幼馴染 菫
そろそろ朝のHRも始まるころとなり、席に着こうとするときチラッと菫の顔が見えた。
菫は教室に入ってきてからの俺と秀雄の会話を聞いていたようだ。
俺と目が合うと口元をおさえ下を向いて肩を震わせて笑っていた。
何が面白いんや、ね~ちゃん!
何処となく馬鹿にされているような気がして腹が立つ。それとも俺の気のせいか?
あいつの笑いのツボは本当に分からない… さっきのやり取りがそんなに面白いか?
そう言えば菫との付き合いは本当に長い。物心ついた時からずっと一緒だ。もはや腐れ縁…
最初に言っておくが俺と菫の間に恋愛感情は1ミリもない。
ただの幼馴染って言ってたけどぉ~ じつは~ ずっと前から~ 本当は好きだったんだぁ~
そんな小説のようなことはあり得ない。
俺も菫も中学2年の時と高校1年の時にそれぞれ彼女、彼氏がいたときがあった。
何故かタイミングが同じなのだが二人とも付き合った経験は2回ある。
それが何よりの証拠だ。
ただ、付き合ったと言っても二人ともその期間は短い。
特に俺は人に言えない短さだ。
ちなみに菫も1ヶ月間以上続いたためしはない。
俺の幼馴染の菫の全容を言うと…
まず、容姿 → 完璧
うちの学校の「美少女ファイブ」に名を連ねていらっしゃる。
タイプは美人、 肩下まで伸びる艶やかに輝く美しい黒髪、切れ長の目、長い睫毛、細く形の良い眉、すっと通った鼻筋、薄くて綺麗に見える唇。
それに身長も高く体形はスラッとしている。そのくせ出るとこは出ている。
分かりやすく例えると銀〇鉄道に乗って一緒に旅をして惑星アンドロメダまで連れていってくれるお姉さんみたいなタイプだ。
俺はおっぱい評論家、だから真実を言わなければならない…
本当は言いたくないがこいつのおっぱいは…
Sランクに近い… こんな言葉を吐いている自分が悔しい。
次に性格
クラス内では落ち着いていていつもにこやかにしている。
男の顔にこだわらないのでイケメンからブサメンまで分け隔てなく喋る。しかも優しい(俺以外には)。
当然男子からは大人気… 特に女子と話すのが苦手なおとなしい男連中からは神のように崇められている。
成 績 → 優秀
スポーツ → 万能
ほぼパーフェクトウーマンだ。
すみれに欠点(汚点)があるとしたら俺と幼馴染だということだけだろう…
ただし… これはあくまでも外の世界でのはなし…
実際奴にはまだ隠れた能力がある。
俺に「菫をどう思う?」と尋ねたら俺はこの言葉だけをそいつに言うだろう…
『 恐怖の対象 』
実は菫の親戚の爺さんが近所で合気道を教えている。
菫は護身術ということで小さいころから爺さんに鍛えられていた。
運動神経の良い菫はあっという間に強くなっていった。
俺も小学生の時からたまに菫に付き添って稽古を受けていたが、小学校6年生の時にはもうお話にならないレベルまで差が開いていた。
中学2年の時に爺さんに呼ばれて菫の稽古を見に行ったときに、菫の相手をできる女子がもういないと言われたので仕方なく俺が相手をすることになった。
取り敢えず試合形式… 菫に技では到底かなわないが、俺も中学生の男子なので流石に力だけで言えば菫よりも強い。女の菫に全力を出すと悪いと思って最初は手加減してみたが、… まるで相手にならない。
その内腹が立ってきて全力を出して本気でやったがそれでも全く歯が立たない。
こうなれば最後の手段… 俺はもはや合気道の試合関係なく“肉を切らせて骨を断つ”を考えた。
すなわち、ぼろくそやられてもいいので最後に一矢報いるため、おっぱいをわし掴みにしてやろう… そこに集中した。
試合開始とともに俺の右手は菫のおっぱいめがけて一直線…
菫は俺から出ている黒いオーラに気付いたのかいつもと違う態勢で俺の右腕を受け止めると…
そのまま俺を倒して右手首を限界突破でひねり始めた。
余りの痛さに声も出せず、ひたすらもがいて技を抜こうとするがびくともしない。
俺の右手首からは聞いたことがないような関節のきしむ音が聞こえてくる……
もう少しで俺の右腕がオシャカになるところで爺さんが止めに入ってくれた。
俺は中学2年生にして人間の殺意を実感した。
爺さんに止められて技を解いた菫の表情はいたって冷静だった。俺はそれを見て戦慄した。
こいつは平気で人を殺せる奴だ…
こいつは鬼や...ほんまもんの鬼や
俺は菫によって体にトラウマを刻まれた…
あいつのおっぱいを揉みに行ったら腕をオシャカにされる…
それ以来菫のおっぱいを見ると俺の脳裏には戦慄が蘇るようになった。
学校の男子はみんな菫を羨望の眼差しで見る。もし菫の彼氏になれたら誰もが大喜びするだろう。
だがしかし… 恐怖はそこから始まる。
もし菫の逆鱗に触れようものなら… 想像しただけで吐き気がしてくる。
俺は菫の幼馴染で良かった。
そうじゃなかったら間違いなく俺は菫のおっぱいを狙いに行っていた。
そして… 菫のおっぱいを握った方の俺の腕は… 再起不能になっていたであろう。
恐怖以外にも俺が菫を苦手に思うところもある。
それは菫が俺の母ちゃんと親友のように仲が良く、もはや実の親子のような関係であることだ。
母ちゃんは俺のことを菫にぶん投げて任せている。そのせいで菫の口調はまるで母ちゃんそのもののようになってきた。俺には母ちゃんが2人いるような感じがする。
あんな口うるさいババアが2人もいるなんて… それだけで気分が萎える。
それに菫はもはや俺の家を自分の家と勘違いしている。
俺の家に菫は自由に出入りし、食器棚には菫専用の食器まで並んでいる始末。
あいつは俺の母ちゃんを本気で自分の母ちゃんと思い込んでいるかもしれない…
菫は俺の家に入り浸るが俺の方はというと、ここ数年は殆んど菫の家に行ったことは無い。
菫の父さんや母さんは良い人で俺も好きなのだが、唯一苦手なのが菫だからだ。
そんな菫も俺の家にはいつも来るが俺の部屋にはここ数年入ったことがない。
中学2年の時、俺の部屋に勝手に入り俺のお宝だったエロ本を菫は捨てやがった。
怒り狂った俺は菫とガチの大喧嘩となった。その日以降、俺は絶対に菫を部屋に入れない。
ちなみに喧嘩の結果、俺は半殺しにされ菫に命乞いをしてようやく許してもらった。
あのときは本気で死ぬかと思った…
小さいころは楽しかったが大きくなるにつれて菫はどんどん恐ろしくなってきた。
いくら顔が良くても(おっぱいが良くても)俺から見ればモンスター…
それに俺はそこまで顔にこだわるつもりもない。 おっぱいにはこだわるが…
だから菫の美貌などどうでもいい。
俺にとって菫は面倒を見てくれる便利な幼馴染なだけで、女性として見る気は一切ない。
一切ないが… それにしてもあのおっぱいだけは惜しい、惜しすぎる。
あれは紛れもなく究極の一品かもしれない。
でも触りに行くと腕をオシャカにされる…
→ オシャカになるとおっぱいを揉めない
→ おっぱいを揉めない人生なんて生きたくない。
→ やっぱり諦めよう。