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Sランク発見!



「外で食べようって… 珍しいな」


紅葉の季節でもない限り今まで菫は外で食べようなんて言ったことがなかった。


「ちょっとね… 気分転換って言うか」

どうも今日の菫はおかしい…


「何かあったのか?」

「ううん、何もないよ… ってか何もなさすぎるのかな…」


どういうこっちゃ? なさすぎるって…何?


「泰助は今生きてるって実感したことある?」


ブッボホッ…ゲッホゲッホ… 

飲んでいたお茶を思いっきり吹き出したので、目からお茶が出てきた。すっげー痛い。

……何言ってんだこいつ。


実感も何も今朝生き残った喜びをリアルタイムで実感させて貰ったばかりだよ… お前にな…


「一体どうした?」

「佑助君と椿を見てて… いいなぁ~ って思う所があって…」


その関係をおまえが小姑のようなこと言って邪魔しようとしてたんだろーが…


「菫も彼氏をつくったら? 申し出は腐るほどあるだろ?」

「いっぱいあるけど… 私が好きになれる人じゃないと。それに… 付き合う相手は決まってるから」


「そうなのか? ならいいじゃん、そいつを急かして早く付き合えば?」

「そうしよっかな~ もうこれ以上遅くなるのもなんだしね」


「相手の人って菫が言えばすぐに付き合ってくれるんだろ?」

「それは間違いないけど… 本当は相手の方から… ううん、何でもない」


「何かややこしそうだな。 ま、取り敢えず頑張れよ」

「うん、ありがとう 泰助」



何だか菫も恋の悩みみたいで… みんなお年頃なんだろう。

菫の表情も明るくなり、いつものように元気よくなってきたので会話も弾みだした。

楽しく喋っていると突然菫が俺を呼ぶ。


「泰助」

「ん、どした?」


「泰助、はい あ~ん…」


菫はいきなりそう言って玉子焼きを箸でつまんで俺の方へ向けた。

………? 一体何なんだ? 今日の菫はおかしいぞ…


「なしたの?」

「付き合う時の練習だよ、はい あ~ん…」


なるほど。俺で練習しようってことか… それはいいんだが… やっぱこういうのは苦手だな。

でも菫のためだし、相手してあげようか。

そう思って菫の言う通りに従って菫に食べさせてもらう。


「美味しい?」


本音で言えばどうやって食べようが味なんて変わるわけがない。だけど… 菫を喜ばせてあげようか。


「菫に食べさせてもらうとさっきよりも美味しく感じるよ」


ヤバい… 自分で言っててじんましんが出そう…

俺がかゆみを感じながら菫を見ると、頬をポッとほんのり赤くして俯いている菫がいる。


これ、練習だよね… バーチャルだよね… 菫のあの表情もバーチャルだよね、演技力すごっ!


「泰助も私に食べさせて」


俺もやるの? やだよ~ でも仕方ないか…


「菫、あ~ん…」


俺が箸でつまんで差し出したウインナーをぱくりと食べた菫は嬉しそうにもぐもぐしている。


「泰助に食べさせてもらうと幸せの味がする」


菫、お前女優になれ。 この演技力半端ないわ… アカデミー賞狙えるぞ。


一方食べさせた方の俺は… 何故かさぶいぼが立ってきた。

いくら菫のためとはいえもう限界だ。俺にはこういうの無理だ。

後は本物の彼氏とやってくれ。



でも、やっと菫にも彼氏ができるんだ。

菫を獲得するなんてあれだけの競争率を勝ち抜いた勝者はいったいどんな奴なんだろうな。


なかなか彼氏をつくらなかった菫がようやく彼氏をつくる… 何か感慨深いものがある。

そう思った時、ふと菫に聞いてみたくなった。


「あのさー、今度は長く続くんだよね?」

何せ最長記録1か月だからな… そのペースなら年に12人と付き合えるぞ。


「大丈夫、今度のは本命だから」

「じゃあ今までのは?」


「あれは… ノリのようなもんで…」

菫がノリで付き合うって… ほんまかいな?


「本当に続くのか? また1か月とかじゃねーの?」

「大丈夫、結婚まで行こうと思ってる… ううん、絶対行くから」



すげー、菫ってそんなこと思ってたんだ… 結婚は流石にびっくりしたぞ。

しかし、…その相手の人が幸運なのか不幸なのかかなりビミョーだな。


菫の美貌や抜群のスタイルをものにした相手は最高の幸せを感じるだろう…

だが、あの殺人技を食らった瞬間に一気に不幸のどん底を味わうことになるぞ。



何か微妙な菫とのランチタイムも終了し、午後の授業が始まった。

そう言えば今日の最後の時間はLHRで確か席替えがあるんだった。


俺は座席に全く拘りは無いが、一番前と菫の横以外だったら何処でもいい。

菫が横になると四六時中母ちゃんに見張られてるような気になってたまらん。



そんなことを思っていたらLHRの時間がやってきた。

席の決め方はくじ引き… 箱の中の紙を1枚引いて書かれている番号の席を座席表で確認して新しい席に移動する。


取り敢えず俺も1枚引いて書かれてある番号と座席表を確認すると一番廊下側の列で前から5番目、なかなか良い席となった。


ちなみに秀雄は窓側の後ろから2番目、菫は前から5番目の廊下側から4番目、俺と菫は間に2人を挟んで並ぶようになった。


とにかく最悪の事態にはならなかったので安心して新しい席に座り皆の移動が終わるまで机に突っ伏して寝ていた。やがて移動も完了し、先生が話し始めたので起きると俺は俺の周りのメンツを確認してみた。


これといった問題になるやつもいなかったのでほっとして気を緩めていると何やら左腕にツンツンと感じるものがある。左を向くとそこには女の子が座っていたが、その子が俺の腕に指でつんつんしているのが分かった。


はて… 身に覚えのない女の子が何故?


