遊園地へ行こう
夏休みもあと数日を残すばかりとなったある日の朝、泰助は早起きをして一生懸命服を選んでいた。今日は泰助にとって大事な約束をしている日である。
尾賀さんのお父さんに依頼された特別バイト…
尾賀さんを遊園地に誘って遊びに行く日である。
3日前に尾賀さんに電話を入れて今日の約束を取り付けた。
「一緒に遊園地に行こう」電話でそう誘うと尾賀さんはすごく喜んだように声を弾ませて、「凄く楽しみ、ありがとう柳瀬君」そう言って泰助にお礼を言った。
泰助は尾賀さんのお父さんに頼まれたから行くなんて気はさらさらない。そんなことを言われるまでも無く夏休み中に一度は尾賀さんを誘おうと考えていた。
泰助はジーンズにお気に入りのお洒落なTシャツ、それに薄手のシャツを羽織って鏡の前で恰好をチェックする。長身の泰助によく似合った格好となっており、泰助も満足といった感じで納得している。そして待ち合わせの時間に余裕をもって家を出発する。
前に一度尾賀さんと出かけたときと今日では、泰助の気持ちが大きく異なっている。
尾賀さんのSランクおっぱいに惹かれている事には変化はないが、以前はただ興味を持っていただけなのに対し、今では尾賀さんと一緒に過ごせること自体を楽しみに思うようになっている。
前回と同じように駅で待ち合わせ… 約束の時間よりも20分前に到着して、どこで待っていようかと適当な場所を探していると「おはよう、柳瀬君」… 後ろからいきなり尾賀さんに声をかけられた。
「おはよう、もう来てたんだね… びっくりした」
「フフフッ… 今日は遊園地に連れていって貰えるんで楽しみにしてたから…」
そう言って尾賀さんは満面の笑みで笑った。
今日も尾賀さんは可愛い格好をしている。それに薄っすら化粧もしていて誰の目にも凄く可愛い女の子として映っている。
こんなことをすると、また若い男達の注目を集めるのは必至だが、それを承知で尾賀さんはこのような格好で来たことを泰助は分かっていた。可愛い格好をしてわざと男性の注目を集めて、その環境で男性への恐怖心を無くしていく…
かなりの荒療治であるが、尾賀さんがそれを望んでやるんなら傍にいてそれを助けてやりたいと泰助は思っていた。
「今日もオシャレにしてるんだね、凄く可愛いよ」
泰助は明るい笑顔で尾賀さんにそう言うと、
「そ、そう? 柳瀬君にそう言ってもらえると嬉しいな…」
尾賀さんは頬を赤らめて恥かしそうに俯き加減でバッグのひもを手で弄りながらそう答えた。
尾賀さんの態度も以前とは明らかに変わってきている。今は明らかに泰助のことを一人の男の子として意識しているようになっている。
「それじゃ 遊園地に向かって出発しようか」
「うん」
泰助の明るい掛け声とともに二人は電車に乗り込み遊園地に向かう列車に乗り込んだ。
車内は結構空いていたので二人で長椅子の座席に座る。尾賀さんと泰助のいつもの距離、それは二人の間に手提げ鞄が丁度収まる距離… だが、今日はお互いの服が触れるぐらいまで尾賀さんは泰助に近付いて座る。
それを見た泰助は微動だにしない。すべて尾賀さんが思うようにさせてあげようと思っている。
菫だったら… 尾賀さんが緊張しながら近付いてくる様子を見て、泰助はいつもの菫と比べて可笑しくなってきた。
菫は泰助と外出した時でも平気でくっついてくる。電車に乗っても横でぴったりへばりつく…
それがたとえ座席がガラガラの時であっても… それも何食わぬ顔をしてさも当たり前のような感じで。
泰助の真横で緊張しながら座っている尾賀さんを見てると、なんだか泰助は心が和むような気がした。だがゆったりとした幸福を感じつつも泰助は忘れない… 真横に来た尾賀さんのおっぱいはしっかりチェックしている。
(この距離から見ると二つの山の美しい膨らみがよく見える… 幸せ…)
「あ、あの… 柳瀬君」
オッパイの膨らみを見て和んでいると尾賀さんから急に話しかけられる。ヤバい…見つかったか?
