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こんな夢を観た

こんな夢を観た「1冊分の隙間」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/08/10

 ゴロンと寝そべった時、それに気がついた。

 上から2段目、ミステリー文庫ばかり、作者もシリーズもバラバラで詰め込まれている棚に、ちょうど1冊分の隙間が空いているのだ。

「なんで、あそこだけ……」わたしは首を傾げる。

 考えもなしに本を買ってしまうものだから、本棚はとっくにいっぱいだ。置けない分は押し入れに積み上げあるほどなのだ。本1冊分のスペースなど、残しておくはずがなかった。


 第一、昨日見た時は、確かにぎっちりと並べられていた。ということは、その後、自分で本を取り出し、どこかに置き忘れてしまったということになる。

 ただ、その本がなんだったのか、どうしても思い出せない。

「何だったかなぁ。あそこにあったのなら、ミステリー小説なんだけど」

 テーブルやベッドの上も探してみたが、どこにも本は見当たらなかった。今日はまだ外出していないから、喫茶店に忘れてきた、などという理由も浮かばない。

 自分で自分の頭をコツン、コツンと小突きながら、もやもやと気持ちで隙間をじぃっと見つめる。


 一瞬、隙間で何かが動くのが見えた。

「気のせい……だよね?」立ち上がって、隙間を覗き込んでみる。

 文庫本の幅だけ暗がりができ、奥へ行くほど闇は濃くなっていた。

 それはまるで、ビルとビルとの間にできた狭いスペースのようだった。ネコがやっと通り抜けられるような場所で、誰ものぞき込もうとはしない陰った世界。

 

 気味が悪くなって、両隣の本を数冊引き抜いてみる。窓からの光は、何の変哲もない化粧合板を照らすだけだった。

「ほらね、やっぱり何でもなかった」わたしは安堵し、手に持っていた本を戻す。

 再び、例の隙間がそこに生ずる。隙間の向こうから、漆黒が物質となって溢れてくるような気がした。


 少し遅い朝食を摂ろうと、キッチンの戸からシリアル・フードを取りに行く。

「あれ?」戸が少し開いていて、シリアルの箱が隙間からのぞいていた。奥に何かがあって、閉まりきらないようだ。

 中を確かめてみると、本が1冊出てきた。アガサ・クリスティの「カーテン」だった。

「こんなところに――。そうだ、本棚のあの場所にあったのは、確かにこれだっけ。今、やっと思い出した」

 わたしは「カーテン」を手に、部屋へ向かう。


 本棚を見たとたん、わたしはギョッとして立ちすくんだ。

 赤い三角帽子をかぶった小人が、隙間から顔をのぞかせていたのである。

 どす黒くてコブだらけの、ひどく醜い奴だった。わたしに気がつくと、ニヤッと感じの悪い笑みを浮かべ、暗がりの中へ走り去った。

 わたしはガクガクと膝を震わせ、ゴクンと生唾を飲み込んだ。とても恐ろしかったけれど、すべきことは1つと覚悟を決め、「カーテン」をその隙間に押し込む。


 どこか別の棚で、カタカタと音が聞こえた気がした。何かが、反対側から本を押し出そうとする、そんな音が。

 ああ、どうか気のせいでありますように。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何でもない所に怪異は隠れているんですね。 とても素晴らしい。私もネタとしてぱくってしまいたくなる話です。 小人「もどき」なんていい響きなんだろう、うっとりとしてしまいますね。
2014/11/20 06:53 退会済み
管理
[良い点] こ……怖い。((((;゜Д゜))) 怖いけど、かなり迷惑な小人ですね。 本棚から出てくるのは良いけど、落とした本は元に戻せって話です。(着眼が違うだろ(笑)) 今回は怖い夢でした。 そ…
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