先生の話が終わり授業が終了となるとその子が話しかけてきた。


「……あの~ 私を覚えてます?……」


ぼそぼそとした小さな声で俯き加減に聞いてくる彼女を見てみるが… 全く記憶にない。


「ご、ごめん… ちょっとわからない」


俺がそう言うと女の子ははっとした感じになり、急に眼鏡をはずして顔を上げた。

そして前髪を手であげて俺によく顔を見せる… その顔を見た俺は仰天した。


本屋のレジの女の子……


意味が分かった俺はだんだん焦り始めた。

するってーと、俺はだな… 毎回この同級生の女の子にエロ本のレジを頼んでた… そう言うことかい?


今度はこっちの方が落ち着かなくなってきた。

やべー、やべーよ… 知ってたんだったらもっと早く言えよ。


「い、いつから俺のこと知ってたのかな…」

「このクラスになった時から知ってたよ」


だったらもっと早く言おうよ~ 黙ってるのはズルいよ~

その子はクスクスと可笑しそうに笑っていた。


俺は決心した。3連コンボで行こう。

① まず頭を下げて謝って……か・ら・の

② 両手を合わせて拝み倒しての懇願……か・ら・の

③ 土下座でダメ押しの誠意を示す。


以前、菫に半殺しにされた時もこの方法で許してもらった。


「た、頼む… 本屋でのことはご内密に… この通りですだ… お代官様」

「大丈夫、誰にも言わないよ」


これから華麗なる3連コンボの2連目に移行しようとしていた時にその女の子は俺の耳元でそっと優しく囁いた。


ラッキ~ 案外チョロいぞ。 ふぃ~い… 助かったぜ…


でも、ほんま ええ子や~ この子はええ子や~


それから俺は初めてその子をまじまじと見てみた…



……………ブ、ブラボー!!!


う、美しい… 美しすぎる。 遂に発見してしまった… しかもこんなクラスの片隅で。


Sランクおっぱいを発見した!!!



その女の子は俺とひそひそ話すためにやや前かがみでこちらを向いていた。

そして顔を見上げるようにして俺と話す… そうするとブラウスの胸元には隙間ができて谷間の様子がもろ見える。


夏服サイコー! 冬服なら見逃すかもしれなかった。 危ねー危ねー。

そこには… 白く透き通るような色をした肌が究極の曲線美を描いて膨らんでいく素晴らしい胸の谷間が見えた。


肌の美しさ、大きさ、形、曲線美、何をとっても申し分ない… 満点だ。

こんなところに眠っていたなんて… この子を見い出せなかった俺は愚か者だ。


まだまだ俺もぬるいな…


それからようやくその女の子の顔を初めてじっくりと見た。

前にも言ったが俺はまず最初におっぱいを見る… まじまじと。


よく見ると目、鼻、口、全てのパーツの作りは完全に整っている。

顔の輪郭も美しい。


ただクラスでは眼鏡をかけ、前髪をおろして髪型もちょっともっさりとしている…

クラス内で見ると完全な地味子である。


だが、俺が本屋でこの子を見たときはいつも眼鏡はしておらず、髪の毛も前髪はピンでとめて顔全体が良く見えていた。それに結構可愛い子だと思っていた。


こんなに変わるもんなのか?


「前から話してみたいと思ってたんだ。よろしくね。私は尾賀奈瑠美おが なるみ

「こ、こちらこそよろしく。俺は……」


「知ってるよ、有名人だもん。柳瀬泰助くん」

彼女はそう言ってニコッと微笑んだ。



だめだ、むっちゃ緊張する… 女の子相手にこんなけ緊張するなんて初めてだ。

て、手が震える… ひ、膝が笑ってる…


今俺の目の前にいるのはSランクおっぱいを所有する少女。

眩しい… 眩しすぎる… 君のおっぱいが…


他人に言われなくてもわかる… 

今の俺の表情は、もうユルユルのデレンデレン…

鼻の下なんてキリンさんもびっくりっていうくらい長くなっているだろう。


もう気分は最高!


俺は思わぬ拾い物をした感じで有頂天になって喜んでいた。

そしてもう一度彼女{のおっぱい}をまじまじと見ようと思い彼女の方へ視線を向けると…


その背後には暗殺者がいた。



尾賀さんの左隣のまた左隣にいらっしゃるのは天下の美少女、菫さん…

菫はこっちを見ていた。殺人鬼のような目をして…


あかん… あれは誰かを殺そうとしてる目や…


菫の怒った顔は何度も見たことあるが、その顔は俺も生まれて初めて見るほど恐ろしい顔だった。


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