表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/64

第二十三話「決着」

 

「お、おいブロック大丈夫か!? 滅茶苦茶ガッシャァァァン!!って鳴ったぞ、ガッシャァァァン!!って!」



 轟音を立ててゼノに衝突したブロックは、冷たい石畳に大の字で横たわっていた。だが、どうやら直接ぶつかったのはブロックの盾だったようで、ブロック自身は無事なようだ。呻き声を漏らしながらすぐに目を開ける。



「た、隊長おおお!!! 無事で良かったよおお!!」



 その巨体で勢いよく抱き着いてこようとするブロックを、俺は反射的にひょいっとかわした。あの重量を真正面から食らったら、ゼノにやられたのより致命的になりそうだ。


「ゼノはそっちでノビてるわよ。それにしても完璧なタイミング……どうやったの?」


 シルビアが治療をしつつブロックに問いかける。

 ブロックは顔を赤くして、「俺……隊長を助けなきゃって……!」と答えかけていたが、今はそれどころではない。


 気を失っているうちに、ゼノを拘束するなりしなければまずいだろう。


「……なんか縛るもんないか? 無いよな。

 じゃあ穴掘って埋めとくか……」


「≪ダンジョンマスター≫の力で逃げられるんじゃないの、それ」


 たしかにシルビアの言う通りだ。このままじゃ埋めても無意味だな……そう思ったところで、俺は通信の魔道具でロッタに呼びかけた。



「……おーいロッタ! そっちにギルドの人はいるかー? ミーナとか、支部長……は、腰が大変なことになってなきゃで良いけど」


『リーダー!? 大丈夫? 支部長は居るよ。

 治療中だけど……』


「ああ、なんとかなってゼノは気絶してる。

 ただ無力化する方法が無くてな。何か知恵は無いか?」


『ええ!? か、勝ったの!? ちょっと待っててね……


 えっと、支部長が言うには、ゼノはダンジョンコアってのを持ってるはずだから、それを壊せば≪ダンジョンマスター≫の力は消えるはずって!』


 急いでゼノの身体を調べると、胸元から禍々しい光を放つ宝珠が出てきた。俺はそれを思い切り叩き割る。


 ――瞬間。


 ダンジョン全体に低い唸りが走り、空気が反転する。

 複雑に入り組んでいた壁は砂の城のように崩れ去り、広場全体がただの空間へと姿を変えていった。

 圧迫感が一気に消え、胸の奥に残っていた緊張もようやくほどける。


「……よし。あとはゼノを埋めとけば、しばらくは大丈夫だろう。

 ブロック、手伝え。なんか掘れるもんあるか?」


「ああ、うん。この盾で掘れるかな……!」



 ***



「――というわけで、俺、隊長が危ないと思って!

 ランダムワープの罠に飛び込んだんだよ!!」


「馬鹿野郎!

 あれ、運が悪いと壁の中にワープする奴だろ!!」


「”いしのなかにいる!!”ってやつね……」



 ゼノを首まで地面に埋め、ロッタに救援を要請したあと。

 俺たちは、どうやってブロックがここまで来たのかを聞いていた。



「ゼノの運を吸い取って隊長に注いでたから、多分大丈夫だと思ったんだよお!!」


「せめて自分に運を集めてからやれってんだ! そんな命がけの博打やめろ!!」



 ……とはいえ、ブロックの無茶が無ければ俺は今ここにいなかったかもしれない。あいつなりに全力で助けてくれたのだろう。


 それにしても、ランダムワープであの場所にピンポイントで来るとか、どんな確率だ?それだけゼノから吸い取っていた”運”が貯まっていたのか。いずれにしても、とんでもないポテンシャルを秘めたスキルだと改めて思わされる。



 そうこうしているうちに、ロッタを先頭に冒険者たちの一団が合流してきた。


「あ、リーダー! 見つけた! 結構近かったんだね!!」


 だが、一団のその姿はへろへろで、立っているのもやっとという有様。


 ……と思ったら、酒臭さが漂ってきた。

 そうだった、こいつら半分は酔っ払いだったんだ……。



「リーダー! 無事でよかったあ!! こっちは私一人で大変だったんだから!!」


 そんな中で、ロッタだけは相変わらず元気だった。

 だが、俺達の方で駆けて近づいてきて埋められているゼノを一瞥すると


「……あ、こいつがゼノだよね……覚えた。悪いものは……全部コイツに背負ってもらうよ……」


 ロッタが、いつもからは考えられない程、低い声で告げた瞬間、冒険者たちの疲労や酔いが一気に晴れたように見えた。怖いほど自然に、スキルを掌握してやがる。


 ……こいつ、なんかスキルの応用力がまた上がってないか?



「……ガイル、質問、これで一件落着?」


 シルビアの言葉に俺は「〇」の札を掲げる。掲げるというか、勝手に上がったのだが、まあこれで本当に終わりだという事だろう。


「そう、良かったわ。ゼノの処遇はギルドに任せましょう。どうなるかは知らないけど……実際の所、一連の騒動で被害はほぼ無かったのよね」


 確かに、被害といえば俺が殴られたくらいだ。スタンピードも被害なし、この騒動も手に入った財宝のおかげでギルドは黒字だろう。それで、どれほどの罪に問えるかは微妙だが、このまま野放しにも出来ないだろうな。


「まあ、終わってみればノリのいい奴だった気もするし、俺たちは成長したし、財宝は手に入ったし……得しかしてないからな」


「……その感情が≪魅了≫の効果だったりするかもしれないから怖いのよね。しっかり封じてもらわないと」



 ともかく、これで全てが元通りだ。狙われる日々からおさらば。ようやく休暇も取れるだろう。もうオーレアンは十分堪能したし、他の街へ――


 と、そこで俺は思い出した。


 そういえば、俺の≪スキル≫、ゼノに奪われたままじゃねえか!?


 とんでもない地雷スキルだと分かったばかりだが、それでもこのパーティにとっては必要な力だった気もする。この≪スキル≫無しで、俺たちブラッドウルフ隊はやっていけるのか?


 ……いや、全然問題ないかもしれん。

 俺の右手、「〇」の札は、またいつの間にか上がっていた。


 たしかに≪スキル≫が無くても、未来予知すらできそうな≪札の上げ下げ≫は普通にできたし、戦闘中は≪危機察知もどき≫も機能していた。むしろ追放した方がいいくらいの欠陥スキルだったんじゃ――


 そう考えた瞬間、


 脳裏にお馴染みのビリビリとした感覚が久しぶりに走った。



 ……おい。お前、強奪されたんじゃなかったのかよ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
スキルの追放モノかw
スキルさん、おかえりなさい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