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第十話「その答え、〇か×か」

 

「……君のスキルで、私の鑑定を“動かして”みせてくれ」


 鑑定士のじいさんが、静かに、しかし確かな圧でそう言った。



「……だから何なんだよその無茶ぶりは……!」


 混乱は収まらない。いや、むしろ加速している。

 なんで俺が、スキルで鑑定士のスキルを“動かす”とかいう意味不明なミッションを担う羽目になってんだよ。俺のスキルはあくまで《危機察知》、未来の危機に反応するだけで、何かを起こすスキルじゃ――


「……待てよ」


 俺は、ふとあることに思い至った。

 この状況、シルビアとミーナの奴らは最初から仕組んでたんじゃないか?

 スキルの反応しない場所、鑑定士が“協力してくれない”前提で、俺に答えを“導かせる”ように仕向ける――



「俺、完全に踊らされてない……?」


「いまさら気づいたの?

 おじいちゃんがロープ抜けた時点で分かってたでしょ普通」


 シルビアは呆れた顔でそんなことを言ってきた。たしかに落ち着いて考えてみれば変だった。スキルも反応しなかったし、演技とか言ってたし。



「……それで、俺にどうしろって言うんだよ」


 俺はごまかすようにシルビアに問う。


「それについては、さっき鑑定士のおじいちゃんと話し合ってたんだけど――」


「君の≪危機察知スキル≫と、私の≪スキル鑑定≫を同時に使って、襲撃犯を調べることで確度の高い調査が可能となるのだ。具体的には――」



 ……そんなやり方で上手くいくのか。俺は不安を抱えながら鑑定士の説明を聞くのだった。



 ***



「ということで、今からいくつかの質問をするので、手元の〇×の札で回答をお願いします」


「ふふ、なんかクイズ番組みたいね」



 ミーナの説明に、シルビアが良く分からないことを言って笑いをこらえていた。


 俺の目の前には厳重に拘束された襲撃犯の片割れ、そしてあの看守の姿もある。俺と鑑定士は〇×札を持たされ椅子に座っていた。



「正解せねば命の危機と心得よ。警報が鳴らなければ〇、警報が鳴ったら×をあげるのだ、よいな」


「もう何でもいいから始めてくれ……」



 スキルの言う通り札を上げれば良いって単純な話だ。なんでこんなに自信満々なのか分からんが俺は鑑定士に適当な返事を返すだけだった。




「では最初の質問です。襲撃犯は≪魅了≫に類するスキルを使われている」


 ミーナの質問に、俺と鑑定士は「〇」の札をあげる。



「質問、魅了はスタンピード後に使用されたものである」

 この質問には、俺も鑑定士も「〇」


「質問、スタンピードの原因は≪魅了≫によってである」

 この質問にも、俺も鑑定士も「×」


「質問、黒幕は魔物を操るスキルを所持している」

 この質問には、俺も鑑定士も「〇」



「では、次、事件の黒幕は一人である」


 この質問には、俺が「〇」の札をあげただけ、鑑定士は「わからない」という回答。



 その瞬間、俺以外の表情がぎょっとしたものに変わる。


「……ガイル、〇なの?」とシルビア


「〇だが、なにか間違ったか……!?」


 俺は、正直ボーっとスキルが答えるままに札をあげていただけだったので、ちょっと焦っていたりする。


(適当に答えてたのがバレたか?いや、スキルが言う通り答えてたんだ、俺は悪くねえ……!)



「ガイルさんが正しければ、複数のスキルを一人が持っているということになります。そんなことがあり得るのでしょうか」


「それなら……質問、黒幕のスキルに心当たりがある」


 ミーナのつぶやきにかぶせるように、シルビアは新しい質問を投げかけて来た。


 俺の回答は当然「×」そして鑑定士の回答は……「〇」だった。



 あくまで一般的な話だと前置きをして、鑑定士が語り始めた。


「≪魅了≫のような強力なスキルは、後天的に習得することはまずありえないだろう。ただし、物事には例外があるのだ。それが≪スキルを奪い取る≫スキル。このスキルを持つものならば≪魅了≫も≪魔物を操るスキル≫も同時に所持することが出来るだろう。しかし……」


「私が鑑定したことのある者の中に、そのような都合の良いスキルを持つものはいない」


 皆の顔が落胆に染まる。いや、看守さんだけはちょっと様子が違うか。よく分からんがそんな気がした。



「何かご存じなのですか、支部長」とミーナが看守に問いかける。


 なるほど、言われてみれば何かに気が付いたような雰囲気だった。

 ……というか支部長?


「こちらの方は、一応、ギルドのオーレアン支部長なのです。ただ――」


「……質問だ。黒幕と過去に関係がある人物がこの中に――っと襲撃犯を除いてこの中にいるか」


 ミーナの説明に被せるように看守の人――オーレアンの支部長が、突然そんなことを聞いてきた。



 見た目、熊みたいなこんな人がギルドの偉い人なんだな、へー、と俺はどうでもいいことを考えつつ答えの札をあげた。


 鑑定士の爺さんは「わからない」の回答、そして俺は……「〇」だった。


「やはりか……」と支部長はつぶやく。



「多分知ってる奴だ。そして、その男は――昔、俺のスキルを奪い、俺をパーティから追放した男だ。」


 そんなことを看守の人、オーレアンギルドの支部長は確信を持った目で俺たちの前で宣言した。



(いや、心当たりがあるんなら、最初からその線で調査しとけよ!!)


 と少しだけ思ったが空気を読んで俺は黙っていたのだった。


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