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第三話「おかえり、ムードメーカー」

 三日の休暇期間が終わり、俺たち「ブラッドウルフ隊」はギルドのカウンター前で、どんよりした空気をまとって集まっていた。


 シルビアは心配そうに俺たちの顔色を覗き込み、ブロックは机につっぷしてうなだれている。俺も、腹を押さえて椅子にもたれていた。


 そんな沈滞ムードの中、ひときわ元気な声がギルド内に響く。



「みんなー! ただいまっ! いやぁ、やっぱり外の空気は最高だね! お土産も買ってきたよ! ほら見て、これ! 流行りのパフケーキなんだって!」



 駆け込んできたロッタは、いつもの明るさそのまま。


 その瞬間、何だかギルドの空気がふっと軽くなった気がした。



「……おかえり、ロッタ」

「おかえり……俺、パフケーキ食べる元気もないかも……」


 ロッタは思わず袋を落としそうになる。


「え、ちょっと、何そのテンション!? 私がいない間に魔王と戦ったとかじゃないよね!?」


「……別に、何も。ちょっと腹と胃がやられただけだ……」「オレ……あんなに腹が痛くなったの、初めてかも……力が入らない……」


 シルビアがロッタの肩をがっしり掴み、目を潤ませる。


「ロッタ、本当に戻ってきてくれてよかった! ガイルもブロックも、ずっとしんどそうで……見ててつらかったの。だから、本当に助かったよ」


「ず、ずっとじゃねえし……」

 俺も小声でツッコミを入れるが、どうにも力が抜けたままだ。


 ブロックがふにゃっとした笑みでロッタを見上げる。


「ロッタ、もう二度とどこにも行かないで……オレ、ムードメーカーがいないと、たぶん干からびる……」


 ロッタはおろおろしつつも、「そんなに私ってパーティに必要だったの!? だってガイル、いつも『うるさい』とか『うっとうしい』とか言うじゃん!」


「……その……今は言う元気もねえ……」

 思わず本音が漏れる。


 シルビアも静かに頷く。


「やっぱり、ロッタがいないとパーティの空気が全然違うよ。みんな元気がなくなるし、正直ちょっと怖かった」


 ブロックも横から、「オレ、シルビアの魔法もありがたいけど、やっぱりロッタの声がないと、回復も半分な気がしてさ~……」


 ロッタは苦笑しつつ、二人の背中を軽く叩く。


「ブロックだって、みんなを盛り上げようって一生懸命だったよね。ちゃんと見てたよ、ありがとう!」


 ブロックは、照れくさそうに「そ、それほどでも……」と鼻をこする。


 俺はもう一度、腹を押さえて深く息をつく。


「とにかく……今日はみんなで飯でも食って、スイーツで栄養補給だ。ロッタ、変な休暇はもうナシな」


 言ってから自分の状態を思い出す。



「い、いや、やっぱり俺……スイーツ食べる元気はまだ……」

「俺も……できればおかゆから……」



 ロッタが呆れた顔で笑う。


「まったく、男二人がそろって情けないなぁ。じゃあ、元気になるまで私がしっかり看病してあげる! みんなでスイーツは、明日までお預けね!」


 ブロックが「……助かる……」と情けなくうなずき、俺は「べ、別に看病とかいらねえし……」とそっぽを向く。


 ロッタが「じゃあ、これからも毎日賑やかにいくから覚悟してよね!」と両手でピースを作ってにっこり。


 その明るさが戻った瞬間、本当にギルドの空気が一気に軽くなった。



 * * *



 とにかくロッタの追放はパーティへの影響が想像以上に大きい。それは、本人が思っている以上だ。


 ……やっぱり、ロッタのスキルも普通じゃないよな。


 例の合同依頼も数日後に始まる。全員揃ってるのが絶対条件だ。


 俺は腹をさすりながら、ロッタの後ろ姿をじっと見つめていた。


 ――合同依頼で手に入った金でロッタのスキル鑑定をしてみるべきかもしれんな。




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― 新着の感想 ―
お菓子すら喉が通らないって胃腸へのダメージを軽減する能力でもあるのか。
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