GWのひとコマ
二週間以上過ぎてるけどなんとか書き終えて投稿です。
そういえば参考書を買わないとなあとふと思いました。
授業を聞いてもわからず先生の言っていることも全くわからないので一から書いてある本を購入しようとしていたのを思い出したのです。
いつかいつかと延ばしていたけど試験も必ずくるのでもうやらないといけません。
今はちょうどGWの真っただ中。
時間はたくさんあるので多少疲れることをしても問題ありません。
ですから少し離れたショッピングモールへ自転車で行くことにしました。
電車で行けばいいと家族には言われますけどなんというか意味不明な無駄なこだわり? があって自転車を使って自分の足でたどり着いたときの達成感が好きなのです。
だからこれはなんといわれても譲れません。
「そうだ、せっかくだしキミも誘おうかな」
キミとは長谷部君江でキミと呼んでいる私の親友です。
彼女も私のように突発的に行動するのでよく私に連絡をしてきてよく遊んでいます。
しかし今回は私からの誘いです。
普段キミが誘う分私から言い出してもいいですよね。
もちろんキミと一緒にいることは嫌いではありません。
むしろ楽しくて面白いのでどんどん来てもかまいません。
「あ、キミ?」
『あれ、ヨミから電話なんて珍しいね。どうしたの?』
「今日自転車で本を買いに少し遠いところに行くんだけ一緒に行かない?」
『おおいいね。わかったそれじゃあヨミの家に行くから待っててね』
二つ返事で了承されました。
彼女ならこうなるとわかっていましたけど。
ちなみに私の名前は吉名美江でヨミと呼ばれています。
さてキミのことだからすぐに家の前に飛んでくるでしょう。
もう行かないと。
今日は特に日差しが強くて、気温も高めです。
絶好のサイクリング日和……とは思えません。
ただの女子高生には厳しい紫外線が飛びかかってくるのであまりいい日では無いでしょう。
それでも私は行きます。
キミと共に。
風もそこそこあるので何とかなるでしょう。
涼しい恰好と帽子、日焼け止めはしっかり塗って。
飲み物は鞄の中に。
準備完了です。
「ヨミ、お待たせ」
「大丈夫。それよりもキミ、日焼け止め塗った?」
「え? そんなのいらなくないかい。私はまだ若いのだよ」
「そんなことだろうと思ったよ。行く前に塗ろう。部屋に来ていいから」
「そんなに引っ張らなくてもいいってば」
キミは紫外線を侮っているのでお説教と日焼け防止と熱中症対策に帽子を貸しました。
お風呂の時ヒリヒリしたくないよねの言葉でキミは日焼け止めを手に取りました。
「いやあ、かなり暑いね」
「どうして私が行こうと思う日に限ってこんなに日差しが強くて暑いのかなあ」
「きっといつもより光を浴びたいんじゃない?」
「なにそれ」
「私もわかんない」
こんな他愛のない会話をしながら私たちは自転車を漕ぎます。
速度はそこそこ速めです。
ただ単に全力じゃないけど普通にとばしてどれくらいで目的地にたどり着けるかを試しているだけなのです。
そこまで焦っているわけではないので
「よみぃ、水飲みたいんだけどちょっと止まってくれない」
「うん、私ものど渇いてきたかも、そこの木陰で飲もうか」
無理なんてするわけもなく、休むところはしっかり休みます。
「流石に遠いね」
「うん。携帯の地図だと短く見えるけど実際移動すると長いよね」
「でも、こうして自分の足で行ってみるのも楽しいからいいけどね」
「そうだね」
電車で行くと絶対に知らないお店もあってそれを知れるのだけでも楽しいものです。
ただ、いくら好きとはいってもこうやって時間のあるときや色々余裕のあるときくらいしかできないのが少し残念ですけどこういうものはたまにやるのがいいのです。
食べ物だって食べる感覚が短ければ飽きますし、たまに食べるとおいしいと思うのと一緒です……と私は勝手に思ってます。
こうして移動して一時間しないくらいでようやく着きました。
「着いたね」
「着いたね」
「たまには自転車でこうやって行くのもいいね」
「そういってくれると私も誘ったかいがあるよ」
「でもたまにだけど」
「そんなものよ」
「そうだね」
やっぱりこの達成感はいいですね。
電車で行けばすぐ着くのにわざわざ時間をかけていくというなんとも言えない感覚がありますがそれも含めていいのです。
帰り道もあるからもっと時間がかかりますけどね。
ショッピングモールの中は涼しく、熱くなった体を冷やしてくれます。
いくら休みながら来たとはいえ疲れました。
強い日差しを浴び続けるのも体力を消費するような気がします。
ただの運動不足かもしれませんが。
このショッピングモールはかなり大きくて、ゆっくり中にある店を歩きながら端から端に移動するだけでも一時間くらいはかかりそうなくらいです。
ですから座ることのできる椅子が所々設置されています。
けれど今はGWです。
ここは大きいだけあって休日には人もたくさんいます。
どうしてそんなときにわざわざ疲れる移動方法できたかなんて聞かれてもただ行きたかっただけ、としか答えられません。
