魔法少女☆憤怒
「いや~やっぱ休日の朝はこれに限る!」
俺は缶コーヒーを飲みながら疑似餌に糸を通す。
釣りは数多い俺の趣味の中でも、優先度が高いものの一つである。
解放感に浸りたい時は、こうして早朝に沖合までドライブして釣り糸を垂れる。
釣果は別に気にしない。
自然を相手にマイペースな、この雰囲気が好きなのだ。
「ふ~んふん♪
午後からは舞香ちゃんとジャ○コで買い物だし、
最近の俺は結構ツキがきてるな~」
上機嫌で釣竿を振るう俺。
が、次の瞬間、
「ふはははははははははははははははははははは!
愚かなる人間どもよ~母なる海の怒りを知れ!」
「きゃあああああああ!」
「うああああああああ!」
遠く離れた後方の岸壁。
聞きたくもない得意絶頂な声と悲鳴が上がる。
「大変だよ、スター!
また敵があぶるぺっぽ!!」
俺は隣りに転移してきたナマモノを怒りを込めて無言で握り締めながら、黙々と釣り道具を片付け始めた。
「人の存在は海を汚す!
重力に惹かれた者はその痛みを」
「いきなりスターライト★じょえのさいど~♪」
あたしは渾身の力を籠めて最終虐殺浄化魔法をぶっ放した。
それは若干タコみたいな敵さんのカラダを焦がすも、倒すまでには至らない。
「ふははははっはははっはっは!
効かぬ、効かぬぞ!」
うん、お約束が通じないのは知ってる。
いつもならこの後、愛の鉄拳制裁だけどタコさんには効かなそう。
それに……あたしはすこ~~~~~~~~し、怒っていた。
よって2クールのラスボスに使用した奥の手を出す。
「愛よ!
希望よ!
星々のキラメキと化しあたしに力を!『聖・剣・召喚』」
天空高く伸ばされたあたしの手が七色の閃光を上げる。
そしてあたしの意志に応えるようにそれはカタチを為す。
それは!
……トゲトゲのスパイクがついた、どう見ても釘バットだった。
「またこんなデザイン?」
前回はバールのようなモノだった。
どうも術者のメンタルがデザインに左右されるらしいけど……
よく分からない★
「ふはははははははははははは!
そんなもので我が触手が防げるか!」
相も変わらずお約束を無視し、召喚シーンが終了してないのに(これから決めポーズが残ってる)攻撃してくる敵さん。
だがあたしはその鋭い触手攻撃を、
「無駄ぁ!」
と弾き飛ばした。
「な、なんだと!?
ならばこれならどうだ!!」
動揺しつつも更なる無数の触手を飛ばしてくる。
負けないもん!
「無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄駄無無無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁぁ!!」
「ば、馬鹿な……」
全ての触手を叩き潰し、丸裸になった敵。
あたしはすかさず手元の聖剣を巨大化させ、大ジャンプしつつ3カメさんに向けウインク。
しつこい5カメさんのパンチラ狙いを巧みに回避しつつ、敵さんの頭上から叩きつける。
「ロードローラーだ!」
「ぷぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!」
ぺしゃんこに潰れ断末魔を上げる敵をバックに勝利のポーズ。
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
あ、台詞間違っちゃた。
あたしってばお茶目さん(てへペロ★)。
「駄目だ…マジ駄目だ。
このままじゃ3期で打ち切りだ……どうすんだよ、コレ」
頭を抱えるコメットを無視して、
あたしは朝日を眺めながら清々しい気分を満喫するのだった。