魔法少女※連想
焦る。
もうどうしようもないくらいの焦燥感がわたしを支配する。
恭介さんと約束した買い物の日。
朝から念入りにメイクし、着ていく服を選び、準備万端だった筈なのに。
予定してたバスが欠便になってしまい、全てが狂ってしまった。
何でも海の方で騒ぎがあったらしい。
そのとばっちりを喰うなんて……
ホント、ツイてない。
急いで家まで引き返し、ママに頭を下げた。
苦笑しながらもママは車で送ってくれた。
ママは……わたしのことをどう思ってるのだろう?
事情があり別れたとはいえ、好きだった人の事。
会いたいに違いない。
わたしが恭介さんに会うのを快く思ってないのかもしれない。
(でも……ごめんなさい。
この気持ちは抑えられません。絶対に)
心の中でママに謝りながら、待ち合わせ場所で手を振る恭介さん目指しわたしは駆け出した。
言葉が出ない。
隣で所在無げにしている恭介さんを横目で見やりながら、わたしは赤面する。
逸れない様、手を差し伸べてくれた恭介さん。
その気遣いは凄く嬉しかったし、素直に甘えたいと思った。
だけどわたしの奥底にあるもっと激しい衝動は、勝手にわたしを突き動かしてしまった。
ふと気付いたら、わたしは恭介さんの腕を抱きかかえていた。
(わ! わわわ!
ど、どうしよ~)
全力で頭を回転させ、驚いている恭介さんにどうにか言い訳をした。
……耳が赤かったのはバレてないよね?
水着を選ぶ振りをしながら、時折恭介さんの事を確認し、その事を思い出す。
その駄目循環のエンドレス。
見兼ねたのか、恭介さんは助け舟を出してくれた。
一緒に選んでくれないのは残念だけど、楽しみって言ってくれた。
そんな言葉で嬉しくなる自分はホント単純。
好きな人が喜んでくれるとわたしも嬉しい。
夕日に照らされながら彼を待つ。
恭介さんは疲れてるだろうに、笑顔で駆けつけてくれた。
その笑顔に何も言えなくなる。
つい先程の出来事、あやうく命を落としかけた恭介さん。
他人の為、命を懸けるその姿は勇敢で……とてもカッコ良かった。
皆に大声で自慢したくなる。
わたしの好きな人は、こんなに凄いんだよ! って。
でも、そんな反面怖かった。
先程は助けが間に合ったからいいものの、いつか彼が消えてしまいそうで。
だからわたしは彼を引き留める儀式をする。
他の誰にも渡さない。
わたしだけの彼にする、大切な儀式を。
(恭介さん……大好きです……)
恥ずかしくて絶対口に出せない想いを籠め、そっと乗せる。
だから少しだけでいい。
今だけはわたしの恋人でいてください。
わたしの大切な……恭介さん。