「な~に?」
泰助が軽い感じで返事をしたが、尾賀さんは何やら思いつめたような顔をしていた。
「あ、あのね… 今日は柳瀬君のこと名前で読んでいい?」
「別に全然… 好きなように呼んで」
泰助はケラケラと笑いながら尾賀さんに言う。
「それと… 出来たら私の事もこれからは名前で呼んで欲しいな…」
「いいの?」
「うん。柳瀬君とはもうだいぶ仲もいいしね…」
「そう?… だったら奈瑠美ちゃん… やっぱめんどいから奈瑠美って呼んでいい?」
「いいよ、そう呼んでくれた方がいい。私は泰助君って呼ぶね」
「別に呼び捨てでもいいよ… みんなそうだし…」
「いいの、私はそう呼びたいから…」
尾賀さんは微笑みながらそう泰助に行った。
泰助は顔には出さないがそんな尾賀さんの変化に喜んでいる。それが男性への恐怖心を治すためのものでも自分に好意を持っているからなのでもどちらでもいい。その両方が泰助の目的である。
「ええっと… 泰助君、あのね………」
少し恥かしそうに照れながら泰助の名前を呼んで話し始める尾賀さん… その表情は今までとは違い少し緊張しながらも何処かときめいているような少女の顔をしていた。
そうして楽しく喋っていると、あっという間に目的の駅へと到着する。
駅から歩いて10分程度、遊園地の入り口が見えてくると尾賀さんの表情は子供のようにあどけない明るい笑顔に変わっていった。
「ちょっと待っててね」
泰助は尾賀さんのお父さんからもらった招待券を窓口に持っていき手続きを行うと尾賀さんの所へ戻ってきて入園チケットとフリーパス券を尾賀さんに渡す。
「さあ、行こうか」泰助の明るい声に、「うん」尾賀さんは大きく頷き二人は意気揚々と入園ゲートに向かった。
さて、何処から回ろうか… 泰助が思案してると手にさわさわと何かが触れるような感触がする。
チラッっと見て見ると、尾賀さんが恐々といった感じで泰助の手に触れようと頑張っていた。
それを知った泰助は、何もせずそのまま手を暇そうにぶらぶらとさせて歩き続ける。
全ては尾賀さんが決めて尾賀さんのしたいようにさせる…
そう決めている泰助は、尾賀さんの行為に気付いても決して自ら尾賀さんの手を取ることはしなかった。そうして歩いていると泰助の手の指を何か柔らかいものが弱々しい力でつまむ。
「て、手を繋いでもいい?… 泰助君」
「いくらでもどうぞ… 奈瑠美ちゃん」
奈瑠美は泰助の手の指をちょんとつまんでいる状態だったが、泰助は手を大きく広げ奈瑠美の前に「どうぞ」といって差し出す。奈瑠美は恥かしさと怖さの両方を感じながらも自分の手をそっと泰助の手の上に置く。
すると泰助はその小さな手を包み込むように優しくそっと握った。
泰助に手を握られた時に一瞬ビクッとなったが、泰助の手にしっかりと握られると奈瑠美の手から力は抜けて二人の手はしっかりと繋がった。
「奈瑠美は何に乗りたい?」
手を繋いだ後、俯いて押し黙ってる奈瑠美に泰助は明るく尋ねる。
「…最初はあれがいいかな」
奈瑠美が指をさしたのは家族向け用の可愛いジェットコースター。
機関車がトロッコのような座席を引っ張るような可愛いデザインでゆったり楽しめそうなもの。
待っている人も殆んどいなかったので直ぐに乗ることができ、すぐに出発となる。
「奈瑠美って絶叫コースターとかってやっぱ無理な方なの?」
「ううん、むしろ好きな方だよ。でもこれはこれで好き」
そう言っていると出発。
カタカタと引っ張り上げられて行って頂上まで来るとそこからゆったりとした下り坂をゆっくりと降りていく。
スピードも遅く急なカーブもないので高い所から遊園地の様子がゆったりと見ることができる。
「ねえねえ、柳瀬君… 次はあれがいい… あとあれにも乗りたいな」
奈瑠美はコースターから見える他のアトラクションを観察して次々と乗りたいものを決めていった。
なるほど… こういう使い方もアリか…
奈瑠美は遊園地の展望を見るためにこのコースターに乗ったんだと思い泰助は感心した。
遊園地の展望を見てその賑やかな雰囲気を眺めていると気分は普通に高揚してくる。
奈瑠美も泰助も遊園地特有の雰囲気を感じて二人はそのテンションを高めていった。
ジェットコースターを乗り終えると奈瑠美は陽気な声で、
「泰助君、次はあっちだよ… あれを乗りに行こう…」
そう言って泰助の手を引っ張る。そんな奈瑠美を見て泰助も凄く楽しい気分になっていく。
「早くいかないと他の人がいっぱい並んじゃう…」
「はいはい…」
真剣な表情で少し焦った感じで泰助の手を引っ張って歩く奈瑠美。
「そんじゃ走って行こうか」
今度はそんな奈瑠美の手を引っ張って泰助が走り出す。
奈瑠美は泰助に手を引っ張られながら一生懸命に走るが、その表情は泰助も初めて見るぐらいに楽しそうだった。それからも人気アトラクションなどをいくつか回ったが、回って行くうちに奈瑠美はどんどん明るくなっていく。
待ち時間も自分から泰助にあれやこれやと話しかけて、楽しそうにしている。
そんな奈瑠美を見て泰助はふと気付いた。
人気アトラクションを待つ行列は人がいっぱいで密集している。当然周りには若い男も大勢いて、そのうちの何人かは奈瑠美のことをチラチラと見ている。それもかなり近い距離から…
それでも奈瑠美に変化は全くない。楽しそうにわくわくした顔で泰助を見つめて喋っている。
何か知らないけど、結構良くなってきたのかな…
今の状況で全く怯えない奈瑠美… 泰助はそれを見て嬉しさが込み上げてくる。
今日は本当に来てよかった…




