第十三話「スキル鑑定士がやってきた」
ついにその日がやってきた。
俺たちのパーティ「ブラッドウルフ隊」は、ギルドの用意した特別室で、息を詰めてその時を待っていた。
この日まで、俺たちはAランク依頼を次々とこなしてきた。
パーティの連携も、まあ悪くない。
けど、思い返せばいろいろあった。
「この前の遺跡探索、危なかったな。
……ブロック、石像倒したのは忘れてないからな」
「うう……みんなごめんよ……。
あれ、マジで焦った……」
「まあ、仕切り直してどうにかなったからいいよ」
ロッタが小さく肩をすくめる。
「本当に大事故にならなかっただけマシだよ」
シルビアが優しくフォローを入れてくれる。
「つーか、ブロックがいると毎回何かしら小さいトラブルあるけど……なんで大怪我とかにならないんだろな」
俺がつぶやくと、
「それ、パーティの謎だよね。
妙に運がいいっていうか」
ロッタがニヤリとする。
「いや、運が悪いのはブロックだけで、
私たちはなんだかんだ無事、っていう変なバランスだけど……」
シルビアも苦笑い。
「いやいや、ごめんってば……。
俺、本当に足引っ張ってないかな……」
ブロックは不安げにうつむく。
「まあ、命に関わる失敗は今のところゼロだし。
次はもっと気をつけてくれよ、ほんとに……」
俺は頭をかきながら、苦笑いするしかなかった。
連続依頼で財布にもだいぶ余裕ができたし、
パーティの雰囲気も悪くない。
けど、やっぱりブロックのスキルだけはずっと気になってた。
(……今日で全部ハッキリさせる。
俺様もスッキリしたいし、何よりパーティの未来のためだ)
ギルドの個室は、重厚な扉と分厚いカーテンに囲まれている。窓の外にはギルド職員が警備で立っているし、室内にも結界が張られてるらしい。
ロッタは落ち着かないのか、椅子に座ったり立ったりを繰り返しているし、シルビアはそわそわと何度も自分の髪をいじっている。ブロックはといえば、椅子に座ったままガチガチに固まっていた。
「……み、みんな緊張してるなあ」
「お前が一番緊張してるよ、ブロック」
「そ、そりゃ、人生初のスキル鑑定だし……」
「俺も初めてだぞ、こんな本格的なのは……」
やがて、コンコン、と控えめなノック音が響いた。
「失礼します。スキル鑑定士をお連れしました」
サラが扉をそっと開けると、
現れたのは――
いかにも只者じゃない雰囲気の老人だった。
深いグレーのローブに、背中に巨大な本、首には銀色のゴーグル、手には重厚な杖。
見た瞬間、誰もが“本物だ”と確信するタイプだ。
「ふむ、ここが“ブラッドウルフ隊”ですな。
スキル鑑定を希望したのは……」
「は、はい!ぼ、僕です!」
ブロックがピシッと手を挙げるが、声はちょっと裏返っていた。
「では、始めましょうか。
椅子に座り、目を閉じて、深呼吸してください」
「は、はい……!」
ブロックが神妙な顔で目を閉じ、手を膝の上に置く。
鑑定士は大きな本を机の上に開き、銀色のゴーグルを額にかける。杖の先をそっとブロックに向けると、低く古風な言語で呪文を唱えはじめた。
部屋の空気が、一気に張り詰める。
ページが一枚一枚めくられ、杖の先からは淡い光が何本もブロックの身体に染み込んでいく。
魔法陣がぼんやりと足元に浮かび、ほんのり甘い香りが漂う。
ロッタもシルビアも、息を呑んで鑑定士の動きを見守っている。
「ふうむ……なるほど、なるほど……」
鑑定士は何度もうなずき、時にはページを戻しては確認し、時にはブロックをじっと見つめ直したりする。
(まどろっこしいのはいい!
結果はどうなんだ、結果は!)
心の声が顔に出てたのか、ロッタが肘で小突いてくる。
「ガイル、顔……めっちゃ期待と不安が出てるよ」
「う、うるさい!集中させろ!」
やがて、鑑定士は本をパタンと閉じた。
杖を両手で握りしめ、俺たちをじっと見渡す。
「――まず……スキル鑑定を頼まれたことも、
守秘義務契約を結んだことも、正解でしたな」
その声の重みに、部屋の空気がピリリと引き締まる。
俺も、ロッタも、シルビアも、そしてブロックも――ごくり、と生唾を飲み込んだ。
(――なんだ、その含みのある言い方は……!?)




