第十話「結論から言うと、大成功だった」
結論から言うと、あの日の特別指名依頼は大成功だった。
討伐対象は、密林に潜む“隠密奇襲型”の魔獣。
音も気配も消して背後から一撃を狙う、冒険者泣かせの相手だった。
――だが、俺の危機察知が本領を発揮した。
魔獣が木陰に身をひそめ、息を殺す。
パーティ全員がじりじりと進む中、ガイルの頭の中で「今だ!」と言わんばかりにビリビリと警報が一瞬だけ走る。
「右だ!伏せろ!」
反射的に叫ぶと同時に、パーティ全員が地面に飛び込む。
その瞬間、シルビアが素早く結界魔法を発動――
襲いかかってきた魔獣の奇襲を結界がはじき返す。
「今だ、ロッタ!」
ロッタの放った炎の魔法が魔獣に炸裂、
ブロックが大盾で進路を塞ぎ、
ガイルが隙を逃さず渾身の一撃でトドメを刺す。
(――完璧だった。全てがかみ合っていた。やはり俺様のスキルは最強だ!)
討伐が終わり、依頼達成を報告した俺は、ギルドの酒場で胸を張る。
「ふん、やはり俺様にかかればあの程度の依頼容易いな!」
……が、すかさずロッタが小声でツッコミを入れる。
「でも次の日から宿に引きこもってたよね…」
「やめなよ…」
シルビアまで苦笑している。
「休暇を取っていただけだ!」と強がるが、
「Aランク依頼怖がって、部屋でガクブルしてたくせに…」
なぜバレてる!?
(まあ、しかし今回のことで分かったことがいくつかある)
まず――おそらくブロックには俺の危機察知に干渉するような“何か”がある。
アイツの土産物を食べてダウンしたタイミングから、依頼達成まで、
危機察知の警報が鳴りっぱなしになることは無かった。
だが、翌日Aランク依頼を受けようと考えたら、またうるさくなったし……
(あの食い物がトリガーになったのは間違いないだろう。
ブロックの料理じゃなくても発動するのが意味わからんが…)
そして、もう一つ。
ブロックのヤツ……よく考えてみたら「修行に行かせた」はずなのに、
温泉旅行にいってやがった!!!
と、そこへ――
「たっだいまー!温泉最高だったぞー!」
と能天気な声でブロックがギルドの扉を開ける。
土産話と大量の温泉まんじゅうを抱えて現れるその姿に、
パーティ全員がなんとも言えない表情になる。
「おまえ…そこは一応隠せよ…」
とガイルがぼそっと漏らすと、
ロッタもシルビアも思わず吹き出して笑った。
こうして、「ブラッドウルフ隊」はまた元(?)の賑やかな日常へと戻っていくのだった。




