第十一話「スキルは自己申告?」
久しぶりに、パーティ全員が揃った夜だった。
ギルドの片隅で輪になって、ブロックが持ち帰った温泉まんじゅうを囲む。
いつもはどこか殺伐とした空気になるのに、この夜だけは妙に穏やかだ。
「いやー、やっぱりみんなと一緒が一番だな!」
ブロックが能天気な笑顔でまんじゅうを頬張る。
「それ、どこで買ってきたの?意外と美味しいね」
ロッタも珍しくにこやかにしている。
「温泉街の土産屋で、店主さんがすっごい自慢しててさ。つい箱で買っちゃった!」
ブロックは自慢げに箱をドンとテーブルに置く。
シルビアもにっこり微笑みながら、
「久しぶりにのんびりできてる気がします。たまにはいいですね、こういうのも」
「まあ、今回もなんだかんだで全員無事だったし、よかったよな」
ガイルがそっけなく言うと、ロッタがにやっと笑う。
「何、急にリーダーらしいこと言ってるの?」
「べ、別に……俺様は最初からリーダーだろ」
「はいはい」
ロッタが茶化すように返し、みんながくすくす笑う。
「でも、ガイルさんの危機察知、やっぱりすごいです。私たち何度も助けられてますし」
シルビアが感謝をこめて言うと、ガイルは鼻を鳴らす。
「まあな」
(……やっぱり、こいつらがいると落ち着くな。
い、いや、違う!危機察知がおとなしくなったから錯覚してるだけだ。俺様は孤高のリーダーなんだからな)
まんじゅうをほおばりながら、ロッタがふと思いついたように口を開く。
「ねえ、みんな。さっきから思ってたんだけど、私たちの“スキル”って、本当にその通りなのかな?」
「え?」
ブロックが箸を止めて、ロッタを見る。
「だってさ、冒険者登録のとき“スキル名”を書くけど、あれって自己申告でしょ?
本当に自分の能力がその名前通りなのか、誰もちゃんと証明できないじゃない?」
「そう言われてみれば、俺様の危機察知も本当に“危機”だけ反応してるのか、怪しいもんだしな……」
ガイルはちょっとだけ素直に考え込む。
「私の“回復魔法”も、登録は“癒しの手”って書いたけど、
本当はただの応急処置かもしれないし……」
シルビアが自分の手を眺めながら言う。
「ブロックの“鉄壁の盾”も……」
ロッタが言いかけると、ブロックはぽんっと胸を張る。
「俺のは、ほら、盾を構えて立つだけだからなあ。強いかどうかは……まあ、みんなのおかげだし!」
「なんか、“鉄壁”っていうより、“いつも立ってるだけ”の印象のほうが強いかも」
ロッタがいたずらっぽく笑う。
「ひどいなあ、俺けっこう頑張ってるんだけど」
ブロックが肩を落とすと、シルビアがそっとフォローを入れる。
「でも、ブロックさんが前に立ってくれると、安心しますよ」
「そうそう。なんだかんだで、いなきゃ困るし」
ロッタもうなずく。
「まあ……たまには悪くないかもな」
ガイルは小さくつぶやき、すぐ咳払いしてごまかす。
「なに、急に真面目な顔してんの、ガイル?」
ロッタが肘で小突く。
「……べ、別に。なんでもねぇよ」
そのまま夜は、しょうもない昔話や“実はあのときピンチだった話”で盛り上がり、パーティの笑い声がギルドの片隅に遅くまで響いた。
――そして翌日。
ガイル、ロッタ、シルビアは仲良くお腹を壊して全滅。
ギルドのベッドでぐったりしている3人をよそに、
ひとりだけ元気に朝食を平らげるブロックの姿が、食堂で輝いていた。
「みんな、お腹弱いなあ……。今日はまんじゅうのおかわりもひとり占めか!」




