは知っている。しかし、白昼堂々と教室の机に置かれると、注意しないわけにはいかないぞ。先生も隠れて、ゲームをしたり、カツアゲしたり、タバコ吸ったりしているのは知っているだ。けどな、堂々とやられたとあっては、こっちも無視するわけにはいかないわけだ」


「あのー、それは俺の机にあっただけで、俺のものではーー」


「なるほど、お前の持ち物じゃない。だが、幼馴染に確認したが、お前のものだと言っていたが」


「えっ?」


 ちょっと待って。

 俺のクリティカルな致命傷は、俺の幼馴染に、筒抜けだったの。つくえのしたというベタ中のベタに隠していたのに。


「あと、母親にも確認を取ったが、お前が所有したもので間違いないようだ」


「……」


 終わった。

 俺の学生生活と家庭生活が同時に終わった。


「安心しろ、クラスの連中には、誰かの悪戯だろうと言っておいたからな」


「先生っ」


「ということで、今年一年、色々とこき使うかた、よろしくな」


「先生ーー」


「なんだ、まだ言い訳でもあるのか」


「あのー、返していただけますか」


「ああ、アレ。幼馴染に渡しておいたから、後で取りに行けばいいよ。いやぁ、幼馴染の女の子がいて、青春だねぇ」


「もう、朽ち果ててる可能性が大ですけどね」


「大丈夫。人生100年。今からでも新しく女の子と友達になれば、幼馴染になるさ」


 

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