弟 佑助
今日の授業も終わりようやく放課後となった。
今は6月中旬、2年生のクラスにもみんなが馴染んできたころだ。
秀雄たち野球部はこれからが勝負どころ… 甲子園目指して頑張っている。
多分目指すだけになると思うが…
言い忘れたが佳蓮は野球部のマネージャー… というよりあいつは秀雄の専属マネージャーだ。
今日も秀雄と一緒に部活へと向かっていった。
そういや佳蓮は俺と一瞬目が合ったが、物凄い“念”のこもった眼差しで俺を見ていた。
そんなに俺を真剣に見つめるなよ… 照れちゃうだろ(ポッ…)
しかし梅雨でじめじめして蒸し暑くなってきているのによくもまあ頑張りなさる…
だが俺にも今日は大事な用がある。
定期購読しているエロ本の発売日だ。
もうすぐ夏… といえば水着… と、その下に隠されている究極のおっぱい。
夏… なんていい季節なんだろう。 女の子の固いガードを簡単に崩してしまうその力…
街に出ればTシャツとブラしか着けていない女の子の究極の薄着状態…
もうウハウハですわ~
この季節になるとよく“透けブラ”などをみて興奮しているくだらない連中がいる。
そんな連中に向かって一言。
あえて言おう… カスであると!
大事なのは中身だ。ブラはあくまでもカバーでしかない。
しかも大事なおっぱいを隠しやがって…
俺は中身にしか興味はない。ブラはあくまでも中身を少しだけ見せるための演出をするものだ。
ブラはチラ見せ効果のためだけにある。
あんなものがTシャツから透けて見えて何が興奮するんじゃい!
俺からすればみんなぬるい… ぬるすぎる!
こよなくおっぱいを愛する俺達への冒涜だ。
おっと、熱く語りすぎた。
とっとと買って速攻で家に帰りじっくり鑑賞せねば…
俺は意気揚々と学校を後にして常連となっている本屋へと向かった。
一応あの手の本は18禁なので俺も気を付けてはいる。
要はレジを無事通り抜けれればいい…
みんなは良く勘違いするが、あの手の本は若くておとなしそうな女の子のレジで購入するのが一番だ。
変にオヤジのいるレジなどで購入しようとするとそれこそ年齢を聞かれたりする。
その点、若くておとなしそうな女の子は本を見ただけで動揺しだして早くレジを終わらせようとする。
年齢など聞くはずもない。正に俺が希望するような行動をとってくれる。
今日もいつものあの店員にレジを頼もう…
大人の本コーナーにそそくさと立ち寄り、ささっと目的の本を掴んで立ち去る… この間5秒。
目的の雑誌がどこに置かれているのかは完璧に把握している。
しかも俺は現在制服を着たままの完璧な高校生ルック…
普通ならヤバい… だが俺はこの店の要領を得ている。
俺は何食わぬ顔をしてそのままいつもの女の子がレジをしている所に行きお金を払う。
相変らず女の子は恥かしそうにしながら急いで袋に本を入れてくれる。
俺が立ち去ると「ありがとうございました」と小さな声で見送ってくれるが、お礼を言いたいのはこちらの方だ。
あの子のおかげで俺のエロ本購入のハードルは一気に下がった。
いつも本屋を出るとあの子に向かって手を合わせる。
「ナマステ~」
家に帰った俺は開封の議を執り行う。
ひれ伏すようにエロ本様を大切に鞄から取り出して封を開ける。
最初にめくるこの1ページ… その先にはどんなおっぱいが待ち受けているのか…
俺の興奮は最高潮に達する。
ガチャ… その時、急に扉が開く音が聞こえた。
「兄ちゃん、またエロ本買って来たの?」
「何か用か、弟よ…」
今俺の部屋に入ってきたのは弟の佑助、俺と3歳違いの中学2年生。
「そんなんばっか見てないで3次元の彼女を作れば?」
「3次元の女は簡単に見せてくれねーんだよ。まだお前には分からんと思うが…」
「兄ちゃん、おっぱいって言うのを我慢したら?」
「そんなん我慢するぐらいなら死んだほうがましだ」
「どんだけ好きなんだよ…」
「とにかく、早くどっかへ行け。シッシッ…」
