第九話「ブロックからのお土産」
出発の朝。
緊張感が漂う中、ギルドに一つの小包が届いた。
「ん?ガイルさん宛てです」とサラが手渡す。
差出人は――修行中のブロック。
「……なに能天気に手紙なんか寄越してきてんだコイツは……」
封を開けると、中にはぶっとい字で「修行先の温泉最高でした!」「みんなも休める時は温泉おすすめ!」「新しい名物料理も食べてみたよ!パーティのみんなにも味わってほしくて、お土産送るぜ!」と、
脳天気にもほどがある内容が並んでいる。
(こっちは今まさに命がけだっつーのに……)
思わず手紙を握りつぶしそうになりながらも、
小包の中身にだけは少し期待がこもる。
「アイツの味覚だけは信用できるからな……」
ロッタがぼそりと呟くと、シルビアもこくんとうなずく。
出発前の時間を少しだけ延長し、
みんなで温泉土産の包みを開く。
ふわりと漂う芳醇な香り。
一口食べれば、思わず全員の目が見開く。
「……う、うまい……!」
「これ……本当に絶品……」
「さすがブロック……」
ひとときだけ、不安も忘れ、全員で黙々とお土産を平らげた。
だが、
頭の中の警報音――ビリビリビリッ!――は、まだ止まっていなかった。
(……美味いもん食ったら、やれる気がしてきた。よし、行くしかねぇ!)
意を決して、ガイルたちは依頼の地へと向かう。
――が、町の門をくぐり、しばらく歩いたその時。
「うっ……」
「えっ……これ……?」
「ちょ、ガイル、顔色が……」
突如、全員を襲う強烈な吐き気!
その場にへたり込み、次々と動けなくなる「ブラッドウルフ隊」。
「ブロックのヤツ……飯だけじゃなく、土産物でもこういうことになるのかよ……!」
ロッタが涙目で呻き、
シルビアもぐったりしながらうなずく。
サラが慌てて駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?」
「……今日は、無理だ……」
帰路につくパーティの頭の中で、
あれだけうるさかった危機察知の警報が――いつの間にか、ぴたりと止んでいた。




