ダンジョン経営の知識を買われたおっさんは、転生せずに野望を果たす。
『そなたのような人材を待っておった』
閻魔大王は俺を見て満面の笑みを浮かべた。
『ダンジョン経営ゲームに寝食を忘れてのめり込み、ついには餓死だとな。ついては、ぜひアドバイザーになってくれ!』
「いきなりですね」
『実は最近、異世界転生する者が多くて地獄は不人気なのじゃ。必要なのは、改革じゃ!』
「なるほど」
『地獄に今流行のダンジョン要素を加味したい!どうすれば良い?』
「そうですね……まずは罪人といえども武器1つ選ばせ、鬼や妖怪などと死闘が経験できるようにしては?
もともとが地獄、それだけでかなりダンジョンぽくなると思いますが」
『な、なるほど……』
「火の山や針山の近くには、火鼠の衣や鉄下駄などのクリアアイテムを隠した宝箱を配置しましょう」
『うむうむ!』
「それから」俺はついに核心に触れる。
「セーブスポットを充実させましょう」
ゲームでは果たせなかった俺の夢。それは。
「地獄グルメや地獄スローライフが楽める村はいかがでしょう」
『ふむ……サービスしすぎでは?』
「いえ、健全な労働は贖罪を兼ねるでしょう?」
『むむ……確かに』
かくして、セーブスポットとして立派な共同調理場と広い畑や果樹園、牧場を備えた村が作られた。
「ふふふっ……」笑いが止まらない。
さらに提案する。
「やはり金を落とさせることも必要でしょう。やめたくてもやめられぬ苦しみを味わう罠を」
『そうじゃな』
かくして世界中のガチャが地獄に揃った。
「無間地獄の犬、狼、ジャッカル、野鳥などの世話を罪人にさせれば、人件費が浮きますよ」
『確かに』
動物の世話をしながらもふり放題になった(ただし噛みつき注意)。
『うむ、なかなか良くなってきたな!……しかし、重罪人はどうしよう?』
「やはり、喰われるほど分かりやすい恐怖はないかと……恐竜時代にタイムスリップさせる罠はどうでしょう」
『うむ、いい案じゃ!タイムマシーンで恐竜の口に飛び込ませてやれば、生前の罪を悔いようぞ!』
「はい。アオリは″ジュ○シクパークをリアル体験″でバッチリですよ」
地獄の改革が進んだある日。
閻魔が俺を呼んだ。
『今までよく働いてくれた!さあ、そなたを極楽へ送ってやろう!』
「いえ、せっかくですが……設備点検スタッフが要るでしょう?」
『なんと!そこまで協力してくれるというのか!』
「もちろんです」
かくして俺はついに叶えた。
生前の野望、すなわち。
″永久に出たくなくなるダンジョンに住むこと″を―――