弟は呆れかえった様子でため息をつきながら俺の部屋から出ていった。
弟の佑助… 俺の弟であるから当然のイケメンだ。
尚且つ明るくて人懐っこいのでやたら女にモテる。
ただ、あいつは俺と違いエロ本にそこまで興味を示さない。
あいつが本当に興味を示すもの… それはただ一つ。
菫の妹である椿だけだ。
俺の家である柳瀬家は俺と弟の2人兄弟で3歳違い
菫の家である烏丸家は菫と椿の2人姉妹で3歳違い
すなわち俺の弟の佑助と菫の妹の椿は幼馴染で同級生となる。つまり俺と菫の関係と同じ。
違いは… 弟の佑助は椿にベタ惚れしている所だ。
菫の妹の椿も菫同様に凄く美しい。
それに菫よりも明るく行動的で俺に対しても優しい。
俺も椿だったら考えてもいいかも…
それに椿は菫の妹… もしかしたら椿のおっぱいも菫同様…
いや、いかんいかん。そこまで行ったら犯罪だ。
それに俺が椿にちょっかいだしたら佑助は本気で切れること間違いなしだ。
俺と菫とは違い、佑助と椿は互いに好き合ってるみたいだし…
しかし佑助もよく分からん。あれだけモテるんだから色々な子と付き合ってみればいいものを。
あれじゃ間違いなく椿の下僕に成り下がるだろうな…
ま、そんなことはどうでもいい。
佑助のせいで盛り上がっていた気分が消え失せた。
もう一度気分を高揚させて… エロ本に集中するぞ。
……そう言えば佑助は何しに俺の部屋に来た?
そう思って俺は佑助の部屋を訪ねた。
取り敢えずノックをして返事を確かめる… さすが大人な俺。
佑助もいい加減、いきなり俺の部屋を開けるのをやめさせないと…
「どうしたの? 兄ちゃん」
「おまえさー、俺になんか用事があったんじゃねーの?」
「……そうだった、忘れてた」
「して、なに用よ?」
「……あ、あのさ~ 恋愛のHow to本とか持ってなぁ~い?」
佑助は急に羞恥の様子を浮かべて言ってきた。
「なした?」
あまりにもキョドっている佑助を変に思ってさらに聞いてみると
「じ、じつはさぁ~ 俺もそろそろ椿とキス… まで行こうかなって…」
佑助ちゃん、ダメです。絶対にダメ。兄ちゃんが許しません。
『兄より進んだ弟なんていねーんだよ!』
そんな北斗〇拳のジャ〇のようなセリフが思い浮かんだ。
「兄ちゃんなら経験してるんでしょ? キスとか…」
「う…ぐぬぬ」
「照れなくても知ってるよ。だって兄ちゃん凄くモテるだろ? 中学にだって今でも兄ちゃんのファンの先輩女子がいるよ。 たまに兄ちゃんの事を聞かれる」
俺が中3の時の1年生の女子か… そんなんいたっけ?
「ま、ま~ あれだぞ、キスはいいもんだぞ…」
ごめんなさい、嘘つきました…
「やっぱ経験あるんだ。あのさ、あのさ、どんな雰囲気の時にやるの?」
そんなん知るわけねーだろ… 俺はキスを通り越しているおっぱい星人だぞ。
そもそもキスになんかあまり興味ねーし…
「そ、そんなもん誰も見ていないところで見つめ合ったらレッツゴーだぞ」
「やっぱり勢いなんだね」
佑助は目をキラキラさせながら俺の話を食い入るように聞いていた。
そんな純粋な目で俺を見るな… 心が痛む。
「でも… 相手の同意ってどうやって確認するの?」
「そんなもん… 雰囲気だよ、雰囲気。相手の目を見て顔を近づけて相手が目を瞑ればOKなんだよ」
佑助ちゃん、下に表示されている注意事項をよく読んで用量、用途を確かめ注意して使用して下さい。
(嘘です、信じないで下さい。嘘です、信じないで下さい。嘘です、信じないで下さい。)
「雰囲気で察するか… やっぱ兄ちゃんは大人だね」
いいえ滅相もない… 現役バリバリの子供でちゅ…
「ありがとう兄ちゃん、俺… やれそうな気がしてきたよ」
お~い… 佑助ちゃ~ん… あんまり人の言うこと信じちゃいけないぞ~
佑助は俄然やる気になり次のデートで勝負をかける気満々でいる。
どうしよう…
これでフラれたら1000%俺のせいだわな…
仕方ない、いつものやつだ…
神に祈ろう。