魔法少女☆料理
「ふんふ~ん♪」
思わず零れる鼻歌。
咄嗟の言い訳とはいえ、会社を早退した以上戻れない為帰宅した俺。
まだ夕食には早い時間だが、残り物の肉野菜を炒め御飯の準備をし始める。
今の俺は上機嫌だった。
つい先程現れた魔法少女。
待ちに待った次の生贄……もとい後継者の事を考えると、普段舞香ちゃんに任せきりで億劫な料理も振るおうってなもんだ。
ちなみに妻と別れたものの、二人は近くに住んでおり、舞香ちゃんは朝御飯と夕御飯を毎日作りに来てくれる。
通い妻みたいだね! と声を掛けたら、死ぬ程冷たい目線で俺を見ながら「大事な資金源なので」と仰られた。メッチャ凹んだ。
(まぁこんな生活もあと少しで終了だ)
そうしたら何しよっかな~時間的余裕があれば新作に手を出すのもいいし、舞香ちゃんの買い物に付き合うのもいいかも♪
想像するだけで楽しくなる妄想を繰り広げていた時、
「ただいま帰りました」
という声が玄関から聞こえた。
(お! 舞香ちゃんだ♪)
エプロンを手早くたたみ、迎えに行く。
「おかえり、舞香。
今日は少し早かったんじゃないか?」
ローファーを脱いでいる舞香ちゃんに声を掛ける。
「今日は……少し色々ありましたから。
そういう恭介さんこそ、お仕事はどうされたんですか?」
「ああ、今日は溜まってる有休を消化するため半ドン」
「そうですか……ならば夕食は御一緒できそうですね。
もしかして御馳走して頂けるのですか?」
「ああ、時間もあるし。今日は俺が腕を振るうよ」
「楽しみです。
……少し、考えたい事があるので書斎を借りてもいいですか?」
「ん? 舞香の部屋はそのまま残してあるだろ?」
「いえ、恭介さんの書斎の方が落ち着いて考え事ができるので」
「ん。別に構わないぞ。じゃあ御飯が出来たら呼ぶから」
「ええ、ありがとうございます」
一礼し、制服を棚引かせ書斎に籠る舞香。
「……年頃の娘は、よく分からん」
俺は同年代の子を持つ親がよく抱くであろう思いを呟くと、冷めない内に料理を再開することにした。
「魔法少女が出てないよ!」
「黙れ愛玩生物(げっし!)」