悪役令嬢、現る
『ルミエラ・オールエンツ公爵令嬢!本日を持ってお前との婚約を破棄し、新たにマリカ・リリアネン男爵令嬢と婚約する!』
画面の吹き出しの中に表示されたその言葉に、私は歓喜の叫び声を上げた。
「やった~!やっとここまできた〜!」
私は星宮輪廻。
ピチピチの地味オタクJK。
私が最近ハマっている乙女ゲーム『君に一輪の花を』。
ついに、ついに!
「2日連続オールでようやく!ようやく悪役令嬢を断罪できたわ!」
君花は、珍しく悪役令嬢は味方につけることもできるが、断罪することもできるゲーム。
私はもちろん王道の断罪を選んだ。
「あー、そろそろ寝よっと。2日連続オールしたからねむいぃぃぃぃ」
深夜10時の部屋に、私の独り言が虚しく響く。
それを見ないふりして、私はベットに入り込む。
ぬいぐるみをぎゅっと握りしめると、2日オールがダメだったのか、すぐに眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーピヨピヨ、ピヨピヨ。
庭で小鳥が鳴いている。
えー、目を覚ましました、星宮輪廻です。
私は今モーレツに困っています。
なぜならばんばんばばん!
あはは、上に誰かが乗っている。
いや、誰かなんてすぐに分かります。
少し癖っ毛なプラチナブロンドを青薔薇の硝子細工の簪でまとめている。
キラキラと輝く星のような金の瞳。
真っ黒な炭を落としたような目尻のホクロ。
夢にまで見た君花の魔法学園の制服をまとい、少し口紅をのせただけで華やかになる顔立ち。
飽きるほど見た麗しき令嬢。
……君花の悪役令嬢である、ルミエラ・オールエンツ公爵令嬢、その人である。
「ここは…どこですの?わたくし、処刑されたはずじゃ……?」
うん、ワケが分からないのは彼女も同じらしい。
「えーっと、ルミエラ、さん、だよねぇ」
下から声がしたことに驚いたのか、彼女…もといルミエラさんはびくっと飛び跳ねた。
「どっ、どどどどどちら様ですの!?まさか……あなたは天使様ですの!?断罪されるほど悪いことをしてしまったというのにわたくしは天国に来ておりますの…?」
あれ、自覚あったんだ。
「私は、星宮輪廻っていうの。あなたのことは知ってるよ。ルミエラ・オークエンツ公爵令嬢でしょう?」
更に驚くルミエラさん。
アワアワしてる彼女は、結構…いや、かなり可愛らしい。
なぜ王子はこの子を手放しちゃったの?
「おっしゃる通り、わたくしはルミエラ・オークエンツです。でも、ここはいったい、どこですの…?」
小さく息を吸って、できる限り堂々と答える。
「ルミエラさん、答えます。ここは、日本という国です」
ルミエラさんの顔を見ないようにした。
ポタポタという音が、聞こえてしまったから。




