第ニ章:再会
総合病院の内科のロビーは早朝からかなりの患者が来院していて忙しい。
中堅所に位置して働いている私は上からの指示に従い、下の者には指示をしてかなり忙しく動き回っていた。その時、背後から肩を軽く叩かれ
「綾瀬さんだよね?綾瀬千絵里さんじゃないですか?」
チャコールグレーのスーツに、薄いほとんど白に近い水色のカッターを着た、いかにも清潔感漂う私の苦手なタイプの男性に声を掛けられた。
「はい。そうですが。何か?」
忙しかった為、少しきつい言い方になってしまったことを軽く後悔していると
「僕だよ!田中拓海!高校の時同じ放送委員だった!!あっ僕の方が一つ上の学年だったし覚えてないかな?」
男は少しはにかんだ笑顔を浮かべながら、右手の綺麗な指先で頭を軽く掻いた。
「あっ・・・田中先輩。」
私はその仕草を見て、あの放送室の埃臭さと一緒に黒ぶち眼鏡を掛けた田中拓海を思い出した。
「思い出してくれたんだね。良かった。ごめんね、忙しい時に呼び止めて。」
拓海はさわやかな笑顔を浮かべると待合室の椅子の方に向かおうとした。
「田中先輩!コンタクトになっていたので、なかなか気が付きませんでした。ごめんなさい。」
私は冷たい態度をとったのが、気に掛かり謝った。
「いいんだよ。僕はすぐに分かったよ。綾瀬さんは昔と変わらず綺麗だったから。
気が向いたらで良いから連絡してくれると嬉しいよ。色々話とかもしたいし。」
拓海は恥ずかしげも無くそう言うと、連絡先の書いた紙を手渡した。
「ありがとうございます。」
私はそう言うとその紙を受け取りポケットにしまった。
結構スマートにこういう事出来る人だったんだ。大人になってそういう風になったのかな?
私はあのタイプはやっぱり苦手だなと思いながらも、一応連絡はしようと思った。