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傭兵の国盗り物語短編集  作者: ドラキュラ
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泣き虫な親友

 私はまた何処に行ったのか分からないほど走っていた。


 これで2回目だ。


 また同じ事を繰り返してしまった・・・・・・・・・


 そしてまた何処か判らない場所に居た。


 今度は1人。

 

 誰も居ない。


 テツヤが居ない・・・・・・・


 「テツヤ?テツヤ?テツヤ、何処だ?」

 

 テツヤが居ない。


 何で居ない?


 あいつは私を抱き締めてくれた。


 また私を抱き締めてくれ。


 私を抱いたのはお前だ。

 

 なら私を抱いて慰めてくれ!!


 「テツヤ・・・・テツヤ・・・・テツヤ・・・・何処だ?何処に居る?出て来てくれ」


 来てくれ・・・・・・


 私はもう駄目だ。


 それなのにテツヤは出て来てくれない。


 「テツヤ、テツヤ、テツヤ、テツヤ、テツヤ・・・・・・・・・・・!!」


 幾ら名を呼んでもテツヤは現れてくれない・・・・・・・


 そんな・・・・どうしてだ?


 何で来てくれない!!


 「フィーナ中尉・・・・・・」


 フィーナ中尉?


 誰だ・・・・テツヤではない。


 テツヤならフィンと愛称で呼んでくれる。


 誰だ・・・・誰だ貴様は!!


 振り向くと・・・・・・・・


 「・・・・リーシャ殿」


 何で、リーシャ殿が・・・・・?


 「ここに居ましたか。探すのに苦労しました」


 「テツヤは・・・・テツヤは?」


 「テツヤ様は、貴方の問題だから自分は関与しないと言っておりました」


 ・・・・そうだ。


 テツヤはそう言った。


 そして私がまたこんな風になっても助けないと言った。


 1度だけ・・・・ただの1度だけ慰めるが後はしないと言ったんだ・・・・・・・・・


 それなのに私は・・・・・・・・・・・・・


 「叔父と思っていた人物が実の父親と知ってショック・・・・ですよね」


 リーシャ殿の言葉に私は驚きながらも声は冷静だった。


 「・・・・知っていたんですか」


 「先ほどメジュリーヌ様が言いました」


 メジュリーヌなら私の問題も本人にはまったく関係ないし数千年もの時を生き続けたあいつならこんな問題は取るに足らない事だろう。


 「・・・・そう、ですか」


 「はい」


 「貴方は、私を軽蔑しませんか?」


 怖い・・・・尋くのも怖いし軽蔑しているという答えも怖かった。


 それなのに私は尋ねた。


 「いいえ。私は貴方を軽蔑しませんしヴィールング殿を軽蔑もしません」


 「どうして、ヴィールング殿を・・・・・・」


 私は更に尋ねるとリーシャ殿はこう答えた。


 「あの方は後悔しております。後悔しているからと言って罪が許される訳ではありませんが、あの方はその罪をもう償い切ったと私の中では思っております」


 テツヤもそう捉えているらしい。


 「私はテツヤ様の意見に賛成です。実の娘なのに人目を憚り抱き締める事も、まして自分が父と言えない・・・・これを貴女が大きくなる時まで言えなかった。この重さが・・・・苦しみが解かりますか?」


 想像、できない・・・・・・


 しかし、だからと言って・・・・・・・


 言う前にまた涙が頬を伝っていた。


 「私は貴女の母親でも姉でも妹でもありません。しかし、親友です。親友が泣いている時は黙って慰めるのも親友の務めです」


 そう言ってリーシャ殿は私を抱き締めてくれた。


 「貴女が何者であろうと私にとっては掛け替えのない親友ですよ」


 「ふっ・・・・くっ・・・・」


 また泣いてしまった。


 やはり私は泣き虫だ。

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 私は自分の胸で泣くフィン殿の髪を撫でながらテツヤ殿の言った言葉---先ほど言った言葉を思い出した。


 『フィンを慰めろ』


 私に慰めろ・・・・どういう意味ですか?


 理由を尋ねたが・・・・そのままの意味だと言われた。


 それはそうだろう。


 あの方なら仮にフィン殿の立場に立ったとしても鼻で笑いこう言う。


 『不倫の末に出来たから何だ?そんな事で俺自身が否定されて堪るか』


 あの方は何処までも現実主義者であり何処までも合理性だ。


 ご両親がどんな方かは知らないが、あの性格である以上はかなり苦労しただろうと思われる。


 それは両親だけでなくテツヤ様自身も・・・・・・・


 それでもあの方は生き方を変えないのも自分の人生は自分の物という強い思いがあるからだ。


 フィン殿はそうでないし私もまたそうでない。


 しかし、テツヤ様は違う。


 あの方は私達にもそれを求めるが、ちゃんとこうして私達に道を示してくれる。


 もし、あの方が現実主義者で合理的な思考を持つ方だったら私は好きになっていない。


 あの方はああ見えて優しい。


 だからこそこうして私に頼んだのだから・・・・・・・・・・・・・・


 それにしても、と思う。


 ここまで追い詰めた人物---ロックス・ツー・ド・マレルという人物が酷く憎い。


 何より腹違いの妹が敵である上に明らかな逆恨みを抱くのも許せない。


 自分の行いが返ってきた事をテツヤ様の国では「因果応報」と言うらしいが、あれはその通りだ。


 ロックス・ツー・ド・マレルが妻を蔑ろにした上に他の女と子を作る。


 貴族なら別に普通の事だが、遺言状には「ビタ一文やらずに国外追放」と書かれては怒りたくもなる。


 幾ら当主とはいえ・・・・権限はあっても許されない。


 仮にも夫婦だったのだから温情という物があるだろうし国外追放を出来るのは王だけ。


 それを行うのは越権行為の上に傲岸不遜も甚だしい。


 しかし死んだ者を罰する事は出来ない。


 問題は・・・・・・・・・・・・・・


 『1角のワイバーン乗りのマーズをどうするか、ね』


 敵だから殺すのが後腐れなくて良い。


 生かしておいてはまた色々と面倒事を巻き起こすだけなのだから。


 といってもどう倒す、かだ。


 1角のワイバーンもそうだが場数は向こうの方が上だ。


 フィン殿では荷が重いしかと言って私の天馬でも力不足だから・・・・メジュリーヌ殿の力を借りるのが良い。


 そう思うも今はこの泣き虫な親友を慰める事に全力を注ごうと思い直した。


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