雪上の迎撃
俺は何処からともなく射られる矢を振り払いながら子分達に四方へ散らばり攻撃しろと命じた。
『馬鹿の一つ覚えか知らないが生意気な・・・・・・・・』
ここの奴等は今まで戦とは縁が無かった奴等で戦うなんて有り得ない。
何故なら・・・・この領土は葡萄を栽培してワインを作る。
だから人手が少ないと駄目だ。
それをガルバーは考えてここの領民は徴兵しないようにしたし税金も軽くした。
それのお陰でこいつ等は戦いをした事が無い。
それは俺等---ガラハ様にとって大助かりだ。
それなのにあんな馬用の柵を作った・・・・誰かがあいつ等に入れ知恵をしたに違いねぇ。
余計な事をしやがって。
とはいえ・・・・そんな入れ知恵なんて高が知れている。
どうせ、あれ位だろう。
それで俺たちが諦めて帰ると?
馬鹿がっ!!
俺は諦めない。
奴等を皆殺しにするんだ。
男は奴隷にして女は俺の奴隷だ。
特にエスペランザーとティナは俺が頂く。
エスペランザー・・・・俺が惚れた女で美しくて気立てが良い上に身体付きも最高だ。
そしてティナ・・・・元師匠の娘にして俺の妹弟子だ。
エスペランザー比べると性格に難ありなんだよな。
餓鬼の頃から何かと俺に付き纏って勝負を挑んで来たりしたが、成長すると段々と女らしい身体付きになった。
エスペランザーに比べれば劣るが・・・・悪くない。
しかし、ティナの場合は手足を切り落として犬みたいに這い蹲らせるのが良いな。
師匠を殺した俺を「仇!!」と喚きカタナを向けて来たんだ。
当然の報いだ・・・・俺は悪くない。
師匠が俺のカタナを馬鹿にして愛娘のティナが打ったカタナばかり褒めるからいけないんだ。
「ぎゃあ!!」
背後から悲鳴が聞こえると同時に爆発音がする。
振り返ると子分が馬と一緒に蜂の巣みたいな状態で死んでいる。
何だよ・・・・あれは・・・・
あんな死体は見た事が無い。
どうやったらあんな死に方をするんだよ。
俺は唖然とするが子分達の尻を叩いて走らせた。
ちっ・・・・嫌な予感がする。
しかし、この双剣で全てブチ壊してやる。
そう思うが・・・・・・・・
「うわっ、お、落とし穴だと?!」
子分の1人が馬ごと落とし穴に落ちる。
落とし穴まであるのかよ・・・・・・・・
「ぐげっ!?」
またやられる。
今度は木に縛られた縄に首が当たり落馬している。
何だよ・・・・まるでここを通ると予想していたみたいな配置じゃねぇか。
これじゃ狩猟だ。
俺たちが狩人で向こうが獲物だ。
それがどうだ?
逆じゃねぇか・・・・・・・・!!
この俺様が獲物だと?!
ふざけんじゃねぇ!!
俺は双剣のガラハだ。
歴史に名を残す剣豪となる男がこんな所で死んで堪るか。
馬の腹を蹴り速度を上げようとしたが・・・・・・・・
爆発音より小さいが大きな音がした。
俺の隣を走っていた子分の頭がザクロみたいに割れる。
吹き飛んだ血が俺の顔に付着し後ろにも飛び散った。
な、何だよ・・・・何なんだよ!?
こんな攻撃みた事ないぞ!!
一瞬だが恐怖を覚える。
だが、直ぐに恐怖を打ち消して逃げ出そうとする子分の1人を斬った。
スパッ・・・・・・・・
まるでチーズみたいに首が空を切り地面にボトリと落ちる。
首なしの身体が馬に乗っていたが少し経つと地面に落ちた。
鮮血が雪の道を赤く染める。
「てめぇら逃げると・・・・こうなるぞ」
ドスを利かせた声で子分達に言う。
「だ、だけど、兄貴・・・・」
また小うるさい事を言う子分を斬り落とした。
「もう一度だけ言う。ここを落とせば俺たちは領主になるんだ。それなのに逃げる気か?」
「だ、だけど・・・・・・・・」
「まだ言うか?その口を永遠に閉じさせられたいのか」
俺はカタナを子分の首筋に当てた。
「・・・・・・・・」
子分は冷や汗を掻きながら俺を見る。
その顔には恐怖が宿っているが俺の行動を見て決意したのか頷いた。
「そうだ。それで良い。それじゃ各自迂回しろ。どうせ奴等は戦の字さえ知らないただの馬鹿共だ」
そう言って俺は子分たちを迂回させた。
とは言っても・・・・さっきの攻撃があるから油断しないで用心しないといけないな。
ちっ・・・・何なんだよ。
あいつ等は・・・・・・・・
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「あの小僧、よく味方を2人も斬れたわね」
私ことグロリアはAKS74-Uで敵兵を撃ちながら独白した。
味方を殺す・・・・これは精神的にキツイわ。
でも、そうしなければいけない時もある。
私の場合は・・・・戦友を殺す事で敵兵に渡さずに楽に出来るという状況だった。
天馬から落馬し足を折り内臓も破裂して長くない。
敵に捕まれば何をされるか分からない。
戦場では勝者が敗者を如何様にも出来るから占領された村などの末路は凄惨の一言よ。
そんな戦場に私たちが行けば・・・・どんな末路を歩むか解る筈よ。
それを承知で私は軍に入ったから自己責任だけど・・・・戦友にはそんな思いをさせたくない。
その一心で私は戦友を殺した。
未だにあの時の光景は眼から離れないし嫌な思い出の一つだわ。
だけど・・・・あの餓鬼は違う。
味方が逃げるのを阻止する為に殺した。
それは別に問題とは言えない。
何処の国でもそうだけどああいう風に逃げる味方を阻止するには見せしめの為に殺す。
でも、あの餓鬼の眼は・・・・イカレテいる。
怒りに満ち溢れている上に人を殺す時に快感を覚えている節がある。
あれで二つ名を貰えるとは大したものだわ。
殺されたティナとかいう娘の父親もあの性格を見抜いたんでしょうね。
それでも何とか出来ると思い鍛えたが・・・・出来ずに破門した。
というのが答えかもしれないわね。
・・・・私も昔は荒れていた。
親が早死にして親戚中をたらい回しにされた挙句の家出だった。
そこからは苦労尽くしの毎日で男にも逃げられたりもしたから荒れ放題。
誰も自分を助けてくれない。
それが更に拍車を掛けて坊や頃の歳にはもう手の付けられない暴れ娘だった。
そんな私を変えてくれたのが・・・・天馬騎士団だったのよ。
私が荒れていた時に天馬騎士団に所属していた女性騎士が現れて栄養失調で弱った私を助けてくれた。
助けてくれた私に色々と教えてくれて天馬騎士団という職場を与えてくれたのも・・・・その女性騎士。
その女性騎士はもう引退して結婚し子供も居ると聞いているけど・・・・私のような娘を見たらきっと今も助けているでしょうね。
きっとティナの父親も私がされたようにあの餓鬼にもしようとしたんでしょうね。
変われる者も居るが変われない者も居る。
私の場合は変わる事が出来た。
でも・・・・・・・・
「あの餓鬼は駄目ね」
あれではもう変わる事なんて出来ない。
本人が変わろうと言う気持ちが感じられない以上は無理だ。
こういう場合は手っ取り早く殺すのが一番。
子分達も同罪。
皆殺す。
それが一番ね。
腐った木を処理するには根から全てやらないと駄目。
「・・・・・・・・」
また1人落とし穴に引っ掛かった。
馬は前足から落ちる形で前のめりとなり乗り手は無様にも地面とキスをした。
それを逃さず私はクレイモアの信管を起爆させて追って来た仲間諸とも始末する。
まだまだあるわよ。
落とし穴、クレイモア、そして私たち。
私たちが奴等を駆除する。
そして餓鬼はティナがやる。
それで終わり。
さぁ、来なさい。
私たちが1人残らず・・・・殺して上げるから。