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第八話「止まらぬ警報と臆病な自分」

 ガイルは今、人生で一番“慎重”かもしれなかった。


 特別指名依頼の準備を進めながら、彼はありとあらゆる方法で危機察知スキルの警報を止めようと試行錯誤していた。


「……本当に、一歩でもこの町を出たらヤバいのか?

 パーティ編成を変えてみたらどうだ?

 装備をいつもと違うものにしてみるとか……」


 普段なら「俺様の勘が正しい!」と一人で突っ走るガイルだが、この日ばかりは違った。


「ロッタ、どう思う?

 シルビア、なにか気になることないか?

 サラも、気づいたことがあったら何でも言ってくれ」


 みんなが思わず驚くほど、ガイルは真剣に相談を重ねる。

 念入りに準備し、計画を立て、確認し――

 だが、どれだけ工夫しても、頭の中の警報は鳴り止まなかった。


 ――ビリビリビリッ!

 ――ビリビリビリッ!




(どうやったら危機察知の警報が消えるんだ……)


 試しに、装備も全部外してみた。

 依頼を断るふりをしてみた。

 仲間全員の編成を変えてみた。


 それでも、警報は鳴り止まない。




 ヤケになって、

(いっそ全部投げ出して、どこか遠くに逃げ出したらどうなるんだ――)




 その瞬間、頭の中の警報がピタリと止まった。




(くそが……!)




 ガイルはふと、自分がまだスキルに目覚める前のことを思い出していた。



 あの頃――

 何も自信がなく、何をするにもビクビクして、

 臆病で、自分の影ばかり気にしていた自分。


(スキルを得て、“俺様”になったつもりでいたけど……

 本当は、ずっと怖がりなままだったのかもしれねぇな)


 警報音が響くたび、

 ガイルの心の奥に、

 昔の不安な自分がひっそりと顔を出す。




 その夜。

 準備が終わりきらないまま、ガイルは眠れぬまま朝を迎えた。

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