第十二話「本当のスキルを知りたい」
翌日、俺はギルドの受付カウンター前でサラに身を乗り出していた。
「なあ、ちょっと聞きたいんだけどよ……」
「何でしょう、ガイルさん?」
「ブロックのスキル、ちゃんと調べる方法ってあるか?」
サラは少しだけ驚いたが、すぐに静かに説明を始めた。
「Aランクの皆さんなら、“スキル鑑定”が可能です。
特別な魔術師を手配して、詳細を調べることができますが――」
「……が?」
「お値段は、特別指名依頼の報酬が軽く吹っ飛ぶくらい、ですね。
お一人分で」
「なっ……一人分で!? さすがにぼったくりだろ!」
サラは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。
「鑑定できるスキル持ちの方は、とても貴重で多忙なんです。なので、街から街へ高速で移動できる“転移”や“超速移動”のスキル持ちもセットで手配する必要がありまして……」
「……なんだその謎のパーティセットは。
そんなの余計高いじゃねえか!」
そのとき、ロッタが横から顔を出した。
「え、そんなに高いの?
ガイル、貯金とかあるんだっけ? 私無いよ?」
「ふ、フン、まあ……その……多少はな……いや、まあ……」
「あれ、ガイルってやっぱり貯金あるんだ?」
ロッタは目を丸くする。
「前から思ってたけど、
ガイルって俺様キャラの割に、めっちゃ計画的じゃない?」
シルビアがくすっと笑う。
「だって家計簿とかつけてるし。
俺様って言うけど、絶対そうじゃないよね」
ロッタもツッコんでくる。
「そ、そんなことねえし!
俺様は俺様なんだよ!」
耳まで熱くなる。だが誰かが管理しないと、このパーティは速攻で路頭に迷うのは明らかだ。
「いつもパーティのお金とか管理してくれてるし、
実はすごく世話焼きタイプだよね」
シルビアの優しいフォローにも、なんかムズムズする。
「……まあ、みんなが使いすぎるから、仕方なくな。
俺様がいなきゃこのパーティは崩壊だろ」
「ほら、また言い訳してる!」
ロッタが笑う。
「うん、でも頼りにしてる!」
ブロックは能天気に親指を立てる。
サラが咳払いして仕切り直す。
「ええと、ギルドが情報をもらえる“守秘義務なし”なら費用はかなり抑えられます。ギルドの財産になる、ということで。逆に“守秘義務契約”を結ぶ場合、スキルの詳細はギルドにも一切伝わらず、パーティの皆さんと鑑定士だけの秘密になります。その分、高額になりますが……」
「つまりギルドに全部バラす代わりに安いか、俺たちだけの秘密にして高く払うか……ってことか」
「どうするの、ガイル?
ギルドの財産にするってのも、ちょっと嫌だな」
ロッタがぼそり。
「うーん……でも財布はきつい……」
シルビアも困り顔。
「安いほう、つまりギルドにも情報が行くほうで……」
と口にしたその瞬間――
ビリビリビリビリビリッ!!!
(――来た!危機察知全開!これ、
絶対やばい展開だろ!?)
「どうしたの、ガイル?顔色悪いけど」
ロッタが覗き込む。
「いや……やっぱりブロックのスキルは、ギルドにバレたらやばいタイプだ。俺様のスキルが人生最大レベルで警報鳴らしてるぞ……」
「へぇ、珍しい。ガイルの危機察知って本当に万能だよね」
ロッタは半分面白がりつつ、心配そう。
「それなら高くても、守秘義務契約で行くしかないですね」
シルビアも神妙な顔だ。
「大丈夫だよ、ガイル!みんなでバイトすれば何とかなるって!」
ブロックはなぜかやる気満々だ。
「お前のバイトはいつも失敗して赤字だろうが!」
「まあまあ、せっかくだからスキル鑑定なんて経験も、
人生に一度くらいしてみたいよ」
ロッタが明るく言う。
「……わかった。サラ、高くてもいいから“守秘義務契約”で手配してくれ。足りない分は……あーもう、俺様の貯金でカバーするから!」
「承知しました!」
サラはにっこり笑ってうなずいた。
こうして、俺たち「ブラッドウルフ隊」は、
ブロックの“本当のスキル”を知るために動き始めるのだった。




