第四話「合同依頼と一目惚れ?」
合同依頼当日。
ギルドの応接室に集まった俺たち「ブラッドウルフ隊」は、普段よりもやけに固い空気の中、そわそわと席に着いていた。
「……なあ、本当にエリュシオン・ブレイズが来るんだよな?」
ブロックが袖を引っ張りながら小声で聞いてくる。
「間違いねぇよ。サラが“本部直々”って何度も言ってたし、今日の応接室……なんか無駄に豪華だろ」
俺も平静を装うが、珍しく内心は落ち着かない。
ロッタは手をぎゅっと握りしめて、「うちみたいな中堅パーティに本当に来るなんて……夢じゃないよね?」と髪や服をそわそわ直していた。
シルビアが静かに口を開く。「Aランク全体の中でも、エリュシオン・ブレイズは別格。ギルド本部直轄の精鋭よ」
ブロックも「リーダーは伝説級の冒険者だろ? 俺でも知ってるぞ」と感心している。
そんな会話の最中、重厚な扉が、まるで舞台の幕が上がるようにゆっくりと開く。
現れたのは、金髪碧眼のイケメン――クラウス=フィンベルグ。その後ろには堂々とした雰囲気のメンバーが数名並ぶ。
クラウスは一礼し、俺たち一人ひとりに目を合わせて穏やかに微笑んだ。
俺の前に来ると、にこやかに手を差し出してくる。
「君がリーダーのガイルさんですね。危機察知スキル、評判は本部にも届いています。パーティ全体の戦術連携も興味深いです。ぜひ現場でその動きを観察させてください」
いつものように隙のない、理知的な笑顔――
だが、クラウスがロッタの前に立った瞬間、何かが変わった。
クラウスは一瞬だけロッタに視線を向ける。
一瞬、クラウスの瞳が見開かれる。
「……!」
その場にいる全員が一拍おいてクラウスを見るが、当人は一切動じず――いや、むしろ明らかにテンションが上がっている。
クラウスはロッタの手を両手でがっしりと握りしめ、まるで何かにとり憑かれたような勢いで叫ぶ。
「君がロッタさんだね――すごい、素晴らしい……君が、君の“力”が……いや、これは……!」
その目は明らかに尋常じゃない熱で輝いている。
ロッタは緊張で固まる。
「え、えっと、よろしくお願いします……?」
クラウスは息を弾ませたまま、
「君が欲しい! もしよければ――僕と、これからも一緒に歩んでくれないか!?」
「えええええーーーーーーーっ!?!?」
応接室の空気が一瞬で凍りつく。
俺もシルビアもブロックも、全員がフリーズした。
(な、なんだこいつ、唐突すぎる……!)
ロッタは真っ赤になり、「え、合同依頼って、そういう話だったの!? 私、いきなり!? ええ!?」とテンパりまくり。
クラウスは一瞬で自分の言動を自覚し、「あ、いや、違う、これはその――」と慌ててロッタから手を離す。
「その、僕がこんなことを言うのは本当に初めてで……いや、君は本当に特別で……あの、君の存在が、僕の……じゃなくて! 本当に……!」
軌道修正しようとして、どんどん誤解を深める。
シルビアが呆れ混じりに「ちょっと待って、合同依頼ってお見合いイベントだったの……?」とつぶやき、
ブロックは「やっぱりロッタは主役だなあ……」と他人事のように笑っている。
俺はふと、「ロッタを嫁に出す=追放」になるのか?という混乱した考えが頭をよぎる。
その瞬間、脳内で追放警報がビリビリビリッと鳴り響き、我に返った。
――これ、愛の告白どころか、超本気の人材スカウトじゃねえか!?
……いや、こいつ本人、まったく自覚がない顔してるぞ!?
ややこしいことになりそうだ……。




