坊っちゃん
幼心になんとなく自分が周りの子達とずれてる気がしていた。
選ばれたとか、住む世界が違うとか、そういうんじゃなくて。
他の子が立って歩き出す頃にも、僕はまだ四つん這いのままで。
皆が大きくなっていく中で、僕だけが皆よりもずっと小さいままで。
偶然聞いた言葉だけど、おそらく僕みたいのを「出来損ない」って呼ぶんだろう。
それでも皆は僕に親しげで、いつも可愛がってくれる。
そんな優しさが辛くて、僕は家を飛び出した。
外の世界は家の中よりもずっと広くて。
僕はビクビクしながら道路の隅っこを車や大人に怯えながら歩いていった。
数日が経ったくらいの時、皆に見つかった。
皆は泣きながら僕の名前を呼んでいて、泣いているのにくしゃくしゃなその顔は、多分笑顔なんだな、と思った。
それからは家出をすることなんかなく、僕をおいて成長する皆と一緒に暮らした。
皆が大人に近付いてきたな、なんて思っていたら、とても身体が重くなって、なんだかすぅっと意識が消えていくような感覚を覚えた。
それが僕の最後の記憶。
たま、と名付けられた僕の、僕だけの物語だ。