第七話「止まらない警告音」
(ブロックの休暇、あと何日だったっけ……)
依頼票を前に、そんな考えがふと頭をよぎる自分にガイルは内心愕然とする。
(いや、違う。俺が、俺様が、あんなお荷物に頼るなんて……絶対におかしい。
なのに……)
ギルドの応接室。
目の前のテーブルには、サラが差し出した特別指名依頼が一枚。
Aランクパーティなら「余裕」と言われてきた討伐依頼。
しかもガイルの危機察知スキルが決め手で選ばれた案件――
なのに、今、依頼票を手にした瞬間から頭の奥で警報音が止まらない。
――ビリビリビリッ!
――ビリビリビリッ!
「ガイル、やっぱりスキルの調子が……?」
ロッタが覗き込む。
「大丈夫ですか? 無理はしないでください」
シルビアの声も沈んでいる。
(違う、違う。俺様はこんなことでビビるわけにはいかない……。
だが……こんな強烈な警告、今までなかった。
ここまで“やめておけ”と言われている依頼を受けるのは初めてだ……)
心のどこかでは薄々気づいている。
――ブロックがいないせいなんじゃないか?
そんな考えを何度も頭から追い出そうとする。
(関係ない、そんなはずはない……。
いや、でも――)
ガイルは力なく依頼票を置き、長い溜息をついた。
「拒否、できないんだよな……?」
サラが小さくうなずく。
「申し訳ありません、ガイルさん。規則で、特別指名は必ず受けていただく決まりで……」
(最悪のタイミングだ。
よりによって、今……)
仲間たちも、不安げにうつむいたまま黙っている。
迷いながらも、俺は依頼の準備を進めることにした。
拒否するという選択肢がない以上、どうすることもできない――
力なくため息をつきながら、ガイルは静かにギルドの廊下を歩き出すのだった。
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