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01:キスまでだってばっ

 マジで恋する5秒前シリーズ、続編的短期連載です^^

 今回かなり(いや最初からそうでしたけども)王道いきます。苦手な方は回れ右! 

 漫画とか小説とかかなり読む方は冒頭でその後の展開がピンとくるくらいの王道です(笑)

 えぇ、この展開大好物ですがなにか(←)

 独立しても読めますが、できれば1作目から読むことをオススメ致します★

 ―――付き合って7ヶ月目の月の、冬休みのある日。あたしは中学校時代の友達―――今も交流はがっつり続いている―――由香と、昼間から遊んでいた。

「ちょっと待って琉依、もう一回、もう一回」

「いや、だぁーかぁーらぁー」

 さっきの言葉をもう一回繰り返せとせがむ由香に、頭を低くしてこっそり喋る。今あたしたちは某ファミレスでドリンクバーをしてるわけだけど―――他の客も皆自分達の話に夢中だな、よしっ。

「…キスまでだってばっ」 精一杯恥ずかしさを隠して言った。言ってやった。由香が目をまんまるくする。…何よその反応。

「うわー聞き間違いじゃなかったんだ…」

「そーよ。悪い?すみませんねご期待に添えなくてっ」

 ぶぅっと頬を膨らます。

 何の話かというと言わずもがな―――あいつ、飛鳥とのことだ。

 飛鳥、とはあたしの彼氏で、記憶がないレベルで小さい頃からの幼なじみだ。今現在ここにはいない奴のことを思い浮かべると、ついでに今朝の会話と自分がしでかしたことまで再生されて思わずあたしは下を向いた。…一体どうすればいいんだろう。

「ちょっと、いきなり下向いてどした。なに、なんかしたの?」

「いや…うーん、なんかっていうか…まぁなんかあったんだけど!」

「…琉依、相変わらず日本語ヘン」

「にっ、日本語おかしくてしかも古いのも分かってるからいちいち突っ込まないでよっ」

 ただでさえ普段から飛鳥に色々言われてるのにここでも言われたらたまったもんじゃないと、あたしは右手を前に出して由香の言葉を止めた。あんた動作まで昭和っぽいわよね、という由香の言葉は聞かなかったことにする。

 ―――まぁ話は戻ってあたしが今朝なにをしたかってゆーと。

 ぶん殴ってきたのだ、飛鳥を。

 これは『しでかした』方で、そのことを由香に告げると奴は天井を仰いで笑いやがった。

「ちょ、殴ったって…あははは、なんでっ?」

「わ、笑うなぁ!殴ったって言ってもね!こう…そんな強くはやってないよ!?」

「逆に全力だったらびっくりだわよ、そんなの。で、なんで殴るなんて事態になったのさ?」

 うぅぅうぅ由香め……やっぱりそこ聞くか〜!

 あたしが飛鳥を殴った理由は殴る直前までの飛鳥とのやりとりにあり―――それをさらっと言えないのには、さらにワケがあるのだ。

「あ、あのさぁ…さっき、キスまでだって言ったじゃん」

「あぁうん、7ヶ月も付き合っててキスまでな可哀相な飛鳥くんの話だったよね」

 うぐっ!と言葉に詰まった。

 …そう、原因はこれに直結している。

「やっ…ぱり、それって飛鳥に悪いことなのかな。キス以上のこともしなきゃいけない?」 おずおずと由香を窺うと、由香はきょとんとして聞いた。

「べつに『しなきゃいけない』ってことでもないけど…、なに?そっち関係なの」

 由香の言葉にまた目を伏せる。そしてから、あたしは今朝あったことを話始めた。










 昨日の夜、あたしは飛鳥の部屋に遊びに行っていた。最初はゲームをしてたんだけど、そのうち眠くなっていつの間にか寝ていたらしい。目が覚めると朝になっていて、飛鳥のベッドの中だった。

「ん〜…朝?あたしコレ寝ちゃったか……。飛鳥ぁ〜?」

 起き上がって姿が見えない飛鳥の名前を呼ぶと、それに反応したようにそう間を空けずに部屋の扉が開いた。

 頭ボサボサでいかにも今起きましたというあたしに対して、現れた飛鳥は部屋着ではあるものの身なりはきちんとしていた。

 知ってはいたけれど我が恋人ながら美しい。無意識に見惚れているといきなりため息をつかれて、しかも後頭部をぐわしと掴まれて引き寄せられた。

「!?」

 ベッドサイドに立ったままの飛鳥はそのまま何も言わずに体を折り曲げる。近づく綺麗な顔に心拍数は上がり続け―――あ、焦点越えたと思ったら荒々しく口づけられていた。

「んん!?……んう〜っ!」

 いきなりなんなんだー!!嫌じゃないけどむしろ飛鳥とするキスは好きだけど苦しい〜ッ!!

