囚われの身
王の前に立たされ、何も理解できないまま美咲は困惑していた。王は彼女に向かって何かを話し続けていたが、その表情が次第に失望と困惑に変わっていくのがわかった。
「何もわからない…」
王は最終的に残念そうな顔を浮かべると、兵士に指示を出した。美咲は兵士に連れられ、王の前から離されることになった。彼女が連れて行かれたのは、王宮の奥まった一室だった。
その部屋は王宮の豪華さとは程遠く、質素なつくりだった。美咲はここが元々倉庫だったのではないかと感じた。急遽、彼女のために準備された部屋なのだろう。部屋の外には兵士が見張りとして立っており、美咲が外に出ることは許されなかった。何かを尋ねても、兵士は困り果てた顔をするばかりで、言葉が通じる様子はなかった。
数時間が経過し、美咲の元に一人の兵士が食事を持ってきた。その食事は、王宮とは思えないほど質素なものだった。乾いて硬いパンと、具材がよくわからない冷たいスープ。それに、一見して酒のような飲み物。
「これ…ワイン?」
恐る恐る飲んでみると、それは確かにワインだった。ワインの味はそこそこだったが、他の食べ物は美味しいとは言えなかった。
「昨日、コンビニで買った弁当を食べ損ねたなぁ…」
美咲は日本での普通の生活を思い出しながら、疲れと不安に包まれて眠りについた。