第四話「追放できない俺様の限界」
「ご、ごめん隊長……俺、また、やっちゃった」
ブロックが三日間の休暇から戻り、「ブラッドウルフ隊」は再び四人体制に戻った。しかし、俺の平穏な冒険者ライフは帰ってこなかった。
*****
森の探索依頼。
ブロックはいつになく真剣な顔で盾を持ち、「今度こそ音を立てないぞ……」と慎重そのものだ。
(よし、今日はやらかさないか……?)
――だが。
(……遅い。いや、のろすぎる!)
確かに盾からは一切音がしない。だが、あまりにもスローモーションすぎて、パーティ全体がブロックのペースに巻き込まれる。ついには後ろから別の冒険者パーティに「すみません、先通ります」と追い越される始末。
(これじゃあ任務にならねぇ……!)
「ね、ねえブロック、今日は探索だから音出しても大丈夫だからね!!そんなに慎重にならなくても……」
ロッタが優しく諭すが、ブロックの動きはぎこちないままだ。前回、少し叱りすぎただろうか、いや、それにしても極端すぎだろコイツ……!
その後もゴブリンの群れに出くわしたが、的確に”邪魔”なポジショニングをとり、連携の邪魔になっていた。いざ戦闘になると、前線での圧もなければ、的確な壁にもなれていない。結果、周囲の仲間が回り込んで戦う羽目になり、パーティ全体がバラバラに。
(今度は“何もしない”でお荷物になってるじゃねえか!)
* * *
夕食の時間。
「みんな、お腹空いてるでしょ?今日は得意の煮込みだよ!」
ブロックの料理だけには、誰も逆らえない。こいつ、料理人としてはかなりの腕を持っているのだ。極上の味にシルビアもロッタも感動し、おかわりまでしてしまう。
――だが、数時間後。
「う……」「ああ……まただ……」
トイレに駆け込むパーティ一同。
こいつ、料理だけは天才的なんだが、なぜか食べると腹を壊す。その確率は三回に一回。食べなきゃいいのに、ついブロックに料理を任せてしまうくらい美味いから困る。
(腹が壊れると分かってても抗えないこの魔性の味!
だがなぜ腹が壊れるんだ!)
「もう何回目かな、これ……」
ロッタがうめく。
俺様の≪危機察知スキル≫は、何故かブロックの料理には反応してくれないのだ……
「こ、こういう微妙な危機にこそ、リーダーのスキルは反応して欲しのに……」
すまん、シルビア、それは俺も同感だがどうにもならんのだ……
だが翌朝みんなでトイレ直行ってのはどうだ。
結果、依頼はすっぽかし。
ギルドじゃ死人みたいな顔で報告だぞ、俺様の内臓も名誉もズタボロだ。
***
ブロックのやらかしに、ガイルの頭には再度「追放」の二文字がよぎる。
(やっぱり限界だ!今度こそ……!)
だが、追放の言葉を口に出そうとするたび、頭の奥でビリビリと危機察知スキルが警告を鳴らす。
(なぜだ、なぜなんだ!?俺が何をしたっていうんだ……!)
ついに我慢できず、森の中で声を上げてしまう。
「もう我慢の限界だっ!」
ロッタがぽつりとつぶやく。
「……でも、リーダー、それよく言うけど、
だいたい何もしないで我慢し続けるよね」
(いや、そうじゃない……!
俺はもう本当に限界なんだよ……!)
そんな中、ブロックは、
「次こそみんなの役に立てるように頑張るから!」と、今日も明るい。
――危機察知スキルさえなければ、
今ごろ俺様パーティはもっと快適だったはずなのに……。
(くそ、なんで追放できねぇんだ……!)
……というわけで、ちょっとしばらく修行に行ってこい!
今度は二週間くらいな!
我慢の限界を超えた俺は、精神の安寧をはかるために、
再びブロックに長期休暇を与えることにしたのだった。
「ありがとう隊長! また温泉行ってくるよ!!」
コイツ……修行だって言ってるの分かってんだろうか―――