 そんなことも途中からは考えられなくなった。角度を変えて、深さを変えて終わらないキスに、唇も、頭も、全身さえもが痺れる。

 飛鳥が一瞬唇を離した。その瞬間自分のものとは思えない声が漏れる。だけど、自分のこの声に慣らされるくらいにはもうキスは重ねている。

 いつの間にか同じ様にベッドに上がって座っていた飛鳥の首に腕を回してしがみつく。そうでもしないと自分の姿勢を支えていられない。はぁ、と飛鳥の首筋でため息をつくと、

「ぅ、あっ!?」

 認知できないほどの速さでベッドに転がされていた。

「あ、飛鳥っ?」

「…何」

 やっと聞けた大好きな声。だけど―――

「なに、なんか怒ってるっ!?」

 真上にいる飛鳥に問いかける。なんか声が怖いよーぅ!

「…べつに」

「嘘だ嘘だ!アンタ、なんかある時に限ってべつにって言うじゃん!分かってんだからねっ」

「…………琉依」

「なによっ」

「限界」

 唐突な飛鳥の言葉に一瞬呆然とした。…限界?何が?そんなこと聞き返すほどあたしは無知なわけじゃない―――勉強に使える頭はないけど。今この状況でそんなこと言われたら当てはまることなんて一つしか…。

「えーとそれは…恋人同士がベッドで行うあれですか」

 飛鳥を窺うと何当たり前なことほざいてんだと目で言われた(気がした)。ちょっと待って。べつに嫌なわけじゃない。嫌なわけじゃないけれど―――。

「えと…飛鳥サン、いま朝デスよ」

「だから」

「そーいうことって普通朝はしないもんなんじゃ…」

「決まってるわけじゃない」

 えぇまぁ、そりゃそうでしょうとも!だけどあたしは気持ちの準備が!

 あわあわしてると上にいるままの飛鳥の右手が、あたしの頬を優しく撫でた。普段のぶっきらぼうな飛鳥からは想像もつかないような壊れ物を扱うような触れ方で、思わずぴくっと体が反応を示す。


「…琉依」

 あたしを呼ぶ声が甘くて。頬に添えられた飛鳥の手を自分の左手で包み込むように被せた。その行動が飛鳥のスイッチを入れることになるなんて微塵も思わずに。

「………、」

 飛鳥の動きが一瞬止まったかと思うと、次の瞬間には噛み付くような―――いや、なんだこれもう食べられてるって言ったほうが近いんじゃ、というキスをされた。

「ぅ………、あっ…す、」

 名前。呼びたいのに呼べない。飛鳥本人の舌があたしの舌の動きを邪魔する。そうしながら服の中に手が入ってきたのが分かった。その手があまりにも自然に下着のホックを外す。でも抵抗できない。だってそもそもあたしは飛鳥とこーゆうことするのが嫌なわけじゃない。

 じゃあ何って―――あぁそう、ただあたしは未知のモノが怖いんだ。

「やだっ……!」

 それが分かった瞬間あたしは飛鳥を思い切り殴り飛ばしていた。

 といっても溶かされた思考とまともに力が出ない腕では飛鳥があたしから離れたくらいで終わる威力だったんだけど。

 いきなり殴られて横を向いた無表情な飛鳥の横顔が、傷ついたように一瞬歪んだ気がして。

 …嘘、そんな―――あたしは飛鳥を傷つけたかったわけじゃないのに。

 それでもこっちからは何も言えなくて、着ている服の裾をぎゅっと握り締めて唇を噛んだ。

 ………目の前の飛鳥が、目を固く閉じてゆっくり息を吐く。

 そうしてそのあと目を開けると、あたしに手を伸ばしてきた。

 触れられたことを記憶している体が意志に反してビクッと揺れる。あぁバカあたしこれじゃまた、

 …案の定飛鳥の瞳が一瞬揺れた。

 だけど手は止まらず、その指はあたしの目尻を優しく拭った。

「………ぇ、」

 予想外の行動に素の呟きが漏れる。

「泣かしてゴメン」

 飛鳥はそれだけ言うとベッドから降りて、部屋を出ていった。

 泣かして…?

