魔法少女☆買物
「お待たせしましたか?」
「いや、俺も今来たところ」
待ち合わせ場所に息を切って駆けて来た舞香ちゃんに優しく応じる。
些細なそのやり取りに、何だか妻(もう妻じゃないのか……はぁ)との逢瀬を思い出す。
年々妻に似て美人さんになる舞香だから余計にそう思う。
「恭介さん?」
小首を傾げ、下から覗き込む舞香。
さらりとショートボブの髪が春物ニットへ滑り落ちる。
「ああ、今日も可愛いね。
妖精さんみたいだ」
別れた妻(舞香にとってはママか)のことを思い出していた事を誤魔化す為だけでなく、実感を込めて褒める。
今日の舞香のファッションはデニムのワンピにショーパン、青のレギンスに白いブーツと活動的な服装である。
反面俺は着古したブランドものジャケットとパンツ。
くたびれたおっさんとモデル級美少女。
傍から見ればおかしな二人。
……援助交際にだけは見えない事を祈ろう。
全然似てないし(当然か)。
「……褒めても何も出ませんよ?
それより今日は一緒に水着選びに付き合ってもらいますからね」
そうなのである。
CMで流れてたハ○イアンズを見た舞香が「行きたいですね」と言い、なら一緒に行くかとなったものの、肝心の水着がない(スクール水着はあるが絶対嫌、とのこと)。
じゃあ買ってあげるよ。
いつもの御飯のお礼に。
となったのが今日の買い物の流れである。
俺の言葉に何やら煩悶していた舞香だったが、何やら自分を説得し納得してた。
(年頃の娘はホントよく分からん)
「ああ、お手柔らかに頼むよ」
苦笑し、混み始めたジャ○コで逸れない様、手を繋ごうと差し伸べる。
その手を驚いたように見やり固まる舞香。
(やっべー最近仲良くなってきたからって、少し調子に乗りすぎたか……)
軽く反省し、手を引っ込めようとした時、
「……」
無言で腕ごと抱きかかえられた。
「ま、舞香?」
「……今日だけは特別です。
逸れない様……今だけですからね!」
下を向きながら歩き始める。
耳が真っ赤なのは照明のせいなのだろう、きっと。
「ギャルゲーかよ!」
「黙れ幼女に劣情する唾棄生物」
俺はツッコミを入れるコメットを無言で踏み潰し舞香と歩き始めた。