最初の裁判
次の日、私は王の間に連れて行かれた。国王は厳かな表情で私を見つめていた。私の横には、例の緑髪の少女が立っている。国王と少女は何かを話しているが、もちろん私には何を言っているのかさっぱり分からない。
国王が私に向かって何か言葉を投げかけると、少女は驚いた顔をしていた。その表情から、嫌な予感がした。
きっと、私は用済みだと思われているんだ。
日本で読んだ異世界物のラノベや、ゲーム、漫画の数々。異世界に召喚された者には特別な力があるのが定番だ。しかし、ここに来てからの私は何もできなかった。ただのブラック企業で働く平凡な人間に過ぎない。彼らが私に期待していた力や能力は、何一つ見せられなかったのだ。
私は失敗作だ。
だからこそ、異世界の人々は私を野放しにしておくわけにもいかないだろう。何の役にも立たない上に、この世界の人々にとって未知の存在である私を放置することは、彼らにとってリスクだ。だから、処分されるのだろう。
嫌だ、死にたくない……
心の中で叫びながら、私は必死に考えた。何とかして、この場を乗り切らなければならない。そんな時、緑髪の少女が私の方を見て、一瞬の間があった。彼女の瞳には、微かな同情の色が浮かんでいた。
その瞬間、少女は国王に向かって強く何かを訴え始めた。彼女の言葉は分からないが、その熱意は伝わってきた。国王はしばらく考え込み、やがて渋々と頷いた。
どうやら、命だけは助かったようだ。
しかし、これからどうなるのかは全く分からない。不安と恐怖が胸を締め付ける中、私は国王と少女の間で行われるやり取りを見つめていた。