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傭兵の国盗り物語短編集  作者: ドラキュラ
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軍曹の過去

 俺はイーグルと2人切りで話し合った。


 こいつがいきなり「話があります」と言ってきた時に気付いてはいた。


 「いやはや、酷いもんですよ。領民に薬を広め骨と皮になるまで酷使するんですから」


 「まだ民間に流通していないだけマシだろ?お前の国みたいに」


 「確かに・・・・自国民が自国民に麻薬を流したんですからね。”CIA”は」


 「事実だったか」


 「自国内に出回る麻薬を黙認したり武器の売買なんかもやって組織の資金運用をやっています。まぁ、それで色々と叩かれていますがね」


 「しかし、国内問題は“NSA”の管轄だろ?」


 「そこは旦那の国と同じです。互いに“モルヒネデブ”みたいに自身の管轄権を増大させたいんですよ」


 「何処の組織も同じか」


 「Yes」


 「だから・・・・CIAからスカウトされた時も断ったのか?」


 俺は女神の抱擁を銜えて訊ねるとイーグルは驚いた顔をする。


 「知っていたんですか?」


 「お前等の上官をしている訳じゃねぇ。ミーシャは“GRU”に、お前はCIAにスカウトされた過去くらいは調べてある」


 「これは参った・・・・信用してなかったんですか?」


 「部下にする奴の過去は徹底して洗うのが上官の務めだ。誰かしら1人のせいで大勢の部下が死なれるなんて割りに合わないだろ?」


 「ご尤もです。まぁ、そうですね。グリーン・ベレーに入って任務を遂行していた時にスカウトされました。場所は・・・・」


 「中東、中央アジア、アフリカの角---ソマリア周辺担当の“第5特殊部隊グループ”だろ?」


 これにイーグルは驚きもせず頷いた。


 俺が調べてあると言った時点で何もかも知られていると分かったんだよ。


 「その通りです。レンジャー連隊に居た時に体験したソマリアも管轄だから嫌になりましたよ。おまけに麻薬売買の黙認なんかも自分で調べて分かりましたから尚更です」


 「それでこっちに来た訳か」


 「はい。国家に仕えるのはもう御免です。もし、CIAに居たら・・・・きっと蛇みたいに民間に流通させていたでしょう。自分達の手は汚さずに・・・・・・・・」


 「・・・・・・・・」


 俺は吸っていた女神の抱擁をイーグルに渡した。


 「普通は新しい方を渡すもんですよ?」


 「知るか」


 「かー、酷いなー」


 笑いながらイーグルはそれを銜えた。


 「あー、やっぱり美味い。ところで旦那」


 「何だ?」


 「この世に・・・・“天国”なんてあると思いますか?」


 「・・・・行ける奴は行ける事だろう。俺たちは地獄行きだがな」


 行ける奴は極限られた者たち・・・・「彼女」は天国だろう。


 「ですよね?生きるも地獄、死ぬも地獄・・・・因果な商売です」


 「今さら気づいたのか?」


 「いいえ。もう気づいていました。ただ、改めて思い知らされた感じがしたんです」


 「それで・・・・何で急に俺と話をしたいと言ってきた?」


 「死体を捨てる場面がありまして・・・・そこがちょいと知り合いだった女の末路と似ていたんです」


 「特殊作戦で知り合った女か?」


 「えぇ。俺に味方したばっかりに男どもに散々弄ばれて死にました」


 「そうか」


 こいつがそれを誰かに聞いてもらいたいと思い俺にしたんだろうな。


 ミーシャに言おうものなら鉄拳を喰らう事を見越して。


 「旦那は経験ありですか?」


 「あるさ。俺だって似たような仕事を1人で時にはやらされたんだ」


 「やっぱり・・・・・・・・」


 「しかし・・・・女にとっては幸せだったのかもしれねぇ」


 「どうしてですか?」


 「言ったんだよ。もし、死ぬなら・・・・・・・・」


 『貴方の手で殺されて貴方の胸の中で息絶えたい』


 「相変わらず女殺しですね」


 皮肉を交えて言うが俺は怒りもしなかった。


 「ふん。まぁ、それで願いは叶った」


 「そうですか・・・・・・・・」


 イーグルは相槌を打つが本当は悩んでいる事だろう。


 自分の女がそんな事を言って、そんな状況に陥ったら自分は果たして出来るのか?


 そう思うのは男として当然の事。


 「先輩から言わせてもらうと・・・・好きな女の望みを叶えるのは男の役目だぜ」


 例え自分を殺してという願いでも、だ。


 「・・・・そうですね」


 「だが、そうならないようにするのが男の役目でもあるという事を忘れるな。これも人生の先輩からアドバイスだ」


 「はいはい。旦那も俺と同じく恋は多いようですね」


 「俺の場合は違う。恋というのは本当に好きになった奴の事を言う。それ以外はただの遊びと認識している」


 「じゃあ中東の王族も?」


 「あれは恋だ。ただ・・・・怖くなった」


 「・・・・意外と旦那って“弱い男”なんですね」


 「気付く奴が少なくてな。今の所気付いてくれたのは男で言うなら2人だ。お前も混ぜれば3人になるが」


 「その少人数に入れて幸いです。とはいえ・・・・それが男ってものですよ。だからこそ女と言う生き物に癒しを求めてしまう。何とも言えない性ですね」


 「仕方ないさ。それが男ってもんだ」


 「そうですね。で、話は変わりますけどその仕事は俺に任せてもらえるんですか?」


 「そうだと言ったら?」


 「別に何も。ただ、蛇のような真似をする輩を知っているんです。実はその女・・・・もう死んでいるんです」


 東南アジアで麻薬を現地人に栽培させて民間に流通させようとしたらしいが失敗し殺されたと言う。


 「・・・・俺らみたいに送り込まれた可能性がある、か?」


 「はい。これまでの事を考えるに・・・・この世界に来たのは全員があちらの世界で死んだ。となれば何人か来ていてもおかしくないと思います」


 「確かにな。向こうは会社と言っているが・・・・どう思う?」


 「現実的に考えても非論理的ですね。神さまと言われた方がまだ信じられる」


 「その神が会社経営していた何て言われたらどうする?」


 「笑いますよ。まぁ当面の事は保留ですね」


 今は何も分からないがそれで良い。


 先ずは今目の前にある問題を解決する。


 「それでその女とはどういう関係だ?」


 煙を吐きながら尋ねるとイーグルも吸いながら答え始めた。


 「俺をスカウトした女で金髪にナイス・バディな女ですけど顔と性格はキツイの一言でしたね。ベッドの中でもそうでした」


 「寝たのかよ」


 「良い女でしたから」


 「それでお前はどうせ寝たら良いとか言って断ったんだろ?」


 「あ、分かりました?」


 「分かる。で、その女は何て言った?」


 「寝ている間に出たので何とも。ただ言いそうな事は解ります」


 「俺もだ」


 『私に従わない男は死ねば良いのよ!!』


 「と言うだろうな?プライドが高い女は」


 「ですよね?という事は旦那も言われた経験が?」


 「そんな言葉ではないがこう言われた」


 『私が飼って上げるんだから大人しく飼い犬になりなさい!!』


 「ははははははっ。旦那を飼うですか?これは・・・・お笑い草だ。誰にも俺たちを飼うなんて事は出来ないのに」


 「まったくだ。飼われない。犬にならない。それが俺たちだ」


 「ですね。とはいえ確証はありません。まぁ、蛇に訊けば分かるでしょう」


 「その通りだ。義勇軍は戦わずに降伏した。その上自分の手札を自ら1枚捨てた。後の手札はもう判っている」


 「こちらの手札はまだありますからね。それに向こうは些か勝負運に恵まれていないと来たら・・・・勝ちですね」


 「現金と女はこの手に掴むまで信用するなとカジノで教えたろ?」


 「そうでしたね。旦那の言う通り・・・・カジノで痛い眼に遭いましたよ」


 「だろうな。という訳だ・・・・頼むぞ。1等軍曹」


 「お任せを。少佐」


 イーグルは敬礼をした。


 普段からこう真面目なら良いと思うがそれもこいつの良い所だと思う。


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