魔法少女☆推参
「スターライト★じょえのさいど~」
「うぎゃああああああああ!!!」
あたしの放った最終虐殺浄化魔法により、魔物にされていた人々は無事元の姿へと戻った。
「皆の心に愛のキラメキを♪
スターとの約束だよ☆」
感謝の声をあげる人々へ、勝利のポーズを決めるあたし。
トドメとばかりに片目を瞑り、舌を出してはにかむ。
キラリン☆
無駄に輝くエフェクトがあたしの目元から飛び出していく。
「流石は、プリティ☆スター!」
「今日も助けてくれてありがとう!」
「スターたん萌え~魔法少女ばんざ~い!」
街に響く歓声を後に、あたしは夜空に浮かぶ満月へと飛翔する。
そして、とあるビル陰に潜むやこそこそ周囲を窺う。
神経を総動員して、辺りに人の気配がない事を徹底的に確かめる。
身の破滅が掛かっているのだ。慎重にならざるを得ない。
やがて……猫一匹の気配がない事を確認し『俺』は変身を解いた。
「はぁ……
マジでいつまでこんな事をやらなきゃいけないんだ?」
先程まで愛と勇気と希望をダダ漏れしていた姿を思い出し、何だか心底死にたくなってくる。
軽く自己紹介しよう。
俺の名は武藤恭介。
35歳、バツ1、子持ち。
窓際万年課長。
部下からは冷たくあしらわれ、
年頃の娘からは冷たい眼差しを受ける……
典型的な冴えない中年である。
そんな俺がしている秘密のアルバイト。
それは何と愛と希望の「魔法少女」なのである!
……いかん、自分で言ってて頭痛くなってきたわ。ホント。