キミもそうですけど、私もなにかをするときはあまりその後のことを考えずに行動します。
あまりよくはないと思いますけど、それで想像できないことがあると面白いではないですか。
それにまだ若いのだからこういう無駄なことも楽しむべきじゃないかなとまた勝手に思ってます。
話が逸れましたが、今は人がたくさんいます。
ですから座るスペースはあってもそれも埋め尽くされているのです。
「流石ゴールデンウィーク。私たちが座る場所もあまりないか」
「ごめんね、私が考えなしで呼んだから」
「ヨミが気にすることじゃないよ。私が行きたいと思ったから来た。だからそんなに気にしなくていいんだよ」
「うん。ありがとう」
「お礼を言われるようなことを言ったつもりはないんだけどね。あ、あそこ空いてるよ」
しばらく歩いていたのでようやく座れてほっとしました。
「そういえばヨミは何を買いにここにきたんだっけ」
「本だよ。ほらこの前授業わけわからなくて自分で一から書いてあるやつ買おうかなっていったことあるじゃない」
「ああ、それのねえ」
「あとついでに読みたい本があったら買おうかなって」
「いいね」
「キミはなにかある?」
「そういえばここのことネットで見てたらちょうどゴールデンウィークにアイスのイベントがやってるみたいで食べに行きたいなあって」
「アイスね。こんなに暑いしちょうどいいね。先にそこに行ってみますか」
この近辺のお店が作るアイスを集めるイベントらしく、見たことのあるお店の名前や逆に知らないお店の名前もありました。
「この辺でアイス売っている店ってこんなにあったんだ」
「そうなんだよね、それに今限定で一割引きで買えるから来たかったんだよ」
「へえ、でも大丈夫なの」
「お店の宣伝になるし、これくらいで人が来てくれるならいいんじゃない」
「でも今日このイベントは厳しいよね」
「ああ、たしかにね」
どうして厳しいかというとイベントをやっている場所が屋根のない屋外だからです。
まだ夕方ではないので日差しがガンガン降っています。
たぶん店の数が多いので外で屋台として出しているのだと思います。
屋台とはいってもアイスなので車の中に機械を入れて売っている形です。
アイスが食べたくなる気温なのでたくさんの人が屋台に寄っています。
場所によってはなかなかの行列を作っている屋台もありました。
並んでまでも食べたくなるおいしいアイスなのでしょうか。
目的があくまで本なのでそこまでして食べようとは思いません。
けれどキミが来たかったイベントみたいなのでキミの意思を尊重します。
「キミはなにを食べたいの」
「行きたいとは思っていてイベントの存在は知っていたんだけどここまで並ぶものとは思ってなかったんだよね」
「つまり決まってないってことね」
「現地で決めようとしてました」
「あまり並びたくはないよね」
「でも人がいないってところがなさそうだけど。……ここまでだったとは、甘く見過ぎてたようだな」
「アイスだけに?」
こんなくだらない冗談を言いながら屋台を歩いて見ています。
「どこも人がすごいね」
「なにかしら食べたいんだけどなあ。こうもすごいと撤退しかないか」
「そうだね。今度はアイスメインでイベント開始前位に並ばないと食べられなさそうだもんね」
「じゃあ次の為に何行くか決めとかないと」
きょろきょろと周りを見ながら歩くキミがぶつからないように見守りながら私もちらちら屋台を見ます。
どこも非常に混んでいて次来るときはもっと早くこないとすぐに食べられなさそうです。
ついに会場の端まできてしまいました。
「よし、決まったからヨミの本を探しに行こうか」
「そうだね……あれ、あそこってやっているのかな」
見逃していたのでしょう、人がいない屋台がありました。
「おお奏、やっと誰か来たよ」
「香奈、はしゃいでいないで準備をして。いらっしゃいませ」
そこには私たちと同じくらいの女の子二人がいました。
二人ともすごい綺麗で、一人は無表情、もう一人は気が強そうな印象があります。
「アイス二つください」
「香奈、二つだって」
「あいよ」
「二つで四百円になります」
私が財布を出そうとしていると、キミがそれを遮って四百円出してしまいました。
「わざわざイベントに付き合ってくれたお礼だよ」
「それなら今日わざわざ自転車で移動なんてものに付き合わせた私が払うべきなのに」
「それを言ったら私のほうが色々付き合わせてるから。もうこの話はこれでおしまいだよ。アイスもきたしね」
「はいどうぞ。ありがとうございました」
気の強そうな女の子からアイスを受け取り、私たちはショッピングモールの中へと戻りました。
再び椅子をなんとか見つけて座れました。
「アイスおいしかったね」
「うん。キミはまたあのイベントに行くの?」
「うーん。食べて気づいたけどあんまり量食べられないってわかったし、あのアイスがおいしかったらもういいかなって」
「そうだね。冷たいから一つで満足なのはわかるよ」
「それで、どうする? ヨミの一番の目的果たしに行こうか」
「そうだった。本買いにきてたの忘れてたよ」
キミの言葉で私は目的を思い出しました。
二人でショッピングモールの本屋を見ることにしましたが
「こんだけ広いのに二つしかお店無いんだ」
「それに端っこだから歩くね」
「でもたくさん歩けていいじゃん」
「前向きに考えればそうだね」
帰りのことも考えて自転車が置いてある出口から遠いほうから行くことにしました。
しかしこのショッピングモールは市内最大級の大きさなので端と端を移動するのはなかなか骨が折れそうです。
それでもキミと途中にあるお店の話などをしながら歩いているのでそこまで苦ではありません。
ようやく一つ目にたどり着けました。
「長かったね。まだこれで半分なんだよね」
「うん。でも私がここで目当ての本を買えれば自転車のところに行けるから帰れるよ」
「それじゃあ私は適当に見てるからヨミは探してていいよ」
キミと別れて私は参考書の棚を見てみました。
しかしたくさんあるのはあるのですが私が欲しいなと思う参考書はありませんでした。
「どうだった?」
「ごめんね、なかった」
また端までキミを連れまわすのかと思うと少し落ち込みます。
「気にしないでいいって。もう一つのほう見に行こう」
キミも少なからず疲れているはずなのに、笑顔で私に言ってくれました。
再び端っこまで歩いて見てみたのですが、残念ながらもう一つのお店にもありませんでした。
「なかったみたいだね」
「うん。なんかごめんね」
「謝らなくったっていいって。私はキミが誘ってくれたおかげであのイベントに行けたわけだし」
「そうだね。本がなくたってキミとイベントでアイスを食べられた。それでいいよね」
「そうそうそれでいいんだよ。かえろっ」
帰りは行きと同様に自転車です。
さすがに歩き回ったのとあまり長距離は漕ぎなれていないのもあってくたくたなので行きとは違いゆっくり帰ります。
「ヨミ」
自転車を止めてキミは私を呼びました。
「どうしたの」
「やっぱり私だけ目的達成したみたいで嫌だから帰り道にあった本屋さんに行かない? ヨミが時間あればだけど。私のわがままになっちゃうね」
キミこそ気にしているじゃない。そういうところも私は好きです。
「時間はいっぱいあるよ、GWだしね、行く途中で見た本屋に寄ろう」
「うん」
ショッピングモールから近くもなければ遠くもない場所に本屋さんはありました。
そこで私たちは自転車を止めて中へ入ります。
規模はショッピングモールの中よりは小さいですがそこにはない本もたくさんありました。
あ、これここにあるんだ。
これも読みたいな。
……どうしよう。
「ヨミ、目当ての本はあったの?」
「あ、ごめんごめん。えっと、あったよ」
つい色々な本を探すのに夢中になってしまってキミに気が付きませんでした。
大きくて人がたくさんいるショッピングモールの本屋さんとは違い、ここは小さくても人がほとんどいないので集中してみることができるのです。
「そっちがおまけなんだ」
そんなことはないとは言い切れませんがしっかり探してました。
参考書のついでにほかの本を見ていただけです。
参考書は買うのは確定ですが、欲しい本があと三冊もありました。
その三冊も頑張って絞った結果ですが。
けれど
「お金がないなあ」
「本を買うお金、足りないの」
「うん。だから二冊しか買えないみたい。それでも十分なんだけどね」
「私まだ余裕あるから出そうか?」
「いやいいよ。これは取捨選択しなくてはいけないものなの」
「ヨミなら貸しても返してくれるからいいんだけど、そういうならいいか」
「ここでキミに甘えちゃうとどんどん欲しいもの買おうってなっちゃうからその辺の線引きはしないとね」
なんとか参考書含む三冊買うことができました。
これで当初の目標は完遂です。
「ヨミ、隣にある文具屋見てもいいかな。必要なものあったの忘れててさ」
「大丈夫だよ。行こう」
お店を見たら買うべきものを思い出すことってありますよね。
キミはそれが起きたようで、隣の文具屋へ入りました。
「あまりこういうとここないから新鮮かも」
「たしかにヨミとは文具屋へ来たことなかったかもね」
「基本的にお店に行くとしたら百均とか本屋だからね」
「私はあまり本読まないからなあ。うん、これだ」
「ルーズリーフが足りなくなってたんだ」
「もう何枚かしかなかったからね。ヨミは外で待ってていいよ」
キミの買い物を自転車の前で待っています。
空を見上げるとオレンジ色に輝く夕焼けになっていました。
また今日は楽しい一日でした。
一人ではなかなか味気ないものになりそうでしたが親友のキミと一緒ならとても面白いものになる気がします。
「おまたせ」
これでもう今日は帰ることにしましょう。
「今日はもう終わるけどさ、まだGWはあるよね」
「うん。明日もまたどこかへ行くの?」
「ヨミは空いてるよね」
「もちろん」
「それじゃあ今度は電車で少し遠いところに行こうよ」
まだ明日があるのですから。
ここまで読んでくださりありがとうございました。