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泰助と佳蓮の因縁(前)



「うおっす、秀雄」

「ん、ああ オッス、泰助。 それに菫ちゃんもおはよう」


朝の通学途中、学校の正門あたりまで来た時に親友の『二条秀雄(にじょう ひでお)』を見かけたので声を掛けた。


「おはよう、秀雄君。 佳蓮ちゃんもおはよう」


今秀雄に挨拶したのは俺の幼馴染(といっても決して馴染んではいない…)の『烏丸菫(からすま すみれ)』。


俺と菫は幼馴染で家も近い。なので俺の母ちゃんが監視目的で俺の登校に菫を同伴させている。


「すみれ~ おはよう」


こいつは秀雄の彼女で『三角佳蓮(みすみ かれん)』… いたってくだらない女だ。

秀雄もさっさと別れりゃいいのに…


ついでに俺は『柳瀬泰助(やなせ たいすけ)』、かなりのイケメンで純情無垢な好青年。

俺達はみんな高校2年生で佳蓮以外は同じクラスだ。




「あれ、佳蓮いたの? 秀雄、まだ別れてなかったのか?」

「泰助… マジでウザいから早く死んで…」


俺のちょっとした可愛いジョークに青筋を立ててガチで怒っている佳蓮。今日も元気で何よりだ。

だが、ちょっとそれは言いすぎじゃないか?


朝から人に向かっていきなり死ねだと⁉ 相変らずへらず口叩きやがって…

でもな、今日の俺は一味違うぜ。いいネタを仕入れてきたんだよ。

逆に今からおまえの息の根を止めてやる…



「佳蓮、死んでやれねーかわりに面白い話を持ってきたんで聞かせてやるよ」

「あんたの話なんてどうせくっだらない下ネタでしょ! このド変態が‼」


「どうだろ~ね~、もしかすると秀雄と佳蓮が別れちゃったりするかも・・・」

「あははは~ 何で私と秀雄が別れるの? バカなの? 死ねばぁ~?」


 なに余裕ぶっこいてんの? お前ごときがなぜそんなに自信を持ってるの?

佳蓮ちゃん、甘いよ… 考えが甘々。 コーヒーに角砂糖20個入れるより甘いわ~


私たちの関係は盤石よ!… なんて訳わかんねー妄想でも抱いてるのか?

世の中一寸先は闇なんだよ… 

現代社会ではね、自分の身にいつ不幸が降りかかっても不思議じゃないんだよね~



「そう言えば秀雄、1年生の時に同級生だった星野さんって覚えてるか? 今は3組なんだけど…」


「覚えてるに決まってんだろ。物凄く可愛い子だったよな。確か…うちの学校の“美少女ファイブ”に選ばれたんだっけ… 」


「そうそう、その子。その星野さんに昨日相談されちゃってさ… 」


「相談? どんな内容なんだ?」


「秀雄のことが大好きでね、ず~っと悩んでたんだって… 彼女がいるし迷惑かな…って言ってたんで、俺がもうそろそろ別れそうだよって言ったらね、私のことをぜひ真剣に考えてほしいって伝えて、お願い… そう頼まれた」



 秀雄、今はまだギリ彼女の佳蓮、幼馴染の菫… 俺が話し終えても誰もなーんにも言わない…

何故なんだろう? 俺にはさっぱり理由がわからないなぁ~

それに… どうして喋んないのかな~ … か・れ・ん・ちゃん。



「た、泰助… いつ俺がもうすぐ別れそうだとお前に言ったよ?」


普段冷静な秀雄もかなり動揺している。


「あれ~?… 雰囲気見てたらそろそろかなぁ~って… 違ったか?」


 色々と佳蓮を煽ってみたのに反応がない。 おかしいと思い佳蓮を見てみると…

佳蓮は口をあんぐりと開けて茫然としている… 誰が何を言っても全く反応しない。


どうやら魂が旅立ったらしい… さらばだ、佳蓮。

佳蓮… 俺の親友に佳蓮という名の元カノがいたことぐらいは覚えておいてやるぜ…



 少しして魂がご帰還なさったのか佳蓮が意識を取り戻して急に喋りはじめた。


「な、、、あ、あんた… わ、私の目の前で よ、よくもそんなこと言え……」


 動揺しまくり… しかも泣きたいのか怒りたいのか自分でもよくわかってない様子…

佳蓮よ、さっきの威勢はどうした?


佳蓮は星野さんの事をよく知っている… なんせ元同級生… その美しさも嫌と言うほどわかっている。


佳蓮、貴様はすでに死んでいる!

秀雄の親友であるこの俺を大切にしなかったことをあの世で悔いるがよい。



佳蓮……、俺も本当はこんなこと伝えたくなかった。

お前が約束を守り俺の願いを聞き届けてくれていたら… 俺は今でも全力でお前の力になってやったものを…



言いたいことも言葉にできずひたすら狼狽える佳蓮…

今にも泣きだしそうな表情をしている。


「泰助… あんまり佳蓮をイジメるな。 それに佳蓮、俺はお前と別れたりしないから…」

「佳蓮とは別れないってことは… 秀雄、お前二股するのか?」


 秀雄が頑張って出したフォローを俺が即座に潰しに行く。

すがるような表情で秀雄を見ていた佳蓮は、秀雄の言葉で一瞬安堵の表情を浮かべたが…

すかさず俺が潰したことにより佳蓮は再び切ない顔を秀雄に向ける。


「だから二股しねーし、それに佳蓮とも別れないし…」

「ほ、ほんとう?…… 秀雄」


 佳蓮は目をうるうるさせながら今にも泣きだしそうな顔で秀雄を見つめる。

佳蓮のHPはもう残りわずかだ。

佳蓮待ってろ、俺が今死にかけのお前をしっかりと介錯してやるからな。



「泰助… マジでもうやめてくれ。それと悪いけど星野さんには断りを入れておいてくれ」

「え~~、本当に断っていいのか? あの星野さんなんだぞ? よく佳蓮と比べてみてから判断しろよ…」


俺が秀雄に食い下がり再考を促すと、佳蓮が怒髪天を衝く勢いで俺に怒鳴り散らしてきた。


「秀雄が断るっていってんだからそのまま伝えろ! このボケ・変態・クズ!」


お~お、何て口の悪い女の子だこと…

佳蓮は阿修羅のような表情で俺を睨み付けている。


 こんな気の強い女のどこがいいのか… 秀雄はやっぱりMだな。

俺もこんな話をしたところで秀雄が星野さんに乗り換えることなどあるわけないのは分かっていた。佳蓮をちょっと弄ってやろうと思いこの話をしてみた… のだが。



 殺意を凝集させた目で俺を見ている佳蓮を見てイラっときたのでもう少し弄ってやろうと思った。

次は何を言って佳蓮を追い詰めてやろうか…


そんなことを考えて意識を集中していると… 俺の右後ろからとてつもないドス黒いオーラを感じた。

恐る恐る首をギギギっと回してみると微笑を浮かべながら暗殺者のような冷たい目で俺を見ている少女を発見した。


「泰助、いい加減にしようね… でないと本気で怒るよ」


……いや、もうすでに本気で怒ってるだろ、菫? その微笑みは完全なフェイク、それにその冷たい目…


あれは… あれはあかんやつや...うち、殺されるかもしれへん。


 一応いっておくが俺が言っている“殺される”は比喩ではない。文字通り物理的に殺されるのだ。

殺されそうになった経験は過去に幾度もある。


俺のチキンなハートは一瞬で縮みあがった。


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