表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/64

第六話「地下の兆しと支部の決断」


「……つまり、スタンピードの兆候は“地上”ではなく、“地下”にある可能性が高い、ということですね?」



 ギルド支部の仮設執務室で、支部長代理のミーナ=クレイスが腕を組みながら、真剣な眼差しで俺たちを見据えている。


 昨日の夕方、俺たちは地下通路の存在を確認し、その足でギルドに報告した。俺のスキル《危機察知》は、あの場所で確かに反応していた。警報が消えないということは、“何か”が近づいている証拠だ。



「ああ。瓦礫の下に、明らかに整備された地下の通路があった。で、そこへ足を踏み入れようとした瞬間――俺のスキルが反応したんだ」



 いつものように「なんかビリビリきた」なんて軽口は言えない。

 あのときの反応は、ハッキリとした“拒否”だった。

 行くな、って言われてる感覚だった。


「……通路自体が危険、と?」


「その可能性もある。でも“今すぐ入ったら死ぬ”って感じじゃなかった。どちらかというと……“そこに何かが来る”、そんな予感だった」


「なるほど。つまり、その通路が敵の進行ルートになっている可能性があるわけですね」


 ミーナは書類に目を落としながら、しばらく無言で考え込んでいた。

 手を伸ばしかけた書類に何度も触れかけては、止める。

 やがて、静かに言葉を紡いだ。


「まずは地下通路の構造を調査しましょう。もし地図にない旧時代の遺構だった場合、状況はさらに深刻です。調査班は本日中に手配します」


「それと、俺のスキルで“この先は危ない”ってラインが測れるかもしれない。正直、そういう使い方は試したことないけど……やってみる価値はあると思う」


「上等です。あなたのスキルが有効だった事例は、すでに他の支部でも報告されていますから」


「……マジか。そこまで共有されてるのかよ」


「ええ。あなたの名前つきで。ご安心を、面白おかしく伝わってはいません」


 ミーナの言葉には冗談っぽさもあるが、目はずっと真剣だ。



「もうひとつ。地下通路の発見現場は封鎖を進めていますが、都市部だけに地下構造が広範囲に広がっている可能性がある。避難経路や防衛ラインの再編も必要ですね。……街の中に敵が現れるなど、想定していませんでした」


 俺たちは黙って頷いた。

 スタンピードが地上ではなく、地下から都市へ侵入してくるとすれば――

 いくら外に防壁を築いても、意味がない。




「じゃあ、明日からじゃなくて、今日のうちに調査に出るわよ。準備は入念にね」


 シルビアがきっぱりと言い、俺たちは支部を出た。


 外に出た瞬間、俺は空を見上げた。

 厚い雲が広がっている。まるで、嵐の前の静けさ――いや、すでに嵐は始まっているのかもしれない。


 それでも、まだ終わったわけじゃない。

 俺のスキルは、今のところ“最悪の未来”を示していない。


「……ギリギリかもしれねぇけど、やるしかねぇな」


 自分にそう言い聞かせて、歩き出そうとしたとき――


「ねえ、ガイル。ちょっと試してみたいことがあるんだけど」


 シルビアが、ニヤッと笑った。


「ん? まあ、いいけど……?」


 そのときの俺は、軽くOKを出したことを、あとで猛烈に後悔することになる。



 ***



「――というわけで、スタンピードで街に被害が出たら、ガイルが全部賠償するって契約を結んできたわ!」


「ちょっと待てえええ!!」


 シルビアの爆弾発言に、俺は本気で叫んだ。

 頭の中では、スキルの警報がこれでもかと鳴りまくっている。



「もし失敗したら、社会的に死ぬわよ。でも、それがイヤなら……全力で、警報が“鳴らない”方へ走りなさい!」


「はあ!? 何だ、その無茶苦茶な理屈!」


「追い詰められた状況でこそ、スキルは新たな使い方に目覚めるって、シルビアが言ってたよー」


「シルビアは鬼畜だなあ」


 ロッタとブロックは、完全に他人事みたいな顔で俺を煽ってくる。


 でも、俺もだんだん理解してきた。



 つまり――

 “スキルが反応しない方向に、全力で進めば活路が開ける”ってことだな?



「――ならやってやろうじゃねえか!! ちくしょう!!」


「だから最初からそう言ってるでしょ! さあ、時間ないんだから早く行くわよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