 その背を何も言えずに見送って、何秒かの間止まっていたあたしは我に返って自分の目尻に触れてみた。

 …ほんとだ、泣いてる。いつのまに?全然気が付かなかった。

 でも、自分のことだからわかる。これは泣くほど嫌だったとか、飛鳥に怯えてとかじゃない。……たぶんもうキスの段階で出てた生理的涙だ。だけど飛鳥は自分のせいだと思ったんだ。あたしがそれくらいのことを彼にした。

「飛鳥のこと、傷つけた―――」

 そのことで今度こそ涙が流れた。

 傷ついたような飛鳥の横顔が忘れられない。あたしはこれからどうすればいいんだろう―――。




「ってなことがあったんだけど…」

 ―――阿呆かアンタはその純情どっかに捨ててこいっ!―――とかそういうことを間髪入れずに切り返されると思っていたあたしは身構えて向かいに座る由香に目をやった。

 だけどいくら待ってもそんな口撃は襲ってこず。

「……ゆーか?」

「………………」

「ぅおーい、ゆ・う・か・さーん」

「うるさい聞こえてるからちょっと黙れ」

 ………ひどい。反応ないから心配したのに。

「…あのさ琉依、ちょっと一つ確認したいんだけど」

 しかもあたしがシュンとしたのなんて関係なしに質問?まぁ、答えるけど。

「あのさぁ…アンタ」

 由香が言いにくそうに上目遣いになる。

「うん?」

「いや、うん確実にそうだとは思うんだけどね…?」

 だってそんなん飛鳥君が許すわけないし、いやいやありえないとか1人でぶつぶつ呟く由香。

 なに、なんなのさ。

「アンタ…」

「うん、だから何」

「―――飛鳥君が初めての相手ってことでいいんだよね?」

 飲みかけていたコーラをブッと吐いた。

「ああああああ、あたりまえじゃん!何バカなことっ」

「あ、だよね良かったー」

 安心した、って笑うけど何が?

「いや、だってアンタ飛鳥くんの前に実は誰かと何かあったら飛鳥くんその人のこと殺しに生きそう」

「こ………ッ!んなわけないじゃん、てか何でそんなこと聴くのよんなことアンタもその…飛鳥も、分かり切ってることでしょ!?」

「うん、そうなんだけどねー」

 言いながら由香は氷が溶けて薄まった烏龍茶をストローでかき回す。

「なんていうかさ、今の話聴いてたらあまりにも琉依が飛鳥くんを誘惑してるから」

「ゆ…っ!!」

 今度こそあたしは言葉を失った。

 し…してない!断じてしてない!!誘惑の仕方なんてあたし知らない!!

 口をパクパクさせて(見えないから多分だけど)顔を真っ赤にさせていると、

「うーんじゃあやっぱり全部天然なのかぁ。…飛鳥くん不憫、きっとそれにやられたんだわ」

 聞き捨てならない言葉が聞こえた。

「…し、してないもん天然で誘惑なんて。第一どんなんが誘惑かも知らないんだから」

「だからそれが天然だって言ってんの。教えてあげよっか?まずはベッド。アンタ話聞くにゲームしててそのまま飛鳥くんの部屋のベッドで寝こけたんでしょう?まだ一線越えてない彼氏の部屋で寝るとかありえない、どんな拷問よそれ何無駄な試練与えてんの?」

「……………」

「それからねぇ、寝起きの上目遣い。ただでさえ琉依は背ぇちっちゃくて自然と上目になるのに寝起き一発目のぽーっとした顔で見つめられりゃそりゃ飛鳥くんだってため息くらいついて接吻の一つでもしたくなるわよ」

「…………………」

「あとはそうね、それに腕回して応えたこととか首筋で息つくとことか手に更に手を重ねちゃうこととか。あーもぅ、改めて連ねてみるとすごいテクニックね〜私ちょっと真似してみようかな」

「…………………………………………………」

「ね、琉依?」

「……………………………………………………………」

「琉依〜?」

「……………………………………………………………………………は、」

「うん?」

 ―――恥ずかしいっ!恥ずかしい恥ずかしいそれがホントだとしたらなんかあたしすごい恥ずかしい!そりゃ手を重ねるのは今のちょっとスイッチだったのかなくらいは思ったけどまさかあんなことになるなんて思ってもみなかったし!うわなんかマジで恥ずかしい!

「…なんで?べつにいいじゃん。それで試練与えられるのは飛鳥くんだけど結局は喜ぶんだろうし」

「それは…そうなのかもしれないけど。でも……って、あたし今声に出して喋ったつもりないんだけど!?」

「声出したのと同じくらいのレベルで顔に出てるからアンタは。まぁ…、だから飛鳥くんもやめてくれたんじゃないの」

 噛み付こうと思っていたのにいきなり話が戻って口をつぐんだ。

 …そう、きっとそうなんだよね。結局あたしは飛鳥に大事にされていて。じゃなきゃ7ヶ月なんもないなんてありえないし、だから涙ちょっと出ただけであいつは止めてくれたんだ。…そんなことくらい、分かってる。

 だから余計あんな反応しかできなかった自分に落ち込む。本当に嫌なわけじゃなかったのに。

「で、どうすんの琉依」

「………………」

「どうしたいのよ、飛鳥くんとどうなりたいの」

 矢継ぎ早に答えを求められて考える。

 ―――………嫌なんじゃ、なかったんだって。ただちょっと慣れてないから怖かっただけなのって。そんで何より、あたしは飛鳥と一緒にいる時間が大好きなんだよ、あの時はとっさにあんな反応しかできなくてごめんねって。…そう、伝えたい。

「じゃあ、伝えに行きなよ」

 由香がフッと息をつきながら微笑む。その表情は大人っぽくて、これを独り占めできる由香の彼氏は幸せもんだなぁなんて思った。

「…うん、ありがとう。そうする。―――じゃあ行ってくる!!」

「は!?今!?」

「今!」

 目を見開いて驚く由香にあたしは答える。

「だって早く仲直りしたいもん、そんで飛鳥にくっつきたい!!」

 ドリンクバーしか頼んでいない伝票を手に立ち上がって宣言すると、

「うわぁ…」

「はいソコうわぁ言わない!キャラじゃないの分かってるから!」

「いや、じゃなくて…」

「じゃあなによ」

「―――天然爆弾、落ちてるなぁって」

「!!!」

 なんのことを言ってるのかピンと来て顔が熱くなった。

 だ、だってだってだって!そう思っちゃったんだもん、仕方ないじゃんっ。

「これからそれでまた飛鳥くんのこと悩殺しにいくのね〜…ガンバッ」

 きゅるん、と。

 語尾に星がつきそうな満面の笑顔で由香は言った。 中学の頃からあたしがこうやってからかわれるのは決まったパターンだ、逃げるに限る。

「し、知らない!もう行く、バイバイッ」

 ―――でもさ由香。

 助けられたのは事実だから。

「今日、本当にありがとう。じゃねっ」

 せめてドリンクバー奢るくらいはしなくちゃね。

 手を振って会計に向かった。どういたしまして、と聞こえた小さい声に自然と笑顔になって。だけど最後に一言言わなきゃいけなかったことを思いだしたあたしはお金を払った後一旦席まで戻った。

「ね、ね、由香」

「わっ、琉依まだいたの。何?」

 振り返る愛しき親友に一言!

「『接吻』とかって。今日は由香の方がよっぽど昭和だったね!」

「!!」

 何かを言われる前にあたしは素早く店を出た。一拍遅れて背後で琉依〜!という金切り声が聞こえたけど、もうルンルン気分のあたしは気にも留めなかった。

 ―――だってこん時は疑いもしてなかったんだ。

 今日、家帰ったらすぐに飛鳥と仲直りしてまた一緒にいられるんだってこと。

 読了ありがとうございました^^

 感想・評価頂けると更新スピードが上がること請け合い★← 

 5秒前シリーズは好評だったので連載に朝鮮してみましたが、さてどうなることでしょう。頑張りますので応援よろしくお願いします(´∀`